考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

年金問題を考える

2006-05-30 21:56:42 | 社会的責任

社会保険庁の不適正手続きが話題になっていますね。
お粗末な手続きには言葉がありませんけど、それ以上にテレビでも、新聞でも、キチンとこの問題を解説できている文章に出会えないことが・・・残念でなりません。要は説明するのがややこしすぎるということでしょうね。
この点が実は年金問題の最大のポイントだという気がします。

まずは今回の社会保険庁の不適正な取り扱いについて、簡単に説明します。

  • 年金の未納者(過去2年間に1ヶ月以上の未納月のある人)は全国で1,119万人(平成16年度)。
  • その未納者に対して、社会保険庁は「強制徴収」、「督促」、「免除(猶予)」などの対応により納付率を上げようと努めた。
  • 納付率2%の改善を目標にと、社会保険庁長官からの督励があった模様。
  • 数字的には2%の改善を達成したかのように見えたが、京都での「不適切な取り扱い」の発覚を皮切りに、26都道府県・11万3千件超もの「不適切な取り扱い」があることが分かった。
  • 「不適切な取り扱い」とは、本人の申請書のないまま、勝手に免除(猶予)の手続きをした。場合によっては本人の意思確認さえ取っていなかったものまである。

と、こんな感じです。

みなさん、ハローです。ホディです。

社会保険庁を責めるのは簡単ですけど、手続きや組織の体制をしっかりすれば良いという問題ではないと思うんです。今日は久しぶりに詩(私?)的な話ではなく、自分なりの問題整理をしてみたいと思います。

1.まずは、「国民年金」の対象について整理します。

20歳以上の日本在住の人は基本的には国民年金の対象者となります。
また、国民年金は大きく分けて以下のとおりの3種類の対象層に分かれます。

第一号被保険者 : 自営業者、フリーター、学生、無職など
              ※要は第二号、第三号被保険者以外です。
第二号被保険者 : 広くサラリーマン(厚生年金・共済年金等対象者)
第三号被保険者 : 第二号被保険者の被扶養配偶者(専業主婦(夫)など)

ちなみに人数は、第一号が約2,200万人、第二号が約3,700万人、第三号が約1,100万人となっています。(平成16年度)

そして、国民年金と言う名前も良くないと思いますけど、保障されているのは「老後の年金」だけではなく、「遺族の生活保障」「障害となった場合の生活保障」の内容も含まれます。
また、年金保険料だけで成り立っている制度ではなく、国(税金)からの補助もあります。基本的には、給付の1/2(2分の1)が国の負担になる予定となっています。

2.対象層ごとのそれぞれの年金保険料の納付状況は以下の通り。

・第二号被保険者、第三号被保険者の保険料は、給与天引き分と会社負担分ですので、基本的には納付率は極めて良好のはずです。
・一方、第一号被保険者については、対象が自営業者から無職までとなっており、幅広くなっています。そのためか、納付率は低調で63.6%(平成16年度)。しかもバブル当時の85.7%をピークに下落傾向となっています。
・保険料の全額免除者は285万人、学生納付猶予者は173万人(平成16年度)となっています。

3.冒頭で触れた年金の未納者1,119万人については、次の通り。

・正式に手続きを踏んだ人(全額免除258万人+学生猶予173万人)の約2.5倍もの人が宙に浮いた状態になっています。
・「生活扶助」を必要とする人などは、「法定の免除対象者」となりますので、手続き不要で自動的に「全額免除」になります。上記の未納者には含まれません。
・この未納者1,119万人への対応が今回の不適切な対応につながるわけです。

4.未納者の選択肢は次の通りです。

・原則として「納付」することが必要です。
・学生の場合は「学生納付特例」、つまり保険料の納付を猶予してもらうことが可能です。
http://www.sia.go.jp/top/gozonji/gozonji01.htm
・また、平成17年からの新しい制度で、30歳未満の人で要件を満たせば「若年者猶予制度」、学生と同じように保険料の納付を猶予してもらうことが可能です。
http://www.sia.go.jp/top/gozonji/gozonji02.htm#jakunen
・「法定免除対象」以外の人も要件を満たせば、全額免除や半額免除を申請することも可能です。
http://www.sia.go.jp/top/gozonji/gozonji02.htm

5.猶予や免除のメリットは?

・年金をもらうためには、25年分以上の年金保険料の納付が必要なんですけど、その期間に猶予や納付の期間はカウントされます。
・ただし、猶予は文字通り猶予なので年金の金額にはカウントされずに、その後納付されなければその期間分が年金の金額から減額されます。
・「全額免除」や「半額免除」の場合には、年金の金額にも一部反映されます。
・また、猶予や免除の手続きをしておけば、10年後までであれば、にその分を追加で納めることができるんです。

6.なぜ社会保険庁は「不適切な取り扱い」に向かったのか?

<納付率の向上>
・「納付率=納付数÷納付必要数」であり、納付率を向上させるには、
 納付してくれる人を増やして、「納付数」を増加させるという方法と、
 免除(減免)者を増やして、「納付必要数」を減少させるという方法の、
 大雑把にいうと二種類の方法が考えられます。
・納付が困難な人から納付してもらうことはとても大変ですが、免除(減免)することは比較的簡単だと思われます。
・ここで、社会保険庁は「免除(減免)」という一時的に麻薬のように納付率に幻覚を及ぼす手段を重要視したのではないか、と思います。

<本人のため>
・前述のように「免除(減免)」は年金を貰うためには有効な手続きとなります。
・年金を貰う権利を失ってしまえば、まさに「自助努力」のみの世界に放り出されることとなり、将来を見据えつつ、年金の制度の範囲内につなぎとめることは社会保険庁の取るべき対応としては確かに重要なもののうちのひとつです。

<そうは言っても・・・>
・国民年金の制度自体が積立方式ではなく、「賦課方式」。つまり現役世代が高齢者(障害者、遺族)を支えるという仕組みで成り立っています。
・そのうえ、年代が若くなるに従い、納付率が下がっている現状。(20歳台は50%前後)
http://www.sia.go.jp/infom/tokei/noufu2004/noufu02.htm
・「納付率」が上がっても、「納付者」が増えなければ一人ひとりの負担は大きくなるばかりですよね。

ということで、ボクが感じる今後のポイントは・・・
○未納者の未納理由の徹底分析
○国民年金制度の周知、猶予や免除も含めて。
○社会保険庁の業務改善計画

いろいろな要素が複雑に絡んでいるような気がしますが、やはり社会保障は国の骨格です。NHKの受信料と似たような話に聞こえているかもしれませんけど、多くの人の“健康で文化的な最低限度の生活”に影響があるだけに事は重大だと考えています。
「自助努力」と言われることもありますけど、社会保障はやはり自分のための積み立てではなく、同じ国、同じ社会に生きる者として、お互いに支え合うためのものですよね。どうなんでしょう。これこそ、「愛国心」だという気さえします。

さて、かなり長くなりましたけど、それでも分かりにくいですよね。
「だから納めましょうよ!」という簡単な話でもないんですが・・・
この話の裏にはベットリとした年金不信があります。政治家の未納とその一連の報道が「未納を一般的にしてしまった」感もあります。だったら、どうしたらよいか?
一元化とか、いろいろ案は出ているようですけど、「一元化」だけに囚われずに、逆に「多元化」も含めて今後のあり方を考えて欲しいですね。
特に政治家とマスコミは、社会保険庁を責めるのは後に回して、年金不信を払拭すべく課題と対応策を検討して欲しいと強く願っています。

ところで、明日の早朝はサッカー・日本対ドイツですね。
今日は早めに


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自然 | トップ | 続さくら観察記7 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

社会的責任」カテゴリの最新記事