伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

四国電力は東日本大震災のことをちゃんと調べて南海トラフ巨大地震に備えていない

2016-09-28 07:38:09 | 原発震災関連

四国電力は東日本大震災のことをちゃんと調べて南海トラフ巨大地震に備えていない。という専門家の批判を、仮処分の意見書から紹介しておきます。

昨夜のこと、伊方仮処分の松山地裁の第3回審尋の報告集会に参加しました。

小倉 正(#脱原発に一票) @togura042016-09-27 16:51:51

iPod touchからツイキャス配信中 松山地裁第3回仮処分の審尋後集会 / 松山地裁仮処分審尋報告会 #伊方原発
 
実際には審尋の延長時間1時間くらい待ってから報告になりました。
この報告の中で、甫守弁護士の報告で特に強調されていた(広島の審尋でのプレゼン資料には無かった)項目が、強震動問題の専門家である海上・港湾・航空技術研究所の野津 厚氏の意見書の話題です。
野津氏の資料に基づいて、下記のSMGAモデルではなく、SPGAモデルに基づく審査が行われる必要があることを強調していました。(SMGAモデルとは、広い面積のアスペリティ部分で一様に強震動が起こるとする、現状のモデルと言えるでしょう。)
 
松山のプレゼン資料へのリンク (探せないので当面、末尾に甫守氏プレゼンの追加部分の白黒写真を貼っておきます。)
 
 以下、9月9日付けの野津氏意見書の中から、重要そうな文章を拾っていきます。
−−−−−−−−−−−−
 

プレート間地震について

 四国電力がプレート間地震を対象に行っている強震動評価の決定的な不備は、一言で言えば、東北地方太平洋沖地震の経験から十分に学ばないうちに南海トラフ地震の予測に進んでしまっているという点です。” 

 ”女川原子力発電所では、周期 2 秒程度のパルス状の地震波が観測され、これが最大加速度の値が大きくなる原因であったことが、入倉先生のグループにより明らかにされています1)。このような地震動がどのような震源過程によって生成されたのか、どのような震源モデルを用いれば再現できるのか、きちんと調査されたのでしょうか? ”

”ここで言う女川原子力発電所での波形の再現とは、単に応答スペクトルの再現ではなく、「時々刻々と変化する揺れを表現できる時刻歴波形」の再現でなければなりません。女川発電所の周期 2 秒程度のパルス波については、通常の SMGA モデルでは表現できず、SMGA 内部の不均質を考慮することが必要であることも入倉先生のグループが明らかにしています1)。このような重要な知見が伊方発電所の強震動評価に反映されていません。”

(以下、別の文書からの引用部分。)

東北地方太平洋沖地震の際に観測された強震動は,けして worst case scenario と呼べるようなものではなかったという点である.東北地方太平洋沖地震の際に最も強い地震波を励起した SPGA4 ,震央より西側であったとは言え,仙台市から見ても 150km も沖合であった.福島県沖~茨城県沖の陸域に近い場所でも SPGA の破壊は見られたが,それらは相対的に弱いものであった.SPGA4 のような強い SPGA の破壊が陸域の近傍で生じなかったのは不幸中の幸いと言うほか無い.

原子力発電所のように,一旦事故が起これば国民生活全般を脅かしかねない重要施設の耐震性の検討のために,大規模なプレート境界地震を対象として基準地震動を策定する場合においては, 東北地方太平洋沖地震の SPGA4 に相当するような強い SPGA の破壊が対象施設の近傍で生じるような条件を考慮することが必要である.別の言い方をすれば,強震動生成領域の中で局所的に応力降下量の高い部分5)が対象施設の近傍に存在するケースを考慮すべきである

しかしながら,現時点で原子力規制委員会が作成している審査ガイド()18)においては,スペリティ(強震動生成領域に相当)の位置や応力降下量の不確かさには言及されているが, SPGA(もしくは強震動生成領域の中で局所的に応力降下量の高い部分)の位置や応力降下量の不確かさには言及されていない.これでは,上述のような東北地方太平洋沖地震の教訓を反映した審査ガイドであるとは言えないので,本稿で述べたような観点からの審査ガイドの改訂が望まれる.

”この中には、伊方発電所の耐震安全性を考える上で極めて重要な事項が含まれています。すなわち、問題のパルス波は仙台市から見て 150km も沖合から来ているという点です。このことは、繰り返しになりますが私の研究だけでなく Kurahashi and Irikura1)研究でも明らかとなっているのです。同じようなパルス波の波源(SPGA) もっと至近距離にあったらと考えてみることが必要です。伊方発電所の問題点は南海トラフのプレート境界の直上にあるという点であり、債務者自身が作成した平成 27 3 20 日付けの適合性審査資料『伊方発電所震動評価について』(p.9)でも、伊方発電所からプレート上面までの深さはわずか約 41km とされています。従って上述のようなパルス波の波源が原子力発電所直下のわずか 41km の位置に存在するというシナリオも、否定できません。その場合、手元の計算では 1900Gal 程度の地震動にもなりえます。この算定手順については後述します。

”「仮に SPGA の破壊が至近距離で起こっても、もっぱら固有周期 1 ~数秒の構造物に影響するもので、短周期構造物には影響しない」と考えるのであればそれは誤りです。なぜなら、実際に東北地方太平洋沖地震では SPGA4 の破壊によってもたらされたパルス波が女川原子力発電所での基準地震動を超える地震動の原因になったと考えられるためです。

 海溝型巨大地震における強震動パルスの生成と、それを再現するための震源モデルの考え方について述べてきました。本項のまとめとして、 SMGA モデルでは、工学上重要な 0.2-1Hz の帯域の波形を正確には計算できないこと、その原因もはっきりしていることを指摘せざるを得ません。この帯域が正確に計算できない震源モデルは、原子力発電所の基準地震動を策定するための震源モデルとしては相応しくありません。原子力発電所の基準地震動には、一般的な構造物の設計入力地震動以上の信頼性が求められることから、その策定に用いる計算手法および震源モデルは、 12~ 図 15 に示される SPGA モデルによる結果と少なくとも同程度またはそれ以上の精度で、東北地方太平洋沖地震による地震動を再現できるものでなければなりません。 

(感想:いや、ほんとうに、上側3つのSMGAモデルの実時間波形との整合をみると、黒線の実データのたった一往復のインパルス波だけはモデル波形の赤い線では追随できていません。黒の線がそこだけ孤立しています。一番下のSPGAモデルのグラフの赤線だけがかろうじて黒線に追随しています。)

伊方についての試算。

”計算結果の加速度波形と速度波形を図 18 に示します。この図にあるように、最大加速度は約 1900Gal、最大速度は約 138cm/s となり、地盤条件が良いにもかかわらず、SPGA からの最短距離が小さいために、加速度、速度ともに大きな値を示していることがわかります。近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震において、このような地震動が伊方発電所を襲う蓋然性は否定できず、万が一このようなシナリオが現実のものとなった場合、福島第一原発事故のような事態が再来することが考えられます。”

−−−−−−引用ここまで。

 という、まあとても深刻な問題が311の時に現れたことを紹介しています。日進月歩の地震学の中で、モデル自体が更新、最新のものにならなければならない、というのは当然のことのように思います。

 さて、南海トラフ巨大地震とはどんな被害になるのか、どのくらい恐ろしいものなのかについて説明した、拙ブログでの以前の別問題(つまり津波で外部電源喪失からメルトダウンに至る問題での)記事へリンクを貼っておきます。

南海地震で東海~の3連動以上の実例があるとの研究

えひめ防災フォーラム2014を聞きに行きましたが、原発話は無し

9月県議会には原さよとしての請願書も提出して審議されました

 甫守弁護士のプレゼン第四部
 
 
閑話休題:振動論から見たパルス波の意味について
 
 昔、自分が某エアコンメーカーの研究所に居た頃、機械の振動問題についてどうやって調べるのか、というお勉強をしたことがありました。
 実際にはめんどいことはしないで、配管は叩いて振動の具合を見る!というのがありなわけです。
 
叩く道具はインパクトハンマー(実際にはゴムが先に付いていて、ある一定の時間の山型の力が掛かることを検知する素子が入っている)を設定しておいて、配管のほうにも加速度ピックアップという(比較的軽くて振動モードを変えないもの)センサーを瞬間接着剤で固定し、この一対で使います。
 そして使う解析の機械はFFT(高速フーリエ変換)アナライザーというもの。そこにこれらの入力信号と出力信号をそれぞれ入れて、FFT解析によって出てくる周波数スペクトルごとの(振幅と位相)ピークをチェックします。
 
入力波形は「インパルス入力」として判断され、入力のレベルに対する周波数スペクトルの図のいくつか出てくるピークが、共振する危ない周波数を示すことになります。
 
これが原発の基準地震動問題で出てくる、応答スペクトル解析と同じことをしていることになります。(地面は実際には共振しないので、配管のような特異なピークは出てきません。)
 
 さて、このインパルス入力とは何か、上記のパルス波と同じもの、と言ってしまっていいかもしれません。
有限時間続く矩形波的な入力を入れてやると、その入力波形自体をFFT解析したものは、ある限界の周波数帯域までは全スペクトルに渡ってフラットに上がる、台形的な周波数スペクトルとなります。
 そういうことで、インパルス入力自体はフラットになっているので、原発で問題となる0.02-0.5秒といったあたりの短周期の波も十二分に含んでいるわけです。
ちょっとここまで。
 
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