ひゃっかんのひとりごと

日常生活の中で感じた事を、防備録の代わりに徒然に。

モンペリエの野外コンサート

2006-07-29 | 日々雑感
 まだ相変わらずフランス南部の町モンペリエにいる。今年から私が本腰を入れようと決心した「アマデウス」の昨日が初本番だった。こちらの夜は短い…と言うか夏時間なので日照時間が長いのだ。本番開始は午後10時!日本では考えられない時間だが、夜中の2時までトラム(路面電車)は動いているし、車で来る人も多いので皆夕食をゆっくり家で食べてから娯楽のためにコンサートに出掛けるらしい。
 コンサート自体は野外で、日照時間が長いので夜の8時までは直射日光に当たってしまうのでリハーサルは殆ど不可能だ。もちろん前日までにみっちりとリハーサルをやっているので何ら問題ないのだが、野外と言う事でPAシステムを使用しないとならないので、夜の8時半頃からリハーサルを開始する。PAを操っているのはラジオフランスの人たちだが、使っているマイクは何と私がやっとこがんばって買ったショップス(SCHOEPS)を8本は最低限使用している。こんなのは日本ではNHKでさえやらない。
 ラジオフランス主催と言う事もあって音声はこちらで別マイクを立てる事は出来ないので、PAシステムからラインレベルで分けてもらったのだが、たかがPAと侮っていた自分が恥ずかしい。スタジオ収録以上のクォリティなのだ。奥行感・左右のバランス・楽器間のバランスすべて完璧である。後は自分でマスタリングするだけでOKな状態にまでなっている。やはりセンスが違うんだなと思うと同時に、クラシックなら野外でもショップスを使うと言う姿勢には驚かされる。
 それと同時に驚いたのが、聴衆の集まり方と熱狂の仕方だ。もちろんラジオフランス主催であるから入場料は無料なのだが、800人近い人が続々と集まってくる。この日はすべてモーツァルトプログラムだったのだが、聴衆は「日本人だから」とか「たいしたメンバーでは無いだろう」と言う先入観は一切なしに音楽に聴き入っている。日本では考えられないが、野外劇場のせいもあって、煙草を吸いながら・ワインを飲みながらとか自由気侭なスタイルで聴いている。時には知っているメロディーになると一緒に口ずさんでいる人もいる。さらに楽章間にも盛大な拍手がわき起こる。
 日本でもし同じように仮にNHK主催で田舎町でこんなコンサートをやっても、聴衆は一向に集まらないだろうし、メロディーを一緒に口ずさむ事も無いだろう。氷川きよしコンサートなら集まるだろうが、無名の演歌歌手なら同様に聴衆もまばらだろう。娯楽に対する考え方が随分と異なるの気がする。
 日本にクラシック音楽を完璧に定着させるのは無理だと思っているが、今のように娯楽までも集団護送船方式でなく、偏らずに色々な分野に分散してくれれば中にはクラシック音楽に興味を示す人も増えるだろうし、楽しみ方も人それぞれになって楽しい人生を送れると思う。そのためにも私は残りの人生(折り返し地点はとっくに過ぎたが)をアマデウスに全力を注ぎたいと思う。なぜならアマデウスは聴衆を魅了するだけの魅力を持った団体だからだ。
 これだけの事をやろうとする気力が少し戻ってきた。だいぶ調子が上向いているようだ。こちらに来てから薬による不調は一切無い。このまましばらくヨーロッパに滞在していたい気分だ。

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