楽園づくり ~わが家のチェンマイ移住日記~

日本とタイで別々に生活してきた私たち家族は、チェンマイに家を建てて一緒に暮らし始めました。日常の出来事を綴っていきます。

タイのお葬式(1)

2016-09-10 21:01:49 | タイの暮らし

およそ2か月ぶりの投稿となります。わが家の近所に住む70代の日本人男性が末期のがんを患っていて、日本にいる娘さんと息子さんの2人が10数年ぶりにチェンマイで父親に再会したことは書きました。その男性が先週末、帰らぬ人となりました。

男性が娘さんたちと会ったのは6月末のことでした。その後、容態は悪化の一途をたどり、8月下旬まで3回入院して輸血など延命のための治療を受けました。でも基本的には病院が大嫌いな男性はそれ以上の治療を受け付けなくなり、ほとんど食事もできない状態にもかかわらず自宅へ帰りました。主治医は、入院して点滴しなければ1週間くらいで終わりになると話していました。そして大体その通り、退院から10日後に亡くなりました。

その日は、私の妻は午前中ずっと男性の家にいて、相方のタイ人女性と一緒に様子を見ていました。妻は、足が冷たくなっているのを確認し、いよいよ秒読みに入ったということは分かっていました。でも、その数日前に重篤な病気でバンコクの病院に緊急入院した別のタイ人女性のために、その日のうちにしなければならないことがありました。その女友達は難病を患っており、チェンマイ大学病院へ何回も入院して治療を受けていたので、バンコクの医師からチェンマイにあるカルテが欲しいと言われていたのです。そして翌日妻は、その瀕死の女性を見舞うためにカルテのコピーを持ってバンコクへ飛ぶことになっていました。臨終の床にある男性のことは、相方の女性とすでに何人か駆けつけてきていた女性の親族に任せることにし、私たちはその日の午後、女性のカルテをもらうためにチェンマイ大学病院へ行きました。

妻が病院でカルテのコピーを首尾よく受け取った直後でした。携帯が鳴りました。私たちは急いで病院を後にしました。男性がたった今亡くなったという電話でした。

奥さんや子供などの親族がそばにいない外国人が病院以外の場所で亡くなった場合は警察を呼んで検視を行わなければなりません。そのあと遺体は指定された国立病院(チェンマイ県はチェンマイ大学病院)へ運ばれます。そして海外から身内の誰かがやってくるまで冷凍保存されます。

もし病院で亡くなった場合は、警察ではなく医者が死亡診断書を書きます。どちらの場合も、海外から親族が来るか、来れない場合は委任状を提出しない限り火葬をすることができないのが原則です。後の手続きや遺体の保存のことを考えると、亡くなる前に病院に救急搬送してもらう方がよいと私たちには思われたので、救急車を呼ぶように言いましたが、相方の女性は最後まで救急車を呼びませんでした。

私たちが戻ると、男性の自宅には女性の親族や近所の人がたくさん集まっていました。でも誰も警察にも連絡した人がいませんでした。郡役場(アンプー)には連絡したというのです。それではダメだと妻が言い、すぐに地域の住人の面倒をみているプーヤイ・バーン(日本的に言えば、町長さんか村長さん)に電話し、警察を呼んでくれと言いました。そうしたら、町長さんは妻に「自分がやるから警察は呼ばなくていい」と言ったのです。

細かい経緯は省きますが、そのあと町長さんと妻、それに男性の相方の女性のお姉さんの3人が警察署に行きました。妻は、すぐに警察官を亡くなった男性の自宅に行かせて検視を行うよう警察署の幹部に頼みました。ところが町長さんは、自分が責任をもって対応するから警察官は来なくていいと頑強に主張しました。どうしてそうなったのかはよくわかりません。でも警察は町長さんの熱意に折れたのか?「そこまで言われるのなら、どうぞお好きなように」と答えたのだそうです。

というわけで、本来は警察官か医者が書く死亡証明書は町長さんの名前で発行されました。つまり死亡の確認と死亡の理由は町長さんの権限で証明されてしまいました。あとから日本領事館の方から聞いたのですが、地元の警察が検視することができないような田舎では、かわりに地域の村長さんが死亡証明書を発行することも、例外的にあることはあるのだそうです。でも、そんな田舎でもないのに警察をさしおいて町長さんが取り仕切ってしまいました。結果的には、そのために男性の遺体が病院へ運ばれることもなく、日本にいる親族の委任状も必要なく、まるでタイ人が亡くなったのと同じように、弔われることになりました。

私は男性の娘さんにすぐラインを通じてお父さんが亡くなったことを知らせました。そして翌々日の朝に、再び娘さんと息子さんの2人は急遽チェンマイに駆けつけてきました。男性の遺体は木製の棺桶ごと、冷蔵装置のある金属製の大きな箱に入れられて近くのお寺に運ばれて行きました。葬儀(日本式に言えば通夜)は、その日の夜から始まり、3日目の昼間に葬祭が執り行われました。(続く)

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9 コメント

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Unknown (Teru)
2016-09-11 01:17:12
末期がんだった人のその後がどうなったのか、気になっていましたが、亡くなられましたか。合掌
娘さんや息子さんは最期には間に合わなかったようですが、うさぎさん夫婦には感謝してもしきれないですね。
実は私もうさぎさんと同じような立場になりつつあります。
知り合いのタイ人女性の元へ、末期がんの日本男性(60代後半)が先月末にやって来ました。
先週末には痛みに耐えかねて、病院へ一日だけ入院したそうです。
先生の話では余命3ケ月だとの事だそうです。
男性は独身ですが、日本に妹さんがいるそうです。
女性の話では、妹さんや親戚の人達はタイ行きには大反対したそうですが、本人はタイで最期を迎えたいそうです。
知り合いの日本人は私だけなので、どうしたら良いか連絡があった次第です。
明日にでもお見舞を兼ねて女性宅へ伺おうと思っていましたが、今は誰にも会いたくないそうです。
妹さんの電話番号は分かっているようですねので、病気の進行状況を見て連絡しようかと思っています。
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Teruさんへ (うさぎ)
2016-09-11 10:58:52
コメントありがとうございます。
末期のがんは、種類にもよるのでしょうが、いよいよ最期が近づいてくると体にいろいろな問題が出てきて、自宅だったら看病する方は大変です。かと言って、入院は相当の費用がかかります。その男性も面倒をみている女性も大変ですね。

もしもの時は、親戚に連絡したり、大使館に連絡したり、いろいろと手助けが必要になりますから、他に誰もいないのであれば、できることはしてあげてください。それも大変ですけど。


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お疲れ様でした。 (のり3)
2016-09-11 14:23:17
亡くなられたご本人も、10年ぶりでご子息に会えたのですから、満足されて天に召されたことでしょう。
2ケ月前にうさぎさんが日本へ電話しなかったらと思うと・・・胸がつまります。合掌
奥様の優しいさと親切心は素晴らしいですね。
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のり3さんへ (うさぎ)
2016-09-11 18:09:27
コメントありがとうございます。
まさか訪ねてくるとは想像もしていなかった娘さんと息子さんに会えたので、思い残すことはなかったのかもしれませんね。自宅で、しかも本当に愛してくれた女性に看取られて、最後の瞬間はわずかに笑顔すら見せて、安らかに逝かれたそうです。
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鼻がツーンとしてきます ()
2016-09-11 19:06:00
二人のお子様の優しさ、そしてうさぎ様の温かいお心には胸を打たれました。
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日本人もここまでに為ったか... (異土の乞食)
2016-09-11 19:57:14
Teruさんの知り合いのタイ人女性と、そこへ来た末期がんの日本男性の関係が示されていないので、これについてのコメントもどうかとは思ったのですが、文章からの感じでは、その日本男性の他人のことを少しも感じたり、思ったりしない利己主義、というよりはガキのような我が儘、それを止めかねたその親族にいいようのない憤慨を感じます。
故意に潜在的な大不純物を不法に他国に持ち込むこの行為、(Teruさんの知り合いの女性にとってはどうか不明ですが、それ以外の)タイの人及び巻き込まれる人たちにとっては大迷惑も大迷惑。

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sさんへ (うさぎ)
2016-09-11 22:57:19
コメントありがとうございます。
正直に言いますと、何で私たちがここまでしなければいけないの?と思ったこともありますが、妻は何のためらいもなく人のために動きますので、それに釣られました。
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異土の乞食さんへ (うさぎ)
2016-09-11 23:02:18
コメントありがとうございます。
ま、似たような感想を私も持ちました。
ただ、もしもタイ人女性とその日本人男性の心が深くつながっているのなら、死に場所をタイに求める気持ちも理解できなくはないです。ま、周りに迷惑をかけていますけど、人間、生きるということは誰しも周りに迷惑をかけているのだと思えば、許せるかもしれませんね。
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再び、失礼します。 ()
2016-09-12 11:05:03
貴兄の「生きるということは誰しも周りに迷惑をかけている」には またまた涙腺が緩みました。



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