horitaakioのgooブログ

88歳の老人ですけれど、天寿の続く限り頑張って見たいと思います

はまゆう

2002-07-09 18:34:00 | 日記
 もう三十数年前の話だが、先輩の同僚から「庭に埋めとけばひょろっと芽が出るよ」と言って
ころころした実を二三個もらった。もともと園芸に趣味のない・・というよりは世話が面倒だと
いう無精者の私なのだが、折角頂いたからと半信半疑で埋めといたら、ほとんど水もやらないのに芽が出てすくすく育ち、やたらに長い葉が四方に伸び出した。

そして数年後にはその葉っぱ集団の間から野菜の「おくら」の親玉みたいなのが顔を出してするすると茎が立ち上がり、てっぺんからパクッと割れて白い棒の束がでてきた。その棒の如きものがさらにパクッと開いて細長くて真っ白な数枚の花びらが打ち上げ花火のように広がり、薄紅色の長い蘂が中央から数本のびてその先端には黄色い花粉の袋がついている。

その姿は華麗というよりは清楚、美しいが南国の花にしては陽気さがない。はじめは一株だけだったからなおさらわびしい感じだった。花の命も短くて茶色に萎れて垂れ下がった様子は見るも哀れをもよおすほど。誰かが「ゆうれいばな」などと言ったものだから愚妻にも嫌われてしまった。
 
ところがこの哀れっぽいのが凄い生命力を持っていた。花が終わったあと茎の先端に青い珠のような膨らみが幾つもでき、やがて白褐色の実になって地に落ちる。そのままほっといたら何時の間にかあちこちから芽を出して増えていくのだ。境の低いブロックを越えて隣家の庭にまで生えてくる始末、冬の間は葉が枯れてしまうのに春になると青々した葉が遠慮なく伸び広がる。
 
猫の額の如き我が庭でのさばってもらうわけにはいかないので、全部引っこ抜かれる運命なのだが、今は鬼籍に入った先輩の残した一株だけが今年も花を咲かせている。



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