独自の「インド太平洋構想」採択 ASEAN首脳会議
【バンコク】東南アジア諸国連合(ASEAN)は23日、タイの首都バンコクで加盟10カ国の
首脳会議を開き、独自の「インド太平洋構想」を採択した。議長声明ではインド太平洋地域で
「ASEANが中心的かつ戦略的な役割を果たす」と明記。域内で存在感を高めたい考えだ。
また、一連の会議では、海洋ごみの削減に向けて連携強化をうたった「バンコク宣言」も採択した。
インド太平洋地域では、日米が「自由で開かれたインド太平洋」を推進する一方、中国は
巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて影響力を拡大している。
米中の対立が深まる中、存在が埋没することを憂慮する加盟国は、ASEANこそが地理的に
インド太平洋地域の「中核にある」と強調する新構想を通じ、双方と距離感を保ち、自らの利益を
追求したい思惑がある。
議長声明や合意文書「インド太平洋地域についての見解」では、インド太平洋地域について
「密接に統合され、相互に関連している」と定義。ASEANが中心となり、域内の持続的な
経済成長や、航行の自由の促進、紛争の平和的解決などを目指すとしている。
議長国タイのプラユット首相は会議後の記者会見で「ASEANは太平洋とインド洋の橋渡しと
しての役割を果たす」と話した。
また、合意文書ではインド太平洋地域は「対立ではなく対話と協調の地域である」とも指摘。
南シナ海の各地で中国が軍事拠点化を進め、一部加盟国と摩擦が継続する中、域内での法と秩序の
重要性を強調した。
議長声明では南シナ海での中国の勢力拡張についても触れ、前回会議(昨年11月)の声明同様、
名指しは避けながら「いくつかの懸念があることに留意する」と表現した。
タイがまとめた当初案では「懸念」の文言はなく、ベトナムなど中国に反発する加盟国に配慮する
形で盛り込まれた。
22日からの一連の会議で加盟国首脳は、海洋汚染につながる廃プラスチックの削減を目指す
バンコク宣言も採択した。廃プラをめぐっては、最大の輸入国だった中国が昨年、輸入を停止して以降、
世界各国から東南アジアにゴミが殺到しており、28、29日に大阪で開かれる20カ国・地域
(G20)首脳会議(サミット)でも主要議題となる。法規制強化や啓発教育の拡充などをうたった
バンコク宣言を踏まえて、G20議長国の日本は調整を迫られる。
首脳会議では、ミャンマーから隣国バングラデシュに流入したイスラム教徒少数民族ロヒンギャの
帰還実現に向け、ミャンマーの取り組みを継続して支援する重要性を確認した。
2034年サッカーワールドカップ(W杯)について、ASEAN10カ国で共催を目指す案も
採択され、議長声明に盛られた。
経済ではASEAN加盟国と日本、中国など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が
議論の中心になった。各国首脳は年内妥結を目指す方針を確認。
タイ政府報道官は「文言の調整など相違点も残るが、満足できる結果との報告を受けた」と語った。
RCEP、年内妥結困難か=ASEAN内にも隔たり-首脳会議
2019年06月24日07時25分 時事通信
バンコクで開かれたRCEPに関するASEAN特別経済閣僚会合=22日(ASEAN事務局提供)
【バンコク時事】東南アジア諸国連合(ASEAN)はバンコクで22、23の両日開いた首脳会議で、
日本と中国、インド、ASEAN加盟国など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)
をめぐり意見交換した。議長声明は『年内妥結を目指す方針を確認』と明記したが、ASEAN
交渉筋は「協議は進展していない」と否定的な見方を示している。
RCEP交渉は2013年に始まり、昨年11月の首脳会合で妥結目標期限を昨年末から
1年先送りした。
交渉筋は、中国が態度を軟化させているのに対し、大幅な関税撤廃に慎重なインドに加え、
「日本も柔軟性がなく、難しい交渉相手だ」と指摘した。
フィリピンのロペス貿易産業相は、16カ国の間で「(経済発展の)度合いに差があり、自由化の
目標が異なる」と交渉の難しさを強調する。
意見の隔たりはASEAN加盟国間にもある。ASEANは22日、妥結へ弾みをつけるため、
議題をRCEPに絞った特別経済閣僚会合を開いた。しかし、交渉筋は「幾つかの分野で文言を
調整しただけ。新たな合意はない」と説明。タイ商業省のオラモン貿易交渉局長も「半日では
突っ込んだ話し合いはできない」と議論が進まなかったことを認めた。4月のASEAN経済閣僚会合
でも「何一つ合意できなかった」(交渉筋)という。
全18分野のうち、これまでに合意したのは「経済技術協力」など7分野にとどまる。
交渉筋は「交渉7年目で協議できたのは半分程度。残り半年で妥結できるだろうか」と疑問を呈した。
日本の外務省と経済産業省は、「第25回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合」が
インドネシアのバリで2月19日から28日までの日程で開催される事を発表した。
日本政府では、アセアン加盟国(インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・マレーシア・
ブルネイ・ベトナム・ミャンマー・ラオス・カンボジア)に日本・中国・韓国・オーストラリア・
ニュージーランド・インドの6か国を加えた合計16か国による広域経済連携
「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」の交渉に参加している。
この交渉は、2013年から開始しており、今までに14回の閣僚会合と24回の交渉会合を開催しており、
2018年11月にRCEP閣僚会合・RCEP首脳会議を開催した際に、共同首脳声明が発出されるとともに
2019年に妥結する決意が示されていた。
今回は25回目の交渉会合が開催される事となった。
今回の会合には、日本政府からは経済産業省通商交渉官や外務省経済局審議官等の関係省庁の
関係者が出席する。
今回は、高級実務者レベルの貿易交渉委員会会合に加えて、物品貿易・サービス貿易・投資等の
分野で市場アクセス交渉が行われ、原産地規則・知的財産・電子商取引等の分野で交渉が行われる
予定である。