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氷流日記

氷(筆者)と流さんの奇妙な徒然記

星の王子様 Vol.3

2014-07-11 05:40:31 | 氷流日記
星の王子様 Vol.2 からの続き




こんなばかげた企画でもみんなよく集まってくれたものである。
開始の合図と共に朗読が始まる。
外からは園児たちの歌の声が、
釜ヶ崎のおっちゃんたちの怒鳴るような声が
あけた窓から聞こえてくる。
ここ西成市民館の横はわかくさ保育園がある。
西成市民館もわかくさ保育園も石井記念愛染園というキリスト教系の病院が経営している。
そのわかくさ保育園から元気な園児の歌声が聞こえてくる。
モデルのミホさんも緊張からか手探りの様子。
なかなか朗読の世界には入ってゆけないようである。
描くほうも描くほうでまだ形がとれていない間には
聞こえてくる朗読の言葉に集中力が持続できない。
戸惑いのなか、両者の調和が取れないまま時間は過ぎていく。
この企画は失敗か、そうちょっと感じてしまった。
ここまでくれば途中で中止にするわけにもいかず、
突っ切るしかない。
関係性がとれないまま最初の20分が終了する。
モデルのミホさんはダンサーである。
芝居というかパフォーマンスをしているのであろう。
モデルをしているダンサー仲間から紹介してもらい、
西成市民館まで来てもらった。
デッサンモデルの仕事ははじめてらしくかなり緊張しているみたいである。
私も他の人も彼女と会うのははじめてである。
お互いなれない相手になれないことをしている。





nozomiさんの作品



2回目をはじめる。
モデルの彼女も場に慣れたのか朗読に固さがとれる。
それと同時に我々も少しずつ絵の世界に入っていく。
彼女の朗読ぶりを見ているとあらかじめ何回か下読みしていることがわかる。
決してうまい朗読というわけではないが
みんなにお話を届けようとする意思が感じられる。
こういうばかげた企画にまじめに応えてくれるというだけで
この人はいい人だとわかる。
少し余裕が出てきたので他の人の進行を拝見して、
少しアドバイスをする。
みんな緊張感がとれ、顔に余裕が感じられる。
「本宮さん、楽しいですわ。
はじめて人物を描けて。」
とはギャンさんである。
彼のたっての願いであるひとつを叶うことができたので満足げである。




星の王子様 Vol.4 へ続く




星の王子様 Vol.2

2014-07-10 07:17:53 | 氷流日記
星の王子様 Vol.1 からの続き




もともと朗読する人を描こうとしたのはこういうきっかけである。
「本宮さん、星の王子様読んだことある?
あの本な、あれ絵を描いている人が書いた本やで。
この前、読み返すことがあってどうしても気になってな。
各地で星の王子様の朗読会をすることにしたんや。
自分だけで読むんじゃなくて、
人の読んだことも含めて朗読会をするとよりその内容がわかってきましたわ。
これは絵を描いた人が本を書いている。
よかったらじっくり読んでみてください。」
そう西川さんに勧められた。
西川さんは大阪大学で臨床哲学の教鞭をとっている方で
釜ヶ崎で哲学の会をしている人。
その哲学の会に参加して、西川さんのやっている姿を見て、
憧れて、楽描の会を立ち上げた。
その西川さんが勧める本。読まないわけにはいかない。







早速、紀伊国屋書店で本を購入した。
そして、そぐに読み出すとうわばみの話がでてくる。
このシーンは私が常日頃絵を評価する人たちに思っていることと
ぴったり一致する。
いろんなデッサン会に参加しても細かいデッサンの狂いしか言わない人や
自由に個性を出せばいいというような人がほとんどである。
自分に起こったことを素直に絵にすることは
つまらないと評価される。
人より技術が飛びぬけているか、人とは違うということをしめせるか、
そのどちらかである。
それはどちらともドキメンタリーではなくて
報道とかコントに近い。
外で起こったことをできるだけ加工せずに誰かに伝えたい、
送り出したいと思ってもそれは個性のない人間だとハンコを押される。
この人にはわかってくれるかもしれないなと思って話すと、
「いや、まずは技術を上げてからでしょ。
描けるようになったら何かが見つかる。」
「人と同じようなことをしていてもつまらない。
人それぞれ個人個人違うのだから、
同じようなことをしていても意味がない。」
そんな言葉を言われて心が傷つく。
じゃなるべく言わないでいこうと離れていくと
ドンドン行きたいデッサン会がなくなっていく。
そんなときに釜ヶ崎で風景でも描こうか、
そういう気持ちになって釜ヶ崎にやってきた。
まさにそういう気持ちを星の王子様は伝えている。
おんなじ気持ちだ。
なら、描くしかない。
そういうことで星の王子様を読んでいる姿を描こうという気持ちになった。




星の王子様 Vol.3 へ続く









星の王子様 Vol.1

2014-07-09 18:17:47 | 氷流日記
7月5日、着衣女性の固定デッサンをした。
画材はそれぞれ好きなものを選択。
私は油彩を選んだ。
10時からの開始でみんなには9時50分頃に来て欲しいと連絡した。
私は9時にギャンさんと西成市民館で待ち合わせをすることに。
9時前に車で西成市民館に到着するとすでにギャンさんは待っていた。
「おはようございます。」
「おはようございます、本宮さん。
今日ははじめての人物画で楽しみにしています。」
2人でニコリと笑い、車から画材を降ろす。
無料で借りたイーゼルやカルトン、楽描の会で買った水彩紙、
自分の油彩道具などなど荷物はたくさんある。
すべて荷物を降ろし、駐車場に車を停めにいく。
1階に置いたすべての画材を3階まで持ち運ぶ。
もちろん、エレベーターなどは無い。
人海戦術。
私も釜ヶ崎の人たちも得意の分野だと思う。
3階までの道のりは思ったよりしんどい。
5往復くらいはしたか。
ギャンさんは肺気腫で階段だけを登るだけでもきついのに荷物を運んでくれた。
1回だけでいいので荷物の番とイスとテーブルの用意をしてほしいとお願いする。
ほっとした顔でイスを並べていく。
その姿を見ながら下に下りて荷物を運ぶ。
すべての荷物を運び終えるとギャンさんが、
「(スーパー)玉出に行ってお茶とお菓子を買ってきますわ。
今日は暑いからな。これくらいサービスせんといかんわな。」
とニコッリ笑って部屋を出て行く。
楽描の会のはじめての人物デッサン。
いろんな気持ちで高揚していく。
ギャンさんの夢が一つ叶う。
本当はヌードデッサンがしたかったのであるが、
まあそれも順番ずつ段取りを踏んでからである。
イーゼルをみんなのイーゼルを立てて用意をする。
モデルのミホさんも来ている。
10分前、まだ参加者は私を入れて5人。
私、ギャンさん、YUさん、お菊さん、ミナさん。
ここに集まる人たちはゆっくりしている。
かといって来ないのは非常に困る。
モデル代が発生するからである。
5分前。
初参戦のとうふさんが来た。
ギャンさんの紹介である。
彼は俳人で詩を読む会で知り合ったらしい。
そのあと、ぞろぞろ時間ギリギリになって入場してくる。
西川さん、アマゾンさん、メルちゃん。
ここまで集まるとほっと安心である。
描いている様子を見ているだけのカバさんが、
「ユキちゃん、遅れるて。」と大きな声で教えてくれる。
じゃそろそろ始めるか。
このときで10分過ぎている。
朗読をする女性を描くデッサン会のはじまりはじまり。





とうふさんの作品



星の王子様 Vol.2 へ続く












但馬屋 Vol.4

2014-07-07 07:10:02 | 氷流日記
但馬屋 Vol.3 からの続き



「向こうで絵を描いてる兄ちゃんがいるって聞いたんで。
俺たちも絵描いてます。」
話すとなかなかいいやつら。
絵を描くという共通のものがあると話が出来る。
絵には不思議な力があると思う。
例えば、外で写真をしているものがいても話しかけられることは少ないだろう。
同じ写真仲間でも。
絵描きは同じ場所に留まって絵を描かなければならない。
逃げることは出来ない。
そこに釣りの撒餌のようなものがあるのだろう。
大概寄ってくるのは酔っ払いである。
たまに若い兄ちゃんが来ると面白い。
それも絵描きというおまけ付き。
固く握手をして別れる。
別れ際に日洋展と釜展、そして7月5日のデッサン会のお知らせをする。
7月5日来てくれたらいいなと思う。
気分のいいときにボールペンを置く。






ボールペン画 但馬屋さん