社会課題解決2020

実に10年ぶりにブログリニューアルです。ここでは主に社会の課題解決、SDGs関連を取り上げて行きます。

成田での警察庁キャリアの不祥事から真の警察刷新を考える

2009-01-17 01:51:13 | Weblog
新聞報道によると、警察庁人事課の課長補佐の警視(36歳)が昨年12月24日、成田空港の手荷物検査場で、国際線への持ち込み制限を超える男性用化粧水を持ち込もうとして女性の航空保安検査員に制止された。その際、「私は警察庁の警察官だ。県警本部長に連絡してもいいんだぞ」などと暴言を吐き、トレーを投げつけたという。
この警視は2000年に警察庁入庁。昨年4月から人事課に配属され、警察官の職務倫理教育を担当しているとのことだ。

誰もがこのニュースを知って情けないと思ったであろう。

警察官の不祥事は後を絶たないのが残念だが、この事件は法律的には重くはないが、組織体質的にはとても重く受け止めるべきものである。

警察組織の人事制度は巡査→巡査部長→警部補→警部→警視と言う典型的な
資格制度であり、多くの警察官は都道府県の警察本部(東京都は警視庁)に巡査として採用され試験をパスして昇進(昇格)をしていく。私は警部クラスのマネジメント研修の講師を行った経験があるが、警部は、一般企業で言えば課長級で部下を持って組織の統括を行うマネジャーである。年齢は35歳から55歳位と幅がある。もちろん警部にならずにして定年退職となる警察官は沢山いる。

そうした多くの警察官に対して、この警察庁の職員はキャリアと言われ短期間で、警部のさらに上の警視まで昇進(昇格)をしている。一般企業で言えば、
地方の支社採用ではなく本社採用のエリート社員。まあこれだけの短期間の昇進
となるとそれは普通の人ではなく、オーナーの息子、後継者にありがちな処遇
と言える。

皮肉なことに彼が警察庁に入庁した2000年は相次ぐ警察の不祥事を受けて
国会公安委員会に警察刷新会議が設置され、7月13日に緊急提言が発表された。
しかも、この日を警察刷新の日と定めて、この提言が風化しないようにと
された。これは警察官の職務倫理教育の原点にもなっているはずである。

そしてこの緊急提言の中には「人事・教育制度の改革」と題して以下の項目が
見られる。
http://www.npsc.go.jp/sasshin/suggestion/7_9/index4.html

・・まず、キャリア警察官に最も求めたいものは、霞が関にとどまらず都道府県警察の第一線現場も自らの働きの場であるという認識であり、「ノブレス・オブリージュ(高い地位には義務が伴う)」の考え方に基づく使命感の自覚である。
 また、入庁後の約10年間は、将来必要とされる知識を習得し経験を積む上で大変に貴重な期間であるため、他省庁の1種採用者との処遇の均衡に配意しつつも、警視に昇任するまでの期間を現在の2倍程度に延ばすべきである。被疑者の取調べなどの捜査実務や住民と直接に接する交番での勤務経験などを充実させるとともに、海外留学の機会も与えるようにすべきである。・・・・

今回の不祥事から推察されることは、こうした人事・教育制度の改革は道半ば
ということである。もしかしたらこの警察刷新会議の提言そのものが風化して
いるかもしれない。

成田空港での彼の発言からは「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige:高い地位には義務が伴う)」の考え方に基づく使命感の自覚どころか、「ノブレス・
プリビレッジ(nobless priviledge:高い地位だから特別扱いが当たり前)」の
考え方に基づく法令遵守と倫理観の欠如が伺えるのが残念だ。さらに言うと、
組織の運営原則から外れた認識も持っているようだ。

「県警本部長に連絡をしてもよい」とはおそらく「県警本部長に言えば特別
扱いしてくれ見逃してくれる」との認識があったわけで、普通の常識では
考えられない。なお、県警本部長は警視よりもさらに2階級ほど上の資格
を持つ人である。

 一般の企業を例にすると、本社の人事課の課長補佐が、工場に出向いた時に
工場の安全基準に抵触した行為をしようとして工場管轄の警備員に制止された
時に「工場長に伝えておくから見逃してほしい」と言っているようなもの。

 警察庁=本社、県警本部=工場長、そしてその工場長の人事権を持っている
人事課の課長補佐の方が偉い・・これは勘違いのノブレスと言うものだ。
少なくとも人事課の職員である以上、人事教育制度の改革を進めて警察組織の
信頼回復と使命発揮に結びつけることを第一に考えるべきである。それが
職業倫理と言うものだ。

現在の警察庁の人事課長は大変お気の毒であるが、今回の事件を決して
表層的なものとして受け止めないで、次の自分の異動先などを気にせず
再度、警察刷新会議の提言を読み直して、キャリア職員が「ノブレス・
プリビレッジ病(=オーナーと勘違い病)」に陥ってないか、日頃の
発言や行動にその兆しがないかなど交通安全教育で強調している「ヒヤリ
ハットの法則」も当てはめてみて、人事評価と教養(研修)の在り方を
再点検することを期待する。

今年の7月13日が楽しみだ・・・




 





 

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
警察キャリアの不祥事について (公務員の☆)
2009-01-18 16:06:08

星野さん、公務員の☆です。

この不祥事も大変残念なものですね。

警察刷新会議による緊急提言が行われた7/13を警察刷新の日と定めたアイディアはいいですね。
そういった提言はすぐ風化してしまうので、毎年再確認する日を設けるというのは、大変意義のあることだと思います。

それでもこういった不祥事が起こってしまった原因は何なのでしょう。

公務員にはいろいろな権限が与えられたり、労働条件で特別扱いされている面などあります。
それは全てよりよい公共サービスを実現するためです。
それを自分個人の特権かなにかと勘違いしてしまう人がいることは恥ずかしいことです。

きっとこの方は日頃から特権意識を持って仕事をされていたのかな、と思います。
ひょっとしたら職場や組織そのものの体質からしてそうなのかもしれません。

星野さんの仰るとおり「ヒヤリハットの法則」を当てはめて、人事評価や研修の仕方の見直しをしてもらいたいものです。
返信する
公務員の☆さんへ (星野芳昭)
2009-01-18 23:24:05
コメントありがとうございます。同感です。

不祥事が起こる原因は・・おそらく
目的意識の無さでしょう。
ご指摘の通り「公務員に処遇が与えられることの目的はそもそもその全てがより良いサービスを実現するため」なのですが、「誰をどのようにしたいのか?するべきなのか?」という
目的意識がないから、勘違いをしてしまうのではないでしょうか。

今後ともコメントよろしくお願いします。


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Unknown (毎日新聞)
2010-10-31 11:09:04
 6日午後10時25分ごろ、東京都大田区大森西の京浜急行大森町駅の1番線線路上で、品川発羽田空港行きのエアポート急行電車(8両編成)に女性がはねられ、死亡した。

 警視庁大森署によると、死亡したのは同署刑事組織犯罪対策課の小清水恵美巡査(29)=横浜市青葉区あかね台。運転手が線路上に横たわっている小清水巡査を発見し、急ブレーキをかけたが、間に合わなかったという。同署は自殺か事故の可能性が高いとみて調べている。

 同署によると、小清水巡査は6日午後7時ごろ、勤務を終え、署員数人と駅近くの居酒屋で酒を飲み、帰宅する途中だった。

 同署によると、小清水巡査は平成21年4月に入庁、同年10月に大森署に配属された。勤務態度に問題はなかったという。

 なお、警視庁人事第一課の調査によると、この日一緒に飲酒していたには、大森署刑事組織犯罪対策課課長警部草野憲治、地域課課長代理警部川原辰彦、地域課係長警部補小杉俊夫であり、3名は警視庁組織犯罪対策第五課時代の上司部下の関係で、この日小清水巡査を誘い、4人で大森町駅近くの「八剣伝」という居酒屋で飲酒していたとのこと。

 警視庁には、飲酒による事故防止のため「飲酒三原則」という内規があり、①非番の飲酒禁止②二次会の禁止③3時間以内の飲酒を厳守し事故防止をはかっている。ところがこの日は、川原警部は非番であり3時間を越えての飲酒をしていたことが判明、事故が発生し署長からの呼び出しにも応じられないほど泥酔していた。

 大森署員によると、小清水巡査は小柄で目がクリッとしたかわいい子であり、元気に署内を走り回っていた姿が印象的であって、遺体を見たとき変わり果てたその姿に思わず目を覆ってしまったという。

 人事一課は、飲み会自体に問題がなかったか等、更に調査を進めている。
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