アーム通信(海外会員インドだより)

国際子ども権利センターの元運営委員の成田由香子が、インドのデリーで滞在する暮らしの中で体験することを伝えます。

インドの教育:公立学校

2005-11-30 02:56:43 | Weblog
今回は、インドの公立学校の実情を中心にしてインドの教育事情について簡単にお知らせします。教育の実状は教育を管轄する州によって様々です。さらに、公立学校と私立学校の別や、州のなかでの社会経済的・地理的条件の違いによって、学校教育の形態やそれに関連して子どもたちの生活も実に多様となります。

◆未就学
• 6~18歳の子どもの50%が学校に通っていない。
• 約50%以上の女の子が学校に就学できない、就学できても多くが12歳までに中途退学してしまう。

◆教師の不足
• 学校の約60%で、2名以下の教師が1~5年生を教えている。
• 平均して、小学校にはそれぞれ教師が3名以下しかいなく、その教師たちは毎日、1~5年生のクラスを教えなければならない。
・教師数と生徒数の割合は、1950-51年には小学校で1:24、中学校で1:20であったが、1999-2002年には小学校で1:43、中学校で1:38と悪化した。

公立学校のほとんどは、教室や教材、教師が不足している。生徒1人当りの教師数は、圧倒的に少なく、1人の教師が、学年も進度も異なる多くの生徒を見なければならず、知識の詰め込みとなりがちで、各生徒に配慮することは不可能である。教師の手が回らない場合、上級生が下級生に対し、教師に代わって学習を指導することもある。

◆学校施設の不整備
• 小学校40校のうち1校が、野外あるいはテントの中で授業を行っている。
• 南インドのアンドラ・プラデシュ州では、校舎のない中学校は、2002年では52校、一方1993年は全く校舎がなく、運営されていた。
• 西インドのマハラシュトラ州では、校舎のない学校が1993年には10校だったが、2002年には33校に増えた。

教室での机や椅子、教科書なども不足しており、生徒たちはぎゅう詰めに椅子に座るか床に座って、教科書を何人かで使い回すケースも珍しくない。また、同一校舎を午前・午後で別組織の学校が使用する場合は、正午頃には生徒と教師が入れ替わり、授業終了後の課外活動なども制限される。このような教育施設環境は、生徒にとって満足のいく魅力的なものではない。

◆学校の不足
• ハビテーション(=国家教育政策により、人口300人以上が住む居住群から1km以内の距離に小学校、500人以上が住む居住群から3km以内の距離に中学校がなければならない、とされている)のたった53% に一つの小学校がない。
• ハビテーションのたった20% にしか中学校(上等初等教育)がない。
• ハビテーションの約22%の地域で、中学校が3km以上離れたところにある。 

公立学校の場合、一応居住地近くの学校への通学が好ましいとされるが、強制的な学区制ではない。そのため、教育熱心な家庭は、学費の高い私立学校無理でも、多少の交通費はかかっても、授業料がほぼ無料の公立学校のうち近隣よりは条件の良い学校へ行かせたがるようである。

◆貧困、教育への関心、中途退学
• 私立学校の教育費は高く、家族を支えるために働かなければならず、勉強にも興味がないことなどが、中途退学した生徒のうち4分の3が、なぜ学校に通わなくなったか応えた理由である。
• 中途退学率は、3~5学年の間に男の子50%、女の子58%と非常に高くなる。

しかし、農村などのように、他の学校へのアクセスが困難な居住地域に住む児童は、そのような選択の余地もなく、教育条件の悪い学校生活に甘んじるか、学校へ通い続ける動機を失い、家計を補助するために中途退学してしまう者が多い。教育への関心がない家庭ではなおさら、費用をかけて学校へは行かせるよりは、毎日の生活に役立つ仕事をさせる方が良いと認識されている。特に貧困層においては、将来の稼ぎ手となる男子には教育が優先されるが、女子には家事労働を要求する傾向がある。

参考資料:
CRY - Child Relief and You, URL: http://www.cry.org/crypage.asp
7th All India Education Survey, 2002