サムスン洗濯機、相次ぐ“爆発”報道 韓国では米国の陰謀説浮上するも、歯止め掛からぬ輸出立国崩壊
2016.10.10 15:00 産経新聞
激しく身を揺すりながら近づいてくる。まるで飼い主に懐く動物のように-。古い洗濯機を使ったときの昭和時代の「あるあるネタ」だが、米国で最近、洗濯機が激しく震動するだけでなく「爆発した」とのニュースが流れた。韓国・サムスン電子製。爆発で大量リコール(回収・無償修理)に至ったスマートフォンに続く失態となるのか。韓国では陰謀説も出ているが、自動車の輸出がメーカー従業員のストで急減したこともあり、「崩壊の道を歩んでいる」との悲痛な声が上がり始めた。
「爆発」で訴訟、当局も調査
ロイター通信によると、問題の洗濯機は2011年3月から16年4月にかけて製造されたもの。サムスンはホームページなどで「まれなケース」とした上で「寝具や防水性の衣料などを洗濯すると異常な震動が起き、人を傷つけたり周辺に被害を与えることがある」と説明。こうした危険のある洗濯物は「デリケート」モードを使うことを推奨している。
一方で米メディアは相次いで「爆発」事故があったと報じ、訴訟を起こす消費者も現れた。原告は「通常の使用で爆発が起きた」と主張しているという。こうした状況を米消費者製品安全委員会(CPSC)は重く見て調査に乗り出した。
サムスンといえば先ごろ、スマホ新製品「ギャラクシーノート7」でバッテリーの異常による爆発が相次ぎ、約250万台のリコールに追い込まれたばかり。ハイテクとはいえない洗濯機でも不具合があったとすれば、「ものづくり」の力が落ちたということなのだろうか。
米国陰謀説
ただ、洗濯機については米国外では不具合や事故の目立った報告はない。韓国紙・朝鮮日報は「消費者の失敗が原因だった可能性がある」との業界関係者の見方を紹介。その上で「米当局が自国企業を保護するために今回の事態を荒立てているという見方もある」と指摘した。
この見方を下支えしているとみられるのが、世界貿易機関(WTO)が9月に示した判断だ。米政府は「韓国企業が米国内で洗濯機を不当に安売りしている」として反ダンピング関税を課したが、WTOは米国の主張を退けた。
不当廉売に当たるかどうかについて米国の計算方法に問題があるとされた。米国にとって都合の良い数字だけを使う手法で、日本もこれには痛い目にあわされてきたし、世界的にも批判を浴びてきた。
ダンピング問題が持ち上がったのは2012年。米国の無理筋ともいえるダンピング関税から見えてくるのは、韓国製品の輸出攻勢が激しかっただけでなく、米国の消費者に受け入れられていたということだ。
歯止め掛からぬ崩壊
しかし、その韓国もいまは元気がない。韓国紙・中央日報によると朴槿恵(パク・クネ)大統領は9月28日、地域産業の育成などを目的とする展示会に出席し、「わが国の主力産業の競争力が弱まっている」と認めた。
大統領は当然、試練を乗り越えていく決意を示したわけだが、9月の韓国の輸出額は409億ドルで前年同月比5・9%減。サムスンのギャラクシーの失速、現代自動車のストが響いたとみられている。所得水準の高い同社従業員のストに対しては風当たりも強いようだ。
韓国メディアによると、1~8月の韓国の自動車輸出台数は169万2906台で前年同期比14・4%減と大幅に落ち込んだ。これまではドイツ、日本に次いで世界3位だったが、メキシコに抜かれて4位となった。
「半世紀続いた輸出立国は、こうして崩壊の道を歩んでいる。政界、企業、労働界、すべてが犠牲にならなければこの崩壊には歯止めがかからないだろう」。朝鮮日報(日本語電子版)は10月3日の社説でこう訴えた。
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半世紀続いた輸出立国、崩壊を食い止めよ
朝鮮日報社説 2016/10/3
昨年1月から今年7月まで19か月にわたり減少を続け、8月にようやく回復したかに見えた韓国の輸出が、1か月で再び減少に転じた。やっと浮上のきっかけをつかんだというかすかな望みは、ただの希望に終わってしまった。韓国産業通商資源部(省に相当)と関税庁が暫定的に集計した9月の輸出額は409億ドル。昨年9月(434億ドル)に比べ5.9%減少した。昨年よりも操業日数が少ないが、それを勘案しても3.7%の減少だ。
とりわけ無線通信機器(-27.9%)、自動車(-24.0%)、船舶(-13.6%)、石油製品(-13.4%)など主力輸出品目が不振だった。サムスン電子のギャラクシーノート7のリコール問題、現代自動車のストといった悪材料が重なったせいだ。産業通商資源部は自動車業界のストが9月の輸出増加率を2.6ポイント引き下げたと分析している。携帯電話の輸出の減少は0.9ポイント、船舶の引き渡し物量の減少は0.8ポイント、それぞれ輸出にマイナスの影響を与えた。
輸出はカネも資源もない大韓民国に「経済の奇跡」を呼び込んだ最大の原動力だ。1964年11月30日に輸出1億ドルを達成して以降、数々の困難を乗り越え、2011年12月5日には輸出入を合わせた貿易規模が1兆ドルを突破した。世界経済危機の真っただ中にあっても世界で9番目の「1兆ドル貿易大国」になったのだ。しかし4年にわたって維持してきた貿易規模1兆ドルは昨年、原油価格の下落などの影響で輸出入規模が縮小し、あっけなく崩れ落ちた。貿易1兆ドルは今年はいっそう遠のくとみられている。今年1-9月の輸出が前年同期比で8.5%減少し、輸入も10.7%減少したからだ。
世界的に貿易が低迷していることは事実だ。しかし韓国のように輸出依存度の高い経済が受ける衝撃は、ほかの先進国とは大きく異なる。そうした点で、最終四半期(10-12月期)にも輸出の回復が見込めないということは、並大抵の深刻さではない。世界経済の低迷が続いている上、各国で保護貿易主義の声が日に日に高まっている。
主力市場である米国・中国への輸出は一時的な危機ではなく構造的な危機にぶつかっている。米国経済は1-2年前から回復傾向にあるとはいえ、主に米国国内でのサービス産業が経済回復を主導しているだけで、韓国をはじめアジア各国からの輸入が増えているわけではない。中国の完成品輸出は減少し続けており、中国への中間財の輸出が多い韓国にとっては悪材料として作用している。今年9月も中国・米国・欧州連合(EU)地域への輸出はいずれもマイナスだった。
このように外では波が荒れ狂っているにもかかわらず、年間1億ウォン(約920万円)近い収入を手にしている「貴族労組」は、危機から目をそらし、生産ラインを人質に「カネをもっとよこせ」とストを続けている。その結果、世界5位を維持していた韓国の自動車生産台数は今年に入ってインドに抜かれ6位に転落した。ドイツ・日本に次いで世界3位の自動車輸出国という地位もメキシコに明け渡した。今年に入って自動車輸出が昨年より14.4%減少し、メキシコに抜かれたのだ。半世紀続いた輸出立国は、こうして崩壊の道を歩んでいる。政界、企業、労働界、全てが犠牲にならなければこの崩壊には歯止めがかからないだろう。
韓国の「モノ」に価値がなくなったのです。安くてそこそこの「モノ」は中国に取って代わられてる。一流のものを作る日本やドイツを超える技術もない。中途半端な位置にいるのですね。