1950年、ロンドン。自動車修理工場で働く夫と2人の子どもと肩を寄せ合い、貧しいながらも幸せに暮らすヴェラ(イメルダ・スタウントン)は、家政婦として働く傍ら、時間を見つけては、老いた母親の面倒を見、近所の困っている人たちの世話を焼く毎日を送っている。頼まれれば、望まない妊娠をして困窮する女たちを助けるために、密かに堕胎の処置を施すこともあったが、もちろんそれは誰にも内緒のことだった。ある日、家族で楽しい食卓を囲んでいるところへ警察がやって来る…。
ヴェラ・ドレイク 2004年/仏・英・ニュージーランド/マイク・リー
う~ん、強烈なお話ではありましたが、なんといっても、ヴェラの人柄とヴェラ役のイメルダ・スタウントンさんの演技がかなり印象的でした。
冒頭からの少しせっかち気味な歩き方や話し方が、世話好きをよく表現していたと思います。
警察が家に訪ねて来た時の表情はこちらも絶句してしまう程、これは役を超えてヴェラ本人としか思えませんでした。
事情聴取の時や判決が出た時の涙とか、本当に、演技じゃなくて本人だろう?と思ってしまいます。
お話としては、ヴェラ・ドレイクの人生を描いているのだと思いますが、どうしても、ヴェラの行う堕胎処置に強烈な印象を受けてしまい、当時の妊娠中絶について考えさせられてしまいます。
ただ、妊娠にはそれぞれの背景があるとしても、やはり、傷つくのは女性なんだな~と思ってしまいます。
ヴェラは自分が罪を犯していることをどこかで認識していたんだろうと思うし、でも、ヴェラとしては、仕事の帰りに脚の不自由な隣人の家に寄り、温かいお茶を煎れてあげるのと同じように、望まない妊娠をしてしまって、どうしても産めないと悩み苦しむ女性たちをただ助けたかっただけなんだと思います。
ヴェラの行いは当然間違ったことではあるし、ただ助けたいだけ・・・では済まないことでもあるし、病院ではとても払える手術費用ではないけれどヴェラがいるから大丈夫とヴェラを逃げ道にし簡単に妊娠してしまうようでも困るし、本当にいろいろと考えさせられるけど、やはり、ヴェラを責めることはできません。
刑期を終えて家に帰って来るヴェラを家族は優しく迎え入れてくれるだろうと思いたいです。
あのラストはそういうことだと思いたいです。
ただ一つ、刑務所でのヴェラと他の服役囚の会話、ちょっと理解できませんでした。
ヴェラがしたような非合法な堕胎によって命を亡くす女性は多かったと言いたいのか、ヴェラと同じようなことをしている人は多いと言いたいのか・・・。