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「ネコに御注意!」のぶどう膜炎

2005-08-02 17:02:34 | ぶどう膜炎
 ぶどう膜炎のお話しを続けています。
 今回はネコに関係するぶどう膜炎をお話しします。中~南九州に多く見られる、トキソプラズマ症といわれるものがあります。これは、人畜共通の感染症で、ネコがその終宿主ですが、ヒトや他の動物も感染します。トキソプラズマ原虫の嚢胞体と呼ばれるものがネコの糞便中にでてきて、これを含む土壌や、感染した動物の生肉や排泄物、分泌物から感染すると言われています。通常は、片眼性で、中心付近が見にくくなり、そのうちに視野全体がかすんできて、とても見にくくなります。これは、トキソプラズマ原虫が眼底に入り込んで、その部分が炎症をおこし、眼球内全体に混濁を引き起こしてくるからです。
 治療は、できるだけ早く、抗トキソプラズマ薬と副腎皮質ステロイド薬を組み合わせて使用し、6週間程度を一つの目安にして行います。治療を途中で中止すると再燃することもありますので、根気よく、最後まで治療を続けることが大事です。また、この病気は、胎盤感染によって、母親から胎児に移行して、先天感染をおこすことがあります。その場合、脳内にも症状を引き起こすことがありますので、妊婦さんは、注意が必要です。
 他に、ネコや犬の蛔虫が眼内に入り込んで、ぶどう膜炎をおこす、「ネコ蛔虫症」「犬蛔虫症」があります。これは、最近のペットブーム、グルメブームに伴って増えてきているようにも思えます。砂場には、ネコや犬の蛔虫の虫卵が見つかりますし、鶏や牛の肝臓の生食も影響するとの報告もあります。
 そして、ネコにひっかかれたあと、強い結膜炎で真っ赤になって、リンパ節の腫脹、痛み、発熱などが見られる、「ネコひっかき病」もネコの常在菌によって引き起こされ、場合によっては、ぶどう膜炎もおこすことがあります。
 これらの病気の予防としては、良く手を洗うこと、生肉を食べないようにすること。そして、ネコと喧嘩をしてひっかかれないようにすることと、頭に来ても、決してネコにかみついたりしないこと?だと思います。

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2 コメント

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正確な情報を (通りすがり)
2008-04-27 01:08:08
トキソプラズマに関して、ネコ科の動物が寄生宿主になることは確かですが全てのネコがトキソプラズマなわけではありませんし、常に糞便にオーシストを排出するわけではありません。
トキソプラズマに感染後1~2週間ですよ。

また妊婦さん全てが感染するわけではありません。
妊娠以前に感染している方はすでに抗体を持っています。
一般的な感染ルートは生肉摂取によるものが多く、猫の糞からというのは極まれと言われています。

注意喚起することは重要なことだとは思いますが必要以上に動物に対し警戒観を与えるのでなく、正確に伝えていただきたいです。
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眼トキソプラズマ症につきまして (inadaganka)
2008-04-28 18:31:31
 コメントありがとうございます。
 決して怖がらせているわけではありませんが、これまでに、大学病院や市民病院で、かなりの数の眼トキソプラズマ症の患者様を治療させていただきました。また、先天感染の赤ちゃんもみせていただき、悩みながら、治療とこれからのことを考えながら、治療説明させていただきました。また、英国で妊娠され、トキソプラズマ症の可能性について説明を受け、驚いて帰国されるも、帰国後は十分や検査や説明が受けられないとの訴えで受診された方が、その後眼トキソプラズマ症を発症された経験もあります。
 眼トキソプラズマ症の発症は、先天感染として、胎盤経由で胎児に移行して発症する場合(小児期~成人で再発することがあります)、後天感染での発症(九州や沖縄ではこの例が決して少なくはないと感じています)、不顕性感染の方が免疫能低下の状態になって顕性化する場合(ステロイドの大量使用を受けられて、トキソプラズマによる両眼性の多発性壊死性網脈絡膜炎が発症して、投薬、手術を繰り返し、患者様と話し合いながら治療を続け、なんとか完全失明だけは防ぐことができた、貴重な経験もあります)
トキソプラズマ症は、全世界で、約5億の人が感染しているとの報告もあります。ただ、その大部分は不顕性感染ですが、上記のような形で、感染によるぶどう膜炎が発症した方が、眼科、特にぶどう膜炎外来を受診され、その数は、ぶどう膜炎の代表的な原因の一つと言われるほどの数です。ただ、できるだけ早期に診断をつけ、疾患に対して理解をしていただき、十分な治療を行えば、特殊な例を除いて、網膜の破壊を押さえ込むことができますので、何とかして情報を出しておきたいと思っています。
 なじみの薄い、ぶどう膜炎という疾患に、少しでもなじみを持っていただき、できるだけ早い診断と十分な治療ができますように、つたない文章で、記載させていただきました。ネコを悪者にしたつもりはありませんが、内容が理解しにくい点は、どうぞ御容赦お願い致します。なお、文章の内容は、私の経験と眼科診療プラクティス(文光堂)を参考にさせていただいております。
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