アーム通信(海外会員インドだより)

国際子ども権利センターの元運営委員の成田由香子が、インドのデリーで滞在する暮らしの中で体験することを伝えます。

子どものための国家予算

2005-11-24 23:00:00 | Weblog
今回は、ヒンドゥスタン・タイムス紙の記事(2005年10月27日付)を翻訳しましたので、お知らせします。

(ここから)------------------

【インド政府、子どものための政策目標を達成できず】

人材資源開発省(Human Resources Development)は、国家第10次5カ年計画(2002~2007年)における子どもの発達(Child Development)のための目標を達成できないようだ。

◆子どものために使われた予算
女性子ども開発局(Department of Women and Children):人材資源開発省の中にある)の予算で実際に使われた総支出額のうち、子どものために使われたのは、たったの3.75%だった。
その3.75%の内訳は以下の通り。
▽子どもの保護:0.03%
▽子どもの健康:0.52%
▽子どもの発達:0.65%
▽子どもの教育:2.55%

◆国家第10次5カ年計画と実際の結果を比較すると・・。
目標:乳幼児死亡率については、生まれた赤ちゃん1000人のうち、2007年までに45人、2012年までに28人に下げる。
→実際:1000人に55人
目標:教育については、2003年までに全ての児童が学校に通うことができる。
→実際:すでに2005年で子どもの4~5%はまだ学校に通っていない。(注

「子どものための予算計上(Child Budgeting)」に関する会議で、ロベリーン・カカール女性子ども開発局副書記官は、「ほとんどのプロジェクトの取り組みがなかなか成果をあげていない」また「おそらく、ほとんどの目標を達成できないだろう」と述べた。さらに、資金が使われず残っているわけではなく、「子どもたちに直接効果を与えない給料や資産造りに使われてしまった。」と述べた。
 さらにひどいことには、政府は、健康や教育のための予算を削減した。今やパキスタンも、自国の子どものための予算を増やしているというのに。
 カカール女性子ども開発局副書記官が述べたこれらの不満は、アルジュン・シン人材資源開発省大臣をいらだたせ、シン大臣はこう言った。「言い訳を探すのは、責任を逃れるのに都合の良い方法だ。」シン大臣は、「このみじめな結果は、(政府の)組織における説明責任不足を露出している」と述べ、また「この組織を、情け容赦なく確実に、つまづかないものにしなければならない。誰かがこの過ちを償わなければならない。」と述べた。

(ここまで)------------------


政府の中で問題意識を持っているにもかかわらず、解決できない問題とは何なのでしょう。そして、いったい誰の責任なんでしょうか?それにしても、子どものために使われたお金がそんなに少ないのはなぜでしょう?ブログ日記「2つのこどもの日」でお知らせした、11月20日「世界こどもの日」にNGOから配布されたチラシには、この予算のことも明記されていました。そして『子どもの福祉については、政策の優先順位の最後に置かれています。』という指摘がこれにあたると思います。

女性子ども開発局による「年間報告書(2004~2005年)」は↓から見れます。
http://wcd.nic.in/2005Chapter%2007.pdf#search='child%20budgeting'

国家第10次5カ年計画で女性子ども開発局に当てられた予算は、1,378億ルピー(約3,520億円)。その内訳は↓のサイトの276~278ページにあります。
http://planningcommission.nic.in/plans/planrel/fiveyr/10th/volume2/v2_ch2_11.pdf

女性子ども開発局のサイトはこちら↓。
http://wcd.nic.in/
人材資源開発省の組織構成については↓
http://wcd.nic.in/bigud25.jpg

写真は、インドの「こどもの日」11月14日の新聞より