伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

続・入倉三宅式の過小評価問題を解決するなら今でしょ

2016-09-06 21:34:14 | 原発震災関連

 若狭連帯行動ネットワーク長沢啓行氏の講演録

https://www.youtube.com/watch?v=ajjWeSE4QHI

この講演勉強会に福井県・鯖江で参加してきました。(追記:末尾にレジュメ資料を別途紹介しました。)

−−−−−−

<原発・基準地震動>使用回避の計算法、継続の規制委に異議
毎日新聞8月30日(火)6時0分
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0830/mai_160830_8610251948.html
 ◇政府の地震調査委の専門家「規制委の判断は誤りだ」と批判 

(ここでは、この長沢氏の話を裏付ける決定打的な証言が得られたかのような記事になっていました。)

(抜粋。)
 ・・・調査委は、地震の研究などを担う政府機関。断層の幅と長さから、地震の揺れを計算する方法を06年に公表し、規制委や電力会社が基準地震動の計算に採用している。だが、この方式には、断層の規模や、地震の規模であるマグニチュード(M)を小さめに算定し、揺れを過小評価する場合があるとの指摘が出た。このため、断層の長さなどから揺れを計算する新方式を09年に公表し、各地の地震の揺れを計算してきた。調査委作成の計算マニュアルでは両方式が併記されているが、調査委は現状を踏まえ、マニュアルを改定する検討を始めた。

 これに対し、規制委事務局の原子力規制庁は「06年方式は断層の詳細な調査を前提に使う方法。電力会社が詳細に調査しており、原発の審査では適切だ」と言う。

 調査委の「強震動評価部会」の纐纈(こうけつ)一起部会長(東京大地震研究所教授)は「活断層が起こす揺れの予測計算に、地震調査委は09年の方式を使う。規制委が採用する方式の計算に必要な『断層の幅』は詳細調査でも分からないからだ。これはどの学者に聞いても同じで規制委の判断は誤りだ」と指摘する。【高木昭午】…(この後の記事も、解説を繰り返し書かれていて明確な指摘だと思えます。) 

−−−−−−ところがこの記事に対して原子力規制庁のブリーフィングでは、

8月30日原子力規制庁定例ブリーフィング
https://www.youtube.com/watch?v=a_N9kJix_Iw
8分30秒〜
NHK重田記者)
 本日一部報道にありました地震調査委員会の件について、指摘されている事項はそちらでは把握しているとしていいんでしょうか。
スポークスマン)
 はい、こちらの地震調査研究推進本部において、本年7月から現行計算方式の見直しを開始している、というのはわれわれも承知。ただ、なんらかの結論が出たという風にはきいていませんので、結論が出た段階、もし新知見として出れば、規制委員会の方でなんらかの議論をして対応を検討することになる。

記者)現在の状態では新知見として扱うまでに至っていない、という認識でしょうか。
スポークスマン)
 我々の認識ではまさに議論が始まったばかりと思っておりますでして、地震調査推進研究本部の方でも特に、なにか結論が出たと聞いていませんので。
結論が出てから。

(と先の話であるかのような答弁をしています。)
−−−−−−−−−−−− さらに、田中規制イインチョは、

8月31日田中規制委員長定例記者会見より
https://www.youtube.com/watch?v=Q-JTSCKyZAc
 先頭

毎日新聞首藤記者)(記事を書いたのは高木昭午記者)
 大飯原発の地震動の、この前の計算について伺う。
前回7月の再計算の時点で、委員長は学会などで新たに確立された方法が出てこない限りは現在の方法を使うという趣旨のことを仰った。
政府の地震委員会が採用しているレシピは規制委員会が使っているレシピとは別のレシピを使っていて、専門家の間ではそちらが主流となっているという現状があるんですけれども、この件について委員長のご見解を。

田中規制委員長)
 見解の相違じゃないですかね。われわれこういう質問もあるかと思って、「震源を特定する地震の強震動予測手法」というのが今年の6月にもう一度まとまって出てる地震調査会が、今まで出ているものよりも丁寧に書いてある。
これを使っているんですけどね。断層モデル法、応答スペクトル法と、二つあって。
 ただ使い方の問題なんですよ、何が違うんですか、はっきり、地震調査会がいまいろいろ強震動の計算についてこの方法自体がいいかどうかも含めて検討しているというのは知っていますよ。
昨日、おたくの新聞ですよね。違うとかなんとかかいてあるの。
だけど私が事務方から、事務方がいろいろ確認したところによると、纐纈先生も藤原先生もあんなことは言っていませんよ、って本人が言っていたそうですけど。
こういうことをきちっと確認してご質問されているんですか。どれだけ確信を持っているんですか。

記者)
 あのすいません、まず6月の地震調査委員会の資料をお持ちであれば、6月のその資料の中にもう一つの手法というのがきちんと記述されておりまして、いわゆる断層の長さから地震の大きさを求める手法というのがあって。
お伺いしたいたのは、別のやり方がすでにきちんと専門家の間で提示されているにも関わらず、規制委員会は今の方法しかない、と仰っているのは、それでよろしいのか、もう一つの方法でもきちんとこの大飯の地震動を検証しなくていいのか、という趣旨でお聞きしているんですけれども。

委員長)
 断層の長さというのは武村式とかその場合は松田式とかあって、その方法も書いてあります。
でも長さだけで地震動の地震モーメントがきまるのではなくて、深さというのも必要な、だから長さを使う時は深さはある程度仮定するということになっているわけ。
入倉三宅は長さと深さだから面積なんですよね動いた、断層のすべりの大きさ面積に直接関係しているわけで、その面積をどうとるか、ということについて、入倉三宅の、断層モデルについてですよ、規制委員会が使うときは、その取り方について長さをどう取るかということ、注意深くやらなきゃいけないし、その長さというのはなかなか、表面に現れた長さと実際に動く長さは違う。
そのへんをきちっと安全側にとるために、これは原発だけでやられていることだけれども、非常に詳細な調査に基づいてやっているわけで。
だけども一個一個の断層について、詳細な調査を普通の場合は調査をしていないからなかなかできない、こういう事情があることも書いてある。そういう事情がある。
調査をきちっとしたそういうものに基づいてやるべきだということもちゃんと触れられていますよ。
何が言いたいんですかあなた。

記者)
 あのー端的に、もう一つの方法、つまり長さから推定する方法に基づいて試算するお積もりがあるのかどうか、まずそこをお聞きしたいんですけど。

委員長)
長さというのは2つあって、島崎さんが前にここに来たときに言ってたのは、表面の長さと言ったんです。
我々はそういう表面の長さで長さを決めているのではなくて、詳細な調査をして、できるだけ地震が起こりそうだという長さを、かなり切れててもつなげてやって、大飯ならFoA、FoB、熊川断層。
 海の中ですけれどもつなげている。熊川断層は15キロ離れているんだけれども、ふつうはつなげないんだけれども、それもつなげてやっている。長さといっても意味が違うんだよ。どの長さを取る。
 実際の地震動は表面に現れた活断層の長さではなくて、実際の地下の、おこってからでなければなかなか正確には分かちないんだけれども、その長さを取るという、1.5倍にするとか、傾斜角を取るとか、そういうことをやっている。
そのことがダメだなんて全然書いてないですよ、同じですよ。
もっと正しく理解してから、報道して、どんな報道してもいいんですよ。
でも科学的には正しい方法をして欲しいんでけどね。

記者)
 分かりました地震調査委員会が別の方法を使っていることは、地震調査委員会もそう言っていまして。
委員長)
 でも、纐纈先生も藤原先生もそんなこと言っていないということは本人の口から確認していますけどね。そんなこと言っても困りますけどね。
毎日新聞はそういう風に言っているだけで。

記者)
 最後にしますが、地震調査委員会が別のやり方をすると決めた場合には再計算をするお積もりはあるんでしょうか、地震調査委員会の方法に乗っ取って再計算をする必要があるとお考えなんでしょうか。
委員長)
 それは、そういう専門家がこちらの方法を採るべきだと言うことであれば、再評価をしてこれまでの評価がいいかどうかというチェックはしないといけないと思いますよ。

−−−−−−−−−−−−
 …ということで、田中イインチョは相手が記事を書いた記者本人ではないことをいいことに、逃げの一手なわけですが、言っていること自体は説明はそのとおりな箇所もあります。
 先の記事の美浜3号機へのパブコメに書いたように、纐纈先生(藤原先生も)に公開ヒアリングをしてもらうことで、毎日新聞の指摘が正しいと認めさせるというレベルのことが、規制委員会への王手になるはずです。 

 なぜ入倉三宅式だと過小評価になるのか、というのは島崎氏の議論の詳細に入る必要があります(また後日)が、それは終わった事実として、過小評価なら他の式を使うべき、とこちらが主張して武村の式を持ってくると、それはまだ業界標準ではない、という反論が有効となってしまいます。

 業界標準は以前からあるものがある、これでも過小評価の是正は充分というのが長沢先生の見立てになるのでしょう。


追記:長沢講演会の配布資料中から、ブログ主のみたポイントとなる資料を紹介しておきます。
 
1.入倉式の過小評価問題、2.推本による6/10公表の新レシピの意味、3.耐専スペクトルと断層モデルの整合のために、4.松田式+修正レシピの採用で審査はどう変わる?の4項目を話す、と。
 まずは島崎氏の問題提起の年表。長沢氏の本論では、右側真ん中の、規制庁の変な試算手法に規制委員会がコロッと騙されたあたりの謎解きがメインでしたがそこは頭がこんがらがるだけでしょうから略させてもらいます。
 最初の島崎問題提起。(赤線はブログ主。)
 研究結果同士の違いについての長沢解説。
 2種類の研究手法、耐専スペクトルと、断層モデル。本来は(複数の地震に対して両方の研究結果を付き合わせると)同等な結果となるべきものが、断層モデル(入倉三宅式を採用)が一貫して小さい現状。(ほんとはこれを受けて、安全性確保のためには耐専スペクトルの評価の方を採用すべきところ、原子力規制委員会の不作為ですね)
 地震調査研究推進本部では、現状で2つの断層モデルの両方を推奨。しかし右端のみが原子力分野では使われてきた。
この説明部分は重要ポイントでしょう。この3つの方式の関係が分かっていないところが、長さ問題についての田中イインチョの説明が舌足らず(あるいは理解していない)な原因なのでしょう。
 レシピって何?、と問えば、このそれぞれのパラメータ(□のブロック)をどうつなぐ(料理する)か、がキモということ。
 耐専スペクトルの評価だけでは個別の震源断層内の不均質さによる影響を説明出来ないので精度が下がる、と。
そのことを避けるためには断層モデルによる分析をすることが必須だけれども、実態と合わないモデル(入倉・三宅式の原子力ムラ方式)を使うよりは、耐専スペクトルの上流である松田式を元にした上で、(断層面積の修正として)(逆向きに使うことで安全側の過大評価となる)入倉・三宅式を使って断層面積を求め、断層モデル化する・・・というちょっと変わった味付けの料理であることを田中イインチョは理解できていないから、原子力ムラ方式の優越性を主張するのでしょう。
 断層モデルによる手法では、震源断層内部が不均一なモデル(アスペリティモデル)を創って、その特性的なパラメータ(短周期レベル/アスペリティ平均応力降下量)で地震動を説明する。
 この6月に推本では新たな手法として、原子力ムラレシピの修正を提案。(この時点で、過去の各原発での規制審査合格の中身も本来は見直すべきもの。)
これは田中イインチョはおそらく知らないものでしょう。
 ちなみに、もう一つの国の機関、中央防災会議では、国内の複数の活断層で各研究式を使った場合の想定地震規模(マグニチュード)を比較して、入倉三宅式が他と比べて過小評価となっていることをすでに指摘している。この問題はすでに以前から長沢氏他から指摘されつつ、原子力ムラが見直しを拒否してきていたもの。
こちらは耐専スペクトル自身についての修正。過去の中越沖地震を踏まえた変更(内陸補正を無しに)についての解説。
断層モデルにおける「1.5倍化」を規制庁はばらつきに対応するため、と言っているが、耐専スペクトル自身の評価が起こった現実の地震に対応していないから変えた1.5倍化なので、耐専スペクトルと断層モデルの差を埋めるものにはなっていない。
 それぞれの式についての長沢氏評価。テキストでどうぞ。
 
①(松田式+修正レシピによる断層モデルを使えば)断層モデルによる地震動評価が耐専スペクトルの1/2〜1/3倍になる乖離が解消される。
②修正レシピに基づけば、大飯・伊方・島根ではクリフエッジを超え、川内・高浜ではSs(基準地震動)を超える。
 
入倉式 → 使うべきでない。(地震発生前には、活断層や変形地形などによる均質な震源断層しか分からないため、不均質な震源断層を推定することができないため、地震動が過小評価される)
武村式や山中・島崎式 → 使えるレシピがない。(国内地震観測記録の震源インバージョンによるすべり量分布を解析し、国内用の断層モデル・レシピを作り、武村式等とつなぐ関係式も確率させるべきだが、長年月を要する。)(原子力規制庁は今回の武村式の試計算で、レシピを改ざんした)
松田式による推本の修正レシピ → 全国地震動評価だけでなく原発にも使うべき◎ 
(測地データに基づく均質な「震源断層の長さ」と「地震規模」の平均像を与える関係式として松田式は北米中心データにも国内データにもほぼ適合しており、修正レシピは北米中心データに基づくレシピではあれ、現時点では次善の策として適用可能。ただし、20〜35kmでは断層幅のみ拡大に留めるべきである)
 
 
 他の項目は解説するのが難しいので略。
9月14日追記:
耐専スペクトル法と、推本の2つのレシピを自分でもまとめてみました。
 
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