このところ、身内や知人の中で「ガン」が猛威を振るっている。
最近鬼籍にはいった身近な人達、いずれもその犠牲者なのである。
家内が昨年夏に甲状腺癌を切除して、今なお術後の後遺を引きずっている。
五十数年来の付き合いである友人は、ここ数年で五回以上も膀胱癌の手術を受けているし、その奥さんも大腸癌を手術している。彼が去年、家内の退院後「おたくもガン同盟に入会ですね」と言った。
私の方は七十六歳の今日まで、様々な病いで体は切られ続けてきたものだが、「ガン」とはご縁がなかった。強いて言えば三十数年前、胃にポリープが見つかり、当時の医学情勢から「今の中に切ってしまえ」と胃の三分の二もろともバッサリ切られたこと位であった。
ところがである。二週間に一度通院して診察投薬を受けている近所の医院(専門は胃腸科)で九月の下旬に大腸の内視鏡検査の結果ポリープが見つかった。しかも七個もである。そのうち大きいのは直径1cmのが2個、組織検査で「腺管腺腫」(ガン化の確率100%)と判明した。
「早急にと言うわけではないが、とにかく切除しておく必要がある。設備のある病院に紹介するから」との話、こちらの都合もあって十一月にはいってからということになった。
実は大腸ポリープの切除に関しては、弟も妹も経験者なのだ。ことに弟の場合、アメリカの病院勤務で一時期だけ帰国して患者をみるという内視鏡専門医に十年前からかかっていて、既に数回手術を受けているそうだ。手紙のついでに私のことを知らせたのだが、二人とも長距離電話(藤沢と東京)をかけてきて、手術の状況その他を初体験の兄貴にいろいろと教えてくれた。
腸をからっぽ状態にする術前の措置が厄介だが施術そのものは日帰りで済むという。術後の止血がうまくいかず一泊した例もあったとかだが、とにかく大したことじゃないと力づけてくれた。
まあ医学の目覚しい進歩によって、この程度の手術は手軽いうちなのだろうが、医療ミスとかがニュースにもなる昨今だし、田舎町の病院だし、受ける側にとっては気の重いことなのだ。
執行猶予の期間もまもなく切れる。