13日の東京市場では日経平均株価が大幅に上昇し、3万6000円台を回復して取引を終えた。この株高を受けてドル/円は147円後半で推移し、多くの大企業が想定レートにしている145円を上回って円安方向にシフトしたことで、企業マインドの悪化による設備投資計画の下振れ懸念も後退している。
足元の水準で株価やドル/円が取引されれば、円高による物価下押し効果も限定的となり、日銀の見通し通りに経済と物価が推移していることが確認され、利上げ検討時期の大幅先送りは回避されるかもしれない。
ただ、今週中にイランがイスラエルを攻撃する可能性があると米政府高官が12日に発言しており、イランの対イスラエル攻撃が中東での大規模紛争につながることになれば、リスクオフ心理の高まりよって世界的な株価急落が始まり、日本株も再び下値模索を強いられるリスクに直面する。
<公的年金筋の株買い指摘の声>
13日の日経平均株価は、前週末比べ1207円51銭高の3万6232円51銭と続伸。上昇幅は今年2番目の大きさとなった。株価が大幅下落した5日の取引前の水準を回復し、市場に台頭していた強い悲観論は後退している。
複数の市場関係者によると、13日午前の段階から公的年金筋とみられる買い注文が散見され、午後には海外勢の買いも加わって全面高になったという。
5日の大幅下落後は、企業の投資心理を冷やすことで国内の設備投資計画に影響が出かねないとの懸念の声も浮上したが、予想よりも短期間に日経平均が3万6000円台を回復し、企業サイドへの大規模なマイナスインパクトの波及は避けられるのではないかと筆者は指摘したい。
<147円台、CPI押し下げ限定>
このことは、設備投資計画だけでなく企業の価格設定にも影響が出ると考える。日銀が13日に発表した7月の企業物価指数によると、国内企業物価指数は前年比プラス3.0%と6月の同2.9%から強含んだ。円ベースの輸入物価指数が同10.8%と6月の9.5%から伸びを高めたことが影響した。
8月5日の株価の大幅下落と歩調を合わせるように、ドル/円も一時、141円台までドル安・円高が進んだが、13日は147円台まで円安方向に戻っており、145円から150円のレンジ内でこれから先も推移するなら、輸入物価指数(円ベース)が2023年夏場のように前年比2桁のマイナスになることはないだろう。8月5日の市場波乱の心理的なマイナス効果が最小限に抑制されるなら、企業の値上げ戦略も大幅な修正を受けず、予定通りに実行されるのではないか。
その結果、国内企業物価指数も堅調に推移し、消費者物価指数(CPI)の上昇率下押しの効果も限定的になる可能性がある。
<想定より早い市場の復元、日銀の判断に影響か>
そのことは、7月の金融政策決定会合で示された国内総生産(GDP)とCPIの見通しが大幅な下方修正を回避できる可能性を高めることにつながる。市場の一部では、ハト派転換とされた日銀の内田眞一副総裁の7日の発言を受けて年内の利上げは消えたとの声も浮上し、同様な見方を示した元日銀審議委員の見解も一部で伝えられている。
ただ、市場の復元力が想定を超えて強いことが確認できれば、どこかの段階で日銀が次の利上げに向けて検討を開始する時期が来るだろう。いつになるかは今後の経済情勢次第だが「年内はない」と断定できなくなったことは確かではないか。
<イランがイスラエル反撃なら、世界的な株安に発展も>
だが、大きな懸念材料が海外要因として存在している。それは、イランによるイスラエル攻撃の可能性だ。カービー米大統領補佐官は12日、イランや親イラン勢力によるイスラエルへの攻撃について「早ければ週内にも起きるかもしれない」と述べた。また、オースティン米国防長官は中東地域ですでに展開中の空母打撃群だけでなく、別の空母打撃群の派遣を指示しており、イランの対応次第では中東での戦火が一気に拡大するリスクが高まっている。
もし、イランのイスラエル攻撃で中東での軍事衝突が本格化すれば、世界の金融・資本市場が瞬時にリスクオフ相場へと転換し、世界的な株価下落が起きかねない。そのケースでは、日経平均株価が再び大幅下落に直面することになりかねず、イランの動向に世界中の耳目が集まっていると言っていいだろう。
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