ロイターコラム:貿易戦争過熱、中国は再び「レアアース砲」放つ構え
[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国がレアアース(希土類元素)の生産に
制限をかけている。レアアース業界の動向を調査しているアダマス・インテリジェンスがこう
指摘している。
レアアースのサンプル。左から酸化セリウム、バストネサイト、酸化ネオジウム、炭酸ランタン。米カリフォルニア州のモリコープ社マウンテン・パス鉱山で撮影(2018年)
これは、採掘が難しいこれら鉱物の過剰供給問題の対策となるだろう。一方で、海外のバイヤーが、
触媒や電子機器、武器などに使われるセリウムやネオジムなどの必須原料を入手するのが困難な
状況に容易になりかねない。そうなれば、貿易戦争は劇的に拡大し、企業の利幅は大きく圧迫される。
遅ればせながら中国以外の調達ルートを確保しようと急いでも、遅きに失した感がある。
レアアース市場での中国の圧倒的な存在感は、同国の貿易相手国が抱える懸念の代表的なものだ。
レアアースは、地球の地殻にふんだんに存在しているが、採取するのが難しい。
中国の指導者トウ小平氏は約20年前、レアアースは中東における原油のようなものだとして
戦略的資源に位置づけ、国有企業に採掘を指示した。国有企業は、民間の中小鉱業企業を使い、
環境を汚染し放題に汚染しながら、短期間で深く掘り進めた。その結果、外国同業者の多くの
事業採算が合わなくなるほど、価格は下落した。
米地質調査所のデータによると、中国には世界の埋蔵レアアースの3割程度があり、
昨年は生産量の8割が中国産だった。
米国は昨年、中国から1億5000万ドル(約168億円)相当のレアアースを輸入している。
そしてこれは、安全保障のタカ派にとって心配の種だ。中国政府は2010年、ほぼ市場独占
状態であることを対日関係で利用し、日本への輸出を止めている。レアアースは最新兵器にも
使用されており、米国防総省は懸念を深めている。
いま再び、中国は以前使った戦略を再利用しようとしている可能性がある。
アダマスによると、中国は2018年下半期の生産量を4万5000トンに減らす計画だ。
これまでの過剰生産の影響を軽減する効果も一部あるだろうが、アダマスは、外国のバイヤーの
取り分がほとんどなくなると分析している。
その一方で、減産により価格は上昇する。オーストラリアのライナス(LYC.AX)のような数少ない
貴重な代替生産事業者には朗報だろうが、消費財の製造業者には厳しい。
中国は、相手国から譲歩を得る見返りとして輸出を行うこともできる。日本の安倍晋三首相は
25日に北京を訪れているが、パナソニック(6752.T)やトヨタ自動車(7203.T)のような企業は、
レアアースのコスト上昇の影響を受ける。米国企業の痛みはさらに大きくなる可能性がある。
仮に必要な経済的支援策をすべて講じたとしても、新たな鉱山をよそに開設するには何年もかかる。
中国政府の要求は、通りやすくなるかもしれない。