台湾とエルサルバドルの断交、中国の圧力と米国の非難
2018年9月13日 WEDGEInfinity
台湾とエルサルバドルは8月21日に外交関係を断絶し、これで台湾と国交を持つ国は世界で17か国となった。
エルサルバドルとの断交について、台湾の外交部(外務省)は、以下のような声明を発表している。
8月21日、台湾はエルサルバドルとの外交関係を断絶、同国への協力・支援プロジェクトを終了させ、
在サン・サルバドル大使館を閉鎖し、全ての技術的スタッフを召還する。
2017年以来、エルサルバドル政府は繰り返し同国東部のラ・ウニオン港の開発に台湾が巨額の拠出をするよう、
要求してきた。台湾政府はアセスメントのための技術チームを派遣し、同プロジェクトは台湾とエルサルバドル双方に、
巨額の負債をもたらし得るとの結論に達した。それゆえ、台湾はエルサルバドルの要求に同意できなかった。
台湾は責任ある政府として、同じ考えの多くの他の国々と同様、ラ・ウニオン港についてエルサルバドル政府への
支援を約束できなかった。
一方、エルサルバドルでは2019年2月に大統領選が予定されている。エルサルバドルの与党は、世論調査で
後塵を拝し、台湾に選挙資金の支援を求めてきた。それは民主主義の原則に反することであるから、台湾政府は
そのような要求には応じることができなかった。
台湾は、教育、農業、インフラ等、両国の国民の幸福につながるあらゆる分野での二国間協力に、しかるべき
考慮をする用意がある。しかし、中国と外交関係を争うために札束外交を展開したり、まして違法献金に手を
染めるなどは、無責任なことである。台湾政府はそのような道を行くことはできない。
台湾は中国から絶え間ない外交的圧力を受けている。外交部は、台湾人に対し団結するよう厳粛に訴えかける。
中国の強硬姿勢は、もはや責任ある国家の振る舞いではなく、明らかに両岸関係に悪影響を及ぼしている。
中国による台湾への圧迫は止んだことがない。台湾は民主的で自由な国家である。台湾は着実に前進し続けるだろう。
中国の理不尽な圧迫は、台湾が一層大きな民主主義、自由、主権を求めることを強化させるだけであろう。
今回の断交は、8月12日から20日にかけて南米のパラグアイと中米のベリーズ歴訪と経由地に当たる米国立ち寄りの
直後に行われた。中国からの強い圧力があったことは容易に想像できる。
上記発表では、台湾が民主的国家として責任ある行動をとっていることをアピールするとともに、中台間で
行われてきた外交関係をめぐる競争の内幕を赤裸々に暴露しており、興味深い。
台湾としては、今後は形式的な外交関係よりも、自由、民主主義、人権、法の支配といった価値を同じくする
国々との実質的な関係を重視していく方針に転換していくことになろう。これに対し、中国側としては、
台湾を窒息させるために、政治、軍事、外交、経済、台湾人の人心掌握など、あらゆる分野での圧力を強化するのは
確実である。
蔡英文総統は、最近、価値を共有する国々どうし団結し中国に対抗することを、国際社会に対し、
しばしば訴えている。今回の断交に際する談話においても、「中国の世界中における行動は、他国への内政干渉であれ、
国際市場を掘り崩す行為であれ、既に世界の安定を深刻に損ねている。これは台湾だけの問題ではない。
事態は急を要し、宥和の余地はない」と述べている。傾聴すべき警告である。
なお、ホワイトハウスは今回の断交について、西半球への中国の介入を受け入れる決定であるとエルサルバドル
政府を非難し、「短期的な成長とインフラの発展を引き込むために、中国との関係を構築したり拡大しようとする
国々は失望するだろう。世界中の国々は、中国の経済的誘引は中国への経済依存と中国の優位を高めるものだと
気づいている」、「米国は中国による両岸関係の不安定化と西半球への政治的介入に反対し続ける」などとする
声明を8月23日付で発表している。これに対し、台湾の総統府は翌日、ホワイトハウスの声明に対し感謝を
表明している。最近の米国による台湾重視の姿勢が改めて示されたと言えよう。
出典:‘The R.O.C. government has terminated diplomatic relations with El Salvador with immediate effect in order to uphold national dignity’(Ministry of Foreign Affairs Republic of China(Taiwan), August 21, 2018)
https://www.mofa.gov.tw/en/News_Content.aspx?n=1EADDCFD4C6EC567&s=0DB8435E0E11485D