生活苦に追われた人々が一獲千金を夢見て保険の外交員となるが、厳しいノルマを達成できず次々と脱落していく。最後に残った戦争未亡人、自動車修理工、映画脚本家、元銀行員ら5人は互いに励ましあうが、やはりノルマは達成できない。やむなく5人は生活のため、全員で銀行強盗を企てる。現金の強奪には成功するが、やがて5人は無力感に襲われ、一人は子供を道連れに自殺し、一人は逮捕されて…。
狼 1955年/日/新藤兼人
切ないですね~。
こういう時代があったんですよね・・・。
生きていくのが辛かっただろうなと思ってしまいました。
そして、この時代があったからこそ現在があるんですね。。
オープニングクレジットから、かなり重い雰囲気でした。
クレジットの文字がとても印象的で、折り重なるように次のページに進むのですが、その折り重なりが音楽と共にズドンと重く感じさせられました。
オープニングが印象的なら、エンディングも印象的です(新藤監督は衝撃的なラストカットが特徴的?)。
乙羽信子演じる矢野秋子が連行される時、病院のスタッフがその様子を見つめているのですが、私なら「ガンバレ~~~!」と叫んでいただろうなと思いました。
本当に切実で、悪いことだと解っていても、この人たちを責める気持ちになれないです。
よっちゃん(矢野秋子の息子)の手術が無事に終わったことが何よりで、この後、できるだけ軽い罪で済んで、早く出所できたらいいなと思いました。
ほんの少しの光も見いだせず、ただひたすらに切実な暮らしを強いられている人々を、ただひたすらに描いている映画でした。
※今日は新藤兼人監督の98歳のお誕生日だそうです!おめでとうございます!!
5月には監督ご自身が「これで最後」と仰る『一枚のハガキ』の撮影に入るそうです。
98歳も素晴らしいですし、98歳にして新作を撮られることも素晴らしいですし、そして、そんな監督が仰るコメントにはなぜだか涙が出ます。
「こんなに長生きするつもりじゃなかったんだけど、1本1本撮っているうちに98歳になった」
「映画とは共感。芸術をつくろうとしても駄目。つくりたいものをつくって、たまたま芸術になった時、大衆は共感してくれる。大衆は温かいけれど鋭い」