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<新型肺炎・武漢肺炎>ギリアドが抗ウイルス薬開発に全力

2020-02-14 12:41:15 | 資源・技術・知的財産・開発研究

新型肺炎、ギリアドが抗ウイルス薬開発に全力

2020 年 2 月 13 日 09:40 JST     THE WALL STREET JOURNAL  By Joseph Walker 

ギリアド本社で医薬品原料を計量する上席研究員(10日) 

 

 米バイオ製薬大手ギリアド・サイエンシズの幹部チームは、中国のコロナウイルス

感染拡大を受け、連日議論を重ね、大陸を越えた新型肺炎の新治療薬開発に社を上げて

取り組んでいる。

 

 中国で臨床試験が成功すれば、これまでに1000人以上の死者を出し、およそ4万2600人が

感染した呼吸器系ウイルスへの効果が証明される初の治療薬となり得る。

 

 明るい兆候もある。特筆すべき例として、ワシントン州の男性(35)はギリアドの

治験薬を投与されてから急速に症状が改善し、先ごろ退院した。

 

 マーダッド・パーシー最高医療責任者(CMO)は「当社の長年の経験から、興味深い

事例となり得ると理解している」としつつ、偽陽性だった可能性もあり、大規模治験で

効果が認められない可能性もあると慎重な姿勢を示した。

 

 この抗ウイルス薬「remdesivir(レムデシビル)」の効果が証明されれば需要は

急増する。これに加え、中国の患者760人を対象とする2つの臨床試験と、緊急治療が

要請されている患者数人向けに同薬を提供するため、ギリアドは増産を急いでいる。

 

 ギリアド以外にも数社が、コロナウイルス感染症の治療薬開発に取り組んでいる。

米製薬大手 アッヴィ と ジョンソン・エンド・ジョンソン (J&J)は、ウイルスに効果が

あるか確かめるため中国にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)治療薬を届けた。

 

 ギリアドも長年、HIVやC型肝炎の抗ウイルス薬を製造しており、中国で原因不明の

肺炎が流行しているとの報告が最初に聞かれた12月下旬からウイルスの感染状況を

注視してきた。

 

 中国の科学者は1月9日、原因がコロナウイルスであることを突き止めたと発表。

ギリアドはこれを受け、レムデシビルの開発を加速させた。コロナウイルスは野生動物の

病気を引き起こすことが多く、人間が感染すると重度の呼吸器疾患を発症する恐れがある。

 

 レムデシビルは数年前、アフリカ中東部で猛威を振るったエボラ出血熱の治療薬と

して開発された。昨年コンゴでエボラ出血熱の患者を対象に実施した研究では、

競合薬より効果が弱かった。

 

 だがギリアドには、レムデシビルがコロナウイルスに効くかもしれないと考える

理由がある。学界の科学者との共同研究で、別のコロナウイルス感染症であるMERS

(中東呼吸器症候群)に感染したマウスに対し、レムデシビルによる治療が効果を

上げたのだ。マウスを使った研究は決定的と言うには程遠いものの、新型コロナウイルス

の治療における有効性が示唆された形だ。

このデータは1月10日、英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載された。

 

 「(中国の感染が)コロナウイルスだと分かった途端、一気に関心が強まった」とギリアドのパーシーCMOは語る。「そこで、何ができるか見極めるため、人員を集めて全社をまたぐチームが結成された」

 

 ギリアドは程なく、中国疾病管理予防センター、世界保健機関(WHO)、米疾病管理

予防センター(CDC)との情報交換に乗り出し、レムデシビルに治療効果があるかどうかを

いかに判断するか議論していた。

 

 ギリアドは1月20日までに、中国の高名な研究者で、治療の陣頭指揮を執るため

武漢入りした呼吸器科医のカオ・ビン博士と協議していた。ギリアドのHIV・ウイルス

感染症担当のシニアバイスプレジデント、ダイアナ・ブレイナード氏によると、

米食品医薬品局(FDA)やWHOからの情報と合わせ、同社はカオ博士のチームと

協力して臨床試験を設計した。

中国の報道によると、臨床試験は武漢の複数の病院で実施されている。

 

 ギリアドは先週、2つの臨床試験に必要なレムデシビルの出荷を完了した。試験は

第1段階が中・軽症の患者、第2段階は重症患者をそれぞれ対象とし、4月上旬に終了する

見通しだ。

 ブレイナード氏は「われわれ全員が感染者数と死者数を追跡している。本気で力に

なりたいと思っている」と述べた。

 同社の「コロナウイルス対策チーム」は従業員約100人から成り、全ての主要部門から

幹部が参画している。

生物科学者のゲイ・リー氏(ギリアド本社、10日) 

 

 ギリアドは北京と上海に合わせて400人の従業員がいる。米国の従業員は対策チームの

結成以降、こうした中国の同僚と共に何百時間も残業し、時差のある同僚と連絡を

取り合うため午前3時の電話会議や夜中の電子メールのやりとり、朝7時のオフィスでの

会議をこなしている。

 

 ワシントン州で治療を受けていた男性の症状が悪化した際、CDC関係者は医療機関に

レムデシビルの情報を提供した。ギリアドは1月25日、同薬の例外的使用を求める要請を

受けた。24時間とたたないうちにFDAが要請を承認。ギリアドはワシントン州へ同薬を

出荷した。

 患者が完治したことは米医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・

メディシン」が詳細に伝えた。これを受けギリアド株は先週の取引で急伸した。

 

 ただアナリストの間では、たとえ新型コロナウイルスへの効果が示されたとしても、

レムデシビルが近く同社の収益源となるか疑わしいとの見方もある。

 

 ギリアドは2016年、コロナウイルス感染症の治療薬としてレムデシビルの特許を

出願したが、中国では承認が保留になっているという。

 

 さまざまな不確実性にもかかわらず、同社は生産能力を拡大している。

パーシーCMOによると、北米で生産を再開するため外注の製造業者と1カ月前から調整に

入っているほか、北米の自社工場で承認済み製品の生産を停止し、レムデシビルの

生産開始に備えているという。


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