2016/6/30 ハンギョレ新聞
進まないセウォル号引き揚げ、船首持ち上げを1カ月以上も延期
台風影響圏に入れば8月中の引き揚げも困難に
セウォル号引き揚げの主要な作業となる船首持ち上げが数回延期されるなど、船体の引き揚げが先延ばしされている。
海洋水産部は28日からセウォル号の船首を持ち上げる作業を開始する予定だったが、高波と強風などの気象悪化で、
次の小潮期の7月11日に延期した。
セウォル号の船首持ち上げ作業は、当初、先月28日から始まる予定だった。
しかし、浮力を利用し、セウォル号の重量を軽くする「ポンツーン」(水タンク 形の大型エアバッグ)に問題が生じ、2週間延期された。
今月12日から船首持ち上げが再び始まったが、13日午前2時から南東風と強いうねり(波高2メー トル)が発生し、
作業が中断された。
この過程でセウォル号船体の一部が破損した。
セウォル号の船首を持ち上げるために設置した鉄ワイヤー5本のうち2本が 船体に食い込み、
セウォル号のデッキ部分2カ所にそれぞれ6.1メートルと7.1メートルの長さの損傷ができた。
海洋水産部は「損傷部位に補強材を設置 し、中断された作業を今月28日から再び始める」と明らかにしたが、
気象悪化でまた延期された。
船首持ち上げ作業だけで、当初の計画よりも44日も遅くな る見込みだ。
船首持ち上げはセウォル号を切断せずそのまま引き揚げるために不可欠な作業だ。
セウォル号の船体の下に台座の役割をするリフティングビーム (Lifting beam)を設置するには、船首を約5度(高さ10メートル)持ち
上げなければならない。
この作業が終わらなければ、船の後ろの部分にリフトビームを設置 できない。
リフトビームの設置作業が終わってから、ワイヤー52本を海上クレーンと繋ぎ、各種安全装置と浮力装置を設置すると、
セウォル号を引き揚げるた めの事前作業が終わる。
船首持ち上げ作業が延期され続けたことで、政府は7月までにセウォル号の引き揚げ作業を始めるのが難しいと予想している。
しかし、7〜8月には韓国が台 風の影響圏に入るため、引き揚げ時期がさらに遅くなるのではないかという懸念の声もあがっている。
セウォル号の真実究明の有力な証拠である船体が引き揚げ られる前に、
政府が「4・16セウォル号事故特別調査委員会」の活動を6月30日に強制的に終了しようとしており、波紋が広がっている。
2016/6/30 ハンギョレ新聞
[社説]セウォル号事故の真相究明を諦めてはならない
セウォル号遺族と市民団体が29日、ソウル・汝矣島のセヌリ党本部前で記者会見を開き、セウォル号特別法の改正を阻止する与党セヌリ党を糾弾している
セウォル号事故の真相究明作業が大きな岐路に立たされている。
特別調査委員会(特調委)の活動期限の6月末「終了」にこだわる政府と、特別法の改正を拒否 する与党が作り上げた壁の前に、
野党と特調委は解決策を見いだせずにいる。
しかし、明らかにすべき真実はまだ多く、疑問点も新たに浮かび上がっている。
304人の尊い命を失っているのに、真実が埋もれたままで何も教訓を得られないなら、韓国社会は一歩も前に進めなくなるだろう。
海洋水産部の主張通り、6月末に特調委が活動を終え、今後の3カ月間は白書の刊行と「船体調査」にだけ集中することになれば、
当初の法制定の際に合意し た真相究明と安全対策の樹立という約束は水泡に帰すことになる。
「船体」以外にも調査すべき対象が多いだけでなく、9月までに引き揚げが完了するかどうか も不透明な状態では、
「船体調査」でさえ実現が難しくなるかもしれないからだ。
セウォル号に容量を超過して積載された鉄筋の一部が、済州(チェジュ)海軍基地の建設に使われる予定だったことが最近新たに明
らかになった。
セウォル号 事故前後に、乗組員らが国家情報院側と電話で連絡していたことがこれと関連しているのか、
国防部はなぜ鉄筋が済州基地に運ばれることを否定したのか、なぜ 検察の捜査ではこのような事実が明らかにされなかったのかな
ど、解決すべき疑問は一つや二つではない。
当時セウォル号が無理に出航したのが、海軍基地の工 事のためなら、政府も出港を強行した責任を免れない。
特調委の活動の終了を急ぐ背後に、朴槿恵(パククネ)大統領と大統領府がいることは、容易に推察できる。
ハンストする遺族の隣で暴飲暴食闘争を行う非人間的な組織を背後で操ってきた大統領府行政官をまだそばに置いているのを見る
と、大統領が最大の障害かもしれない。
しかし、総選挙で惨敗した後、大統領府にも言うべきことはいうと豪語していた与党が、野党との交渉過程で「大統領府は調査対象か
ら外してほしい」とし て、いまだに大統領府の顔色を窺っているのは、責任ある公党の姿勢ではない。
総選挙前に特別法の改正を公約して以来、期限延長などに向けた協力を約束した 野党3党も、口先だけではなく、より責任ある態度
で臨んでもらいたい。
事故から2年が過ぎ、疲労感が高まる中、隙を狙って忘却を唆してきた勢力は、
「時限」と「予算」を前面に掲げ、できないの一点張りだ。
4・16連帯の イ・テホ常任運営委員は「悲劇を経験した人に対する最小限の共感と連帯が韓国社会に残っていることを少しだけ見せ
ていただきたい」と訴えた。
こんな時だか らこそ、自覚ある市民の関心と参加が必要とされる。
特別調査委員会の調査の状況
セウォル号のミステリー
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