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スウェーデンで体内マイクロチップの埋め込みが広がる理由とは?

2018年07月05日 | 世界情勢
スウェーデンでは、体内埋め込み型マイクロチップを乗車券や入退室管理などに利用され始めている。なぜ、スウェーデンでそこまで進むのか、その背景は...

手に埋め込んだマイクロチップを乗車券の代わりにして電車を利用し、手をかざしてオフィスの出入り口を解錠する----。北欧スウェーデンでは、こんな近未来のような光景が現実になりつつある。スウェーデン鉄道(SJ)は、世界で初めて、乗客の体内に埋め込まれたマイクロチップを乗車券の代わりに利用できる検札システムを2017年5月から導入。首都ストックホルムのイノベーションセンター「エピセンター」でも、体内埋め込み型マイクロチップに対応した入退室管理システムが設置されている。スウェーデンを拠点とするNFC(近距離無線通信)対応マイクロチップ専門開発ベンダー「バイオハックス」では、これまでに、スウェーデン国内の従業員およそ3500名に対してマイクロチップの埋め込みが実施されている。

それでは、なぜ、スウェーデンで、体内へのマイクロチップの埋め込みが広がっているのだろうか。スウェーデン・ルンド大学のモア・ピーターセン博士は、その背景として、スウェーデン独自の"バイオハッキング文化"をあげている。バイオハッカーとは、大学や企業、研究機関といった既存の専門組織の外で、テクノロジーを駆使して生物学的なものを解析したり改変したりするアマチュア生物学者をいい、その目的や思想などに応じて、様々なグループに細分化されている。そのひとつが、新しい科学技術を用いて人間の身体と認知能力を進化させ、人類を長期的に向上させようとする「トランスヒューマニズム(超人間主義)」の流れをくむもので、とりわけ、医者によらずにマイクロチップを体内に埋め込むなど、自分の体を使って実験を行う人々を「グラインダー」と呼んでいる。ピーターセン博士によれば、スウェーデンのバイオハッカーは概ね、このグループに属しているという。

また、スウェーデンの経済状況や事業環境、社会的背景も、少なからずスウェーデンのバイオハッキング文化に影響をもたらしているようだ。スウェーデンでは、1990年代から技術インフラへの投資に注力しており、研究開発費対GDP比は2016年時点で世界第三位の3.255%となっている。インターネット電話サービス「スカイプ」や音楽ストリーミング配信サービス「スポティファイ」などの優良スタートアップ企業が生まれた国としても知られ、デジタルテクノロジーにまつわる様々なイノベーションやプロダクト、サービスが経済を支えてきた。ピーターセン博士は「スウェーデンでは、人々のデジタルに対する信頼度が高い」と述べ、このようなデジタルテクノロジーへの確信や信頼がスウェーデンの文化にも強く影響を及ぼしていると分析している。

このほか、スウェーデン出身の哲学者ニック・ボストロム博士らが1998年に創設した非営利団体「ヒューマニティ+」などの取り組みもスウェーデン国内でのトランスヒューマニズムの発展や啓発に寄与。2017年と2018年には首都ストックホルムで「バイオハッカーサミット」が開催されるなど、近年では、バイオハッカーの世界的な拠点としての役割をも担い始めている。体内へのマイクロチップの埋め込みについては、情報セキュリティやプライバシー、健康影響など、様々な観点から懸念が指摘されており、その本格的な実用化に向けて解決すべき課題は少なくない。それゆえに、"バイオハック先進国"であるスウェーデンの動向は、注目に値するといえるだろう。(7/04/2018 NewsWeek)

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