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北里大学大村智記念研究所片山和彦教授らの研究グループが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功 -- 北里大学

2020-05-08 13:48:24 | 資源・技術・知的財産・開発研究

北里大学大村智記念研究所片山和彦教授らの研究グループが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功 -- 北里大学(5月7日)

 

北里大学 大学プレス  /   2020.05.07 11:00

北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室片山和彦教授らおよび、

株式会社Epsilon Molecular Engineering(社長:根本直人、以下EME)、

花王株式会社(社長:澤田道隆、以下花王)安全性科学研究所の研究グループは、

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有する

VHH抗体※1の取得に成功しました(図1)。

 

この研究成果は、新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬の開発に繋がることが

期待されます(図2)。

 

■背景

 現在、世界各地で新型コロナウイルス感染症が大きな課題となっています。手洗いの

徹底やマスクの着用など感染拡大防止に向けた取り組みが数多く行われている一方で、

新型コロナウイルスに対する治療薬は未だ存在せず、一刻も早い治療薬の開発が望まれて

います。また、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、感染の有無を調べる

検査に関して検査体制の整備が進められているものの、十分な検査が実施されているとは

言えず、迅速かつ簡便、確実な検査法の開発が望まれています。

 

 これら課題を解決する手段の一つとして、新型コロナウイルスと特異的に結合する

抗体が待ち望まれています。抗体は体内に侵入した異物(抗原)に対する免疫に関わり、

特定の抗原と結合する能力を有しています。この能力を利用することで、様々なウイルス

の感染抑制や特異的検出が可能となり、治療薬や検査薬に利用されています。

 そこで北里大学とEME、花王は協力し、新型コロナウイルスに結合するVHH抗体の

作製に取り組みました。

 

■研究成果

  1. cDNAディスプレイ法を用いた候補VHH抗体の配列情報の取得(EMEと花王の共同)

 花王は、EMEが有するハイスループットVHH抗体スクリーニングを可能とするcDNA

ディスプレイ技術※2の提供を受け、ヒト培養細胞で発現させた新型コロナウイルスの

S1タンパク質※3を標的分子に用いたスクリーニングを実施し、候補となるVHH抗体の

配列情報を取得しました。

 

  1. 候補VHH抗体の調製(花王)

 花王は、長年の研究開発で培ったバイオ生産技術を活用することで、候補VHH抗体の

配列情報から得られた候補遺伝子の人工合成を行い、微生物によるVHH抗体生産を

行いました。作製したVHH抗体の標的分子に対する結合能を評価したところ、VHH抗体が

標的分子と結合することが確認できました(図3)。

 

  1. 新型コロナウイルスを用いた候補VHH抗体の感染抑制能評価(北里大学と花王の共同)

 北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室では、いち早く開発した

SARS-CoV-2に対する薬剤の不活化効果を評価する技術を用い、花王が提供した候補VHH

抗体の新型コロナウイルス粒子への結合と、中和活性の有無を確認することで感染

抑制能を評価しました。その結果、本VHH抗体を添加した場合に新型コロナウイルスの

細胞への感染が抑制されていることが確認できました。このことから、取得した

VHH抗体は新型コロナウイルスに結合するだけでなく、感染抑制能を有することが

明らかとなりました。

 

■今後の展望

 今回の研究では、新型コロナウイルスに対して結合することで感染能の抑制が期待

できるVHH抗体の取得に成功しました。本成果は新型コロナウイルスの治療薬や検査薬の

開発に繋がることが期待できます。今後、今回の成果を世界中で活用できる方法について

検討し、発信して参ります。

 

※1. VHH(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain)抗体:ラクダ科動物由来の抗体。一般的な抗体と比較して10分の1の大きさで、高い安定性や微生物による低コスト生産が可能なことから近年注目を集めている。

※2. cDNAディスプレイ技術:タンパク質とタンパク質をコードするDNAを連結させる技術。本技術を利用することで、無数に存在するタンパク質の中から標的分子に結合するタンパク質を効率的に取得することが可能となる。

※3. S1タンパク質:コロナウイルスの表層に存在しているタンパク質。

※4. バイオレイヤー干渉法:光の干渉パターンを分析する光学分析技術。分子の相互作用を測定するのに用いられる手法の一つ。

 

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□花王株式会社について

 1887年の創業以来、130年あまりの歴史を持ち、現在は世界約100の国や地域、約33,000人の従業員で事業を展開しています。「化粧品」「スキンケア・ヘアケア」「ヒューマンヘルスケア」「ファブリック&ホームケア」の4つの事業分野で、一般消費者に向けたコンシューマープロダクツ事業を、また「ケミカル」事業分野においては、産業界のニーズにきめ細かく対応したケミカル製品を幅広く展開しています。

 

・社名:花王株式会社

・本社所在地: 東京都中央区日本橋茅場町

・代表取締役: 澤田道隆

・設立日: 1940年5月

・問い合わせ先: pr@kao.co.jp

・会社HP: http://kao.com/jp/

 

□株式会社Epsilon Molecular Engineeringについて

 「次世代の機能性バイオ分子を、進化分子工学を用いた独自プラットフォーム技術で創出します。」をミッションに掲げ、2016年に埼玉大学発ベンチャーとして設立されました。進化分子工学の技術によって、Heavy chain single domain抗体(VHH)やcyclic peptides等のcDNA Display Librariesを独自に構築し、次世代シークエンスNGS、FACSそしてAIを活用した独自のHigh throughputシステムを構築しており、短期間で目的のVHHの取得を可能としました。現在は創薬・医療領域にフォーカスし、新しいモダリティによる新世代のバイオ医薬品や中分子医薬品の開発候補品の取得、ならびに細胞・遺伝子治療でのVHHの活用に取り組んでいます。

 

・社名: 株式会社Epsilon Molecular Engineering

・本社所在地: 埼玉県さいたま市

・代表取締役: 根本直人

・設立日: 2016年8月19日

・問い合わせ先: info@epsilon-mol.co.jp

・会社HP: https://www.epsilon-mol.co.jp/

 

問い合わせ先

※本プレスリリースに関するお問い合わせは、法律に基づく緊急事態宣言により在宅勤務推奨中のためEメールで対応させていただきます。ご理解のほどお願い申し上げます。

 

≪研究に関すること≫

 北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室 教授 片山 和彦

 

≪報道に関すること≫

 学校法人北里研究所

 総務部広報課

 〒108-8641 東京都港区白金5-9-1

 E-mail: kohoh@kitasato-u.ac.jp

 

◎北里大学は「COVID-19対策北里プロジェクト」を通じて、新型コロナウイルス感染症治療薬の早期探索を推進しています。詳しくは、ホームページでご覧ください。

 https://www.kitasato.ac.jp/jp/news/20200319-02.html

 


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