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白鳥の湖 : マリインスキー劇場より<6>・DVDガイド<3>

マリインスキー劇場より<6>
~あなたはどのオデット/オディールをご覧になりますか~



DVDガイド<3>

参考DVD
キーロフ・バレエ('91年収録)WPBS-90170
パリ・オペラ座バレエ('92年収録) WPBS-90165
ウィーン国立歌劇場バレエ('66年収録) UCBG-1108

ボリショイ・バレエによる初演後、上演が絶えたものをプティパ、イワノフとマリインスキー・バレエが蘇らせた《白鳥の湖》は、今では世界一有名なバレエだ。バレエと言えば、まず《白鳥の湖》が頭に浮かぶほど。その演出も伝統的なものから前衛的なものまでバラエティに富んでいる。マリインスキー・バレエが現在上演しているセルゲーエフ改訂版(1950年)は、《白鳥の湖》のスタンダードな版として長年世界中で親しまれてきており、日本でも新国立劇場がレパートリーに入れ、毎年上演している。
 毎回来日公演で人気をさらうこのバレエを、ユーリヤ・マハーリナ、イーゴリ・ゼレーンスキー主演のDVDで観ることができる。奇をてらったところのない、気品にあふれた優美で繊細な演出と踊り、そして淡くて抑えめの色合いの衣装、格調の高い装置は、まさに《白鳥の湖》の王道。マリインスキー・バレエの実力が存分に発揮された舞台だ。ゼレーンスキーは日本でもロパートキナとの黄金ペアで王子を踊るので楽しみに待ちたい。
セルゲーエフ版以外の《白鳥の湖》DVDも複数発売されている。たとえばパリ・オペラ座バレエで有名なブルメイステル版('53年初演、'60年にオペラ座に振付)。花をつんでいるオデット(マリ=クロード・ピエトラガラ)がロットバルトにより白鳥に変身させられる珍しいプロローグから始まる。ラストは王子(パトリック・デュポン)が湖に呑み込まれそうになるが、オデットが湖に身を投げるとロットバルトも倒れ、オデットが人間に戻るというハッピーエンド。セルゲーエフ版では王子が悪魔と戦い、その羽をもぎとってオデットを救うが、こちらの王子は強大な悪魔の力に、戦いではなく愛の力で勝つ。
 キーロフ・バレエ時代のスターだったルドルフ・ヌレーエフが亡命して、ウィーン国立歌劇場バレエに振り付け、マーゴ・フォンテインとともに主演した版('64年)も興味深い。まず、第1幕のパ・ド・トロワが独特な構成のパ・ド・サンクに代わっている。ラストは、勝ち誇るロットバルトの前で王子が波間に沈み、オデットは白鳥のままというバッドエンド。ハッピーエンドが原則のロシア版に慣れた目には新鮮だ。
 ブルメイステル版とヌレーエフ版には、セルゲーエフ版にはない共通点がある。原曲第3幕のパ・ド・シスの曲、そしてバランシン振付《チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ》('60年)で有名な曲(チャイコフスキーが追加で作曲したが、使われなくなっていたパ・ド・ドゥ。ブルメイステルが楽譜を見つけ出した)を、〈黒鳥のパ・ド・ドゥ〉などに使っていることだ。振付がそれぞれ異なるので、「オールスター・ガラ」で上演される《チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ》と比べてみてもおもしろいだろう。(R)

マリインスキー劇場より<5>

白夜祭取材中に、ダンサーたちの「写真撮影会」をしました。
というのも、魅力的な舞台写真は多々あるのですが、ダンサーひとりひとりのポートレートとなると、まだまだ多くのダンサーが「こ・れ・は証明写真でしょ!」とつっこみたくなるような写真を出してくるので。
それならば、クラスレッスンに集まってくるダンサーたちにに声をかけ、
立ち寄ってもらって撮影しよう、と計画したのが「写真撮影会」。

次から次へと、ダンサーたちに「写真を撮っているから、レッスンが終わったら寄ってね!」と声をかけ、レンズの前で固まっている若い、まだ取材になれていないダンサーたちに「スマイル!」とリラックスしてもらって・・・とても楽しい1日でした。

マリインスキー劇場芸術総監督(最近「旭日中綬章」を受賞しました)ワレリー・ゲルギエフ一押しなのが、このウラディーミル・シクリャローフ。
クラスレッスンの後、「この部屋に来て、と言われたんだけど、何したらいいの?」と頭の中「?????」の状態で顔を出してくれました。ポーッと赤い頬がカワイイですね。
今回の来日公演では12月4日の「オールスター・ガラ」に出演します。他にも「白鳥の湖」で王子の友人役などでも出演するはず。詳しいキャストも、判り次第、この「マリインスキー・バレエ・オフィシャル・ホームページ」でお知らせしていきます。どうぞチェックしてください。


レッスンの後、しっかり汗を流してから撮影場所に来てくれたのは、ミハイル・ロブーヒン。リハーサル室の鏡で髪を整えてから、いろいろなポーズをとってくれました。途中、気になっていたらしいニキビをティッシュで押さえていたり。。。「カッコイイ人ほど、身だしなみに気を使う!さすが!」




同じく気を使って、レッスンの後シャワーを浴びてきてくれたのはアントン・コールサコフ。
彼は部屋に入ってきたときから気合十分。目力こめて撮影に応じてくれました。「忙しくてしばらく髪を切っていないな」と長くなってしまった髪をなでていました。彼は「海賊」公演のランケデム役を踊る予定。もちろんオールスター・ガラにも出演します。

最後は、アレクサンダー・セルゲイエフ。まだコール・ド・バレエですが、未来のスターは群舞でもキラっと光っています。ぜひ公演を観て、チェックしていただきたいダンサー。

最後に失敗談をひとつ。
楽しい撮影会だったのですが、次々と撮影したために、若手ダンサーの中には「えーっと、これは誰だったっけ」という状態になってしまいました!それに、ロシアの名前は長かったり、セルゲイとか、アレクサンダーとか似たような名前が多くて難しい!!
結局、劇場の広報担当者に確認して全員ご紹介できたのですが。。。

来日したときにも「写真撮影会」をしてみようかな、と思っています。
どうぞ次のレポートをお楽しみに!!

マリインスキー劇場より<4>

プリンシパルたちのレッスンを、リハーサル室の入口で見学する
若い女性バレリーナ3人。

彼女たちに話を聞くと・・・
朝、劇場に入るとレッスンをしたり、食事をしたり、友達と話したり、
夜は公演を観て、ずーっと劇場の中にいる生活。
しかもバレエ団の寮は、劇場に隣接している、と言いますから
本当に効率が良いというか・・・私には少し息がつまってしまうような気がします!!

「息抜きにはどんなことをするの?」と聞くと
「音楽を聴いたり、散歩をしたり・・・でもバレエのことをいつも考えている」
と答える彼女たち。

バレエが好きだということはもちろんですが、
目指しているものがある、道を極めたい、という
静かだけれども、内に秘めた熱い想いをひしひしと感じました。

2003年のマリインスキー・バレエ来日公演では
コリフェのオブラスツォワが主役に抜擢され
日本公演の話題をさらったことは、まだ記憶に新しいところ。
レンズを向けると、キラキラと輝く瞳でポーズをとってくれる彼女たちの中から
未来のスターが誕生するのです。

今回の来日公演では、びわ湖ホールで「海賊」のメドーラ役を
東京文化会館では「白鳥の湖」の主役を踊るテリョーシキナ。

今年ペルミ国際バレエコンクールでゴールドメダルを獲得。
舞踊監督のワジーエフも彼女のことを一番最初に話す、ほど。
両親が、国を代表する体操選手だったということからも
彼女の身体能力の高さを伺い知ることができます。
「今は、表現することの楽しさを追及している」と語るテリョーシキナ。
マリインスキーの今を観るなら、彼女の公演がおすすめです。

白夜祭の公演で「眠りの森の美女」のオーロラ姫を、本当に美しく踊ったオスモールキナ。初役だったのか終わった後の楽屋で、友達、スタッフに囲まれて感動の涙を流していました。
堂々としたステージの印象とはうって変わって、素顔のオスモールキナは今回紹介する3人の中で、一番の恥ずかしがり屋。ポーズも照れながら・・・でした。
日本ではオールスター・ガラ「タリスマン」を踊ります。
「海賊」「白鳥の湖」にも、準主役などの役を踊ってくれるのでは・・・と期待が高まります。



まだコリフェながら、次々と大きな役を踊っているのがノーヴィコワ。
「どうしてバレエを始めたの?」と聞くと、「キレイな衣装に憧れて・・・」と
いつも持っているという子供のころの写真を見せてくれました。
いつの日かプリマになった彼女に、きちんとインタビューしたい!です。

マリインスキー劇場より<3>

マリインスキー劇場。
多くのダンサーが「この劇場でレッスンしていると、パヴロワ、ウラーノワ、ヌレーエフ、バリシニコフのオーラを感じる」と話してくれます。
バレエのレッスンが行われるのは、毎晩公演が行われる劇場から左側に伸びた部分。


ここにリハーサル室、事務所、ダンサーたちの休憩場所、カフェなどがぎっしり詰まっています。
そして驚きなのが、劇場のステージと同じ広さの「リハーサル用舞台」があること。ここにはオーケストラピットもあり、マリインスキー歌劇場のオーケストラが来て、本番に近い状態でリハーサルすることもできるのです。
(余談ですが、そこには手で開け閉めする古ーいエレベーターがあります。しかし、3、4人くらいしか乗れないので・・・みんなレッスンが終わると急なせまい階段を登ったり降りたり。もちろん、運動不足の私は1日で筋肉痛になりました。)

さて、私が訪ねたのは白夜祭も終わりに近づいた7月。
ワガノワ・バレエ学校を卒業したばかりの「未来のプリマ」が、厳しい先生の指導を受けていました。
別室では、選ばれた女の子が白いチュチュをつけ、「白鳥」の個人レッスン中。
聞くところによると卒業公演で「白鳥の湖」を踊った注目の子とのこと。

クラスレッスンは、毎日9:30~10:30まで行われていました。
その後、プリンシパルを中心にしたクラスが1時間。前日に公演があったダンサーはお休みですが、ゼレンスキーが、ロパートキナが、パヴレンコが、サラファーノフが、ファジェーエフが・・・と次から次へとダンサーが集まってきて、思い思いにカラダを動かし始めます。



まだ眠そうな顔のゼレンスキー、「ズドラーストヴィチェ」と明るく声をかけてくれるサラファーノフ、少しはにかんだ笑顔を見せるのはファジェーエフ。
レッスン風景の動画はNewsにアップしますので、こちらもチェックしてください。


白夜祭の時期、劇場は連日連夜、公演が繰り広げられます。
ステージは当然、セットの転換、ゲネプロ、次の公演の仕込み、とめまぐるしい状態ですが、客席の様子をステージ上から撮影することができました。
「マリインスキー・カラー」と呼ばれる優雅な色調、輝くシャンデリア・・・。
ステージに立っただけで、客席からの大絶賛の拍手、ダンサーを呼ぶ叫び声が聞こえてくるような雰囲気。歴代のロシア皇帝がロイヤル・ボックスに座っていたかと思うと・・・「オーラ」という言葉を超えた何か、「凄み」のような何かを感じました。

マリインスキー劇場より<2>

9月30日(土) 既にサンクトペテルブルグは冬模様。
外気温は7度と吐く息も白いほどでしたが、
ロパートキナの「白鳥の湖」を観た後では、寒さなどどこぞへ??というくらい
身も心も静かな興奮に包まれました。


オディール姫が登場した途端、なにかの魔法にかかったのかのように、
目がその姿に惹きつけられ、まったく離すことができなくなってしまいました。
ロパートキナの一挙手一投足を見逃したくないという思いに囚われ、
瞬きすらできない状態に・・・
何十回となく観て来た「白鳥の湖」の中でもこれほどの感動に見舞われるとは。。。

ロパートキナの素晴らしさを言葉にすればするほど、ヤボになってしまうので、
あえて書くことはしませんが、 アンナ・パブロワやガリーナ・ウラーノワの実演を
みることが かなわなかった分、今、あらためて、この時代にロパートキナの実演に
触れることのできる幸せをかみしめ、この気持ちをお伝えしたいと思います。

ジークフリート王子役はイリヤ・クズネツォフ。 はじめにロットバルトでキャステ
ィングされてたので、 王子での登場ではあれ?と思いましたが、なかなかエレガン
トな仕草でとても気品のある王子でした。

翌日は、マチネでロッシーニのオペラ「ランスへの旅」を観て、夜はフォーキン・ナイト!
「ショピニアーナ」「シェエラザード」「火の鳥」の 3本立てをた~っぷり堪能しました。
「シェエラザード」ではゾベイダのニオラーゼと金の奴隷のイーゴリ・コールプの
踊りはなかなか官能的でドラマティックで美しかったです。(JAスタッフあんこ)

余談:「ランスへの旅」は2008年1月オペラ来日公演の演目のひとつです。
演出がとっても楽しいので、ずいぶん先ですがどうぞお楽しみに!