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厚生年金基金事務長奮闘記-15

2010年08月23日 | 厚生年金基金
 
6.手作り広報誌のポリシー 「お元気ですか?」


新宿に厚生年金基金連合会の「セブンシテイ」という会館がありますが、そこの「図書資料室」は別名<年金図書館>と言い、世界の年金関係資料から国内の法律や学術研究書、単行本、雑誌等々が数多く集められています。制度変更や給付改善等を研究するときには重宝する施設になっています。

そこの一隅に、全国の基金から送られてきた広報誌が5、60誌並べられているコーナがあります。それら広報誌を拝見すると、各基金とも大変な努力・苦労をして作成した形跡がありありと見てとれます。

しかし、如何せん素人が作りました広報誌故に自基金のポリシー、戦略、マーケティング等が明確になっていないようです。多くは、基金の実態を知らない業者が作りました「玄人」の戦略のぼやけました、万人向けの、どうでもいい記事だけで作られていて、基金名だけを冠しました紛い物が多いようです。

この背景を考えると、事務所の常務理事も事務長も当然広報誌の専門家では無いということは置くとして、サラリーマンとして基金制度を熟知して、基金経営の観点からのポリシー、戦略、マーケティング等を確立していないということ。それ故に、業者任せの個性の無いどうでもいい記事で、形式的に発行しているだけということになるのでしょう。

筆者は、昭和51年にそのころ事務所に出回り始めましたコピー機を使い、加入員向け手書き・切り貼りの広報誌「基金だより」(B5サイズの裏面に「健保だより」を同時掲載)を作り初めました。昭和55年には年金受給者向けの「年金生活」も発行し始めました。

その後、ワープロで記事を書いたりしまして年3、4回の発行で続けていましたが、平成3年にはその2誌を統合して加入員・年金受給者向け「ABC」(A4サイズ・8ページ、又は4ページ)というのを印刷屋で刷るようになり、現在も原則年4回発行・配布(通算65号を発行)しています。その内容は、プロから見ればお粗末なものですが、業者も商売にならないとABC基金には立ち寄らなくなるほど、自基金のポリシーだけで作られているものです。



福井謙一さん曰く、メモをしないでも覚えているような思いつきには大したもの
はない、メモをしないとすぐに忘れてしまうような着想こそ貴重なのだ。(暗闇メ
モについて)
福井 謙一:朝日新聞<天声人語>平成10年1月11日




各担当が「誌面割り付け案」のそれぞれの記事原稿を担当し、紙面が黒くなるので文章を少なくし、写真やグラフや受給者等の葉書の字句をそのまま掲載し、現物のもつ生々しさ・衝撃力を全面的に紙面に溢れるよう工夫し、<知らしめず>の操作が介在しませんように生の声が伝わるようにしています。事業経営のトレンド形成、情報開示、事務所と加入員・年金受給者との交流、老後生活の安定の一助等を作り出すために誌面構成を工夫しています。

筆者は、広報事業というものを単なるディスクローズ以上に、基金の事業展開の中では重要な位置付けを考えています。

 というのは、基金が掛金徴収団体にしか過ぎなかった基金運営時代ならともかく、年金資産運用を中心に据えました基金経営の時代になった現在、<給付改善>と<福祉施設事業>と<広報事業>のそれぞれを三本の矢を束ねる重要な一本と位置付け、これらそれぞれの有機的連結を作りだして相乗効果(シナジー)を生み出すのが、現代の厚生年金基金の仕事と考えているからです。

 特に、広報事業は基金経営の指針・哲学等による事業主、加入員・年金受給者等に対する情報発信、マーケティング展開のステージと位置付けています。



政府機関や公的サービス機関は予算依存型組織である。しかもこの予算依存型組
織には生産性に対するインセンティブがない。そこには効率を求められるインセン
ティブすらない。

P.F.ドラッカー『見えざる革命』




最近、ABC基金にもリストラの突風が吹き荒れ、3名の職員が1名になってしまい、筆者が暫く実務をしていなかった「現況届」処理を担当せざるを得なくなって封筒詰め作業をしているときに、或るひらめきが生れました。

「現況届」は一通80円の別納封筒で毎月100人ほどに発送しますが、数ケ月来、葉書状の現況届を機械から打ち出し、窓開き封筒にもくもくと詰めていたとき、80円の別納料金内に現況届だけでは規定重量に余裕があります。「何か、まだ詰められるぞ!」

①ABC基金では、シニアーズクラブ(年金受給者の集い)を運営していて、その事業として毎年総会パーティを行っていますが、1300人の年金受給者にご案内を差し上げその参加申込の葉書の一端に「お元気ですか?」という欄を設けています。ここに、毎回、出席者・欠席者を問わず7、80%ほどの受給者がコメントを書いてくれていまして、事務所とのエールの交換が行われています。中には、「ハイッ。」だけのもありますが、これは大変不思議なことで、その一瞬、年金受給者と事務局との間に或る走るものが生まれます。

②というのも、基金事務所は、通常、ただ隔月に年金を振り込むだけで、年金受給者から受け取ったとか、額が少ないとかは一切連絡が無く、反応が感じられない静かな事務所であります。そのため、年金受給者のコメントの肉声は業務に感情的な彩りを添えることになっています。

この二つのドッキングで、現況届同封事務所だより「お元気ですか?」が誕生しました。
A4カラーペーパー1枚の裏表に、その月のトピックス、資産運用状況、トレンド戦略事項、お知らせ等の記事、エクセルのグラフ、カット等をパソコンのワードで作成、高速プリンターでカラー用紙に印刷をとり、現況届に同封して年金受給者の皆さんに送付しています。経費は、パソコン等の初期投資は必要ですが、印刷費は不要で用紙代だけになりました。



私は『イノベーションに勝つ』の執筆に際し、新しい製品やサービス、そして新
しビジネスの方法を編み出すことで、ビジネスを変貌させた50人以上にものぼる
男女イノベーターにインタビュー調査を行うため、アメリカ中を走り回った。
私の目的は、アイデアをイメージから現実化させることに成功した、彼らの共通
点を見つけだすことであった。彼らが共通して語ったことは「直感を信じること」
であった。

R.B.タッカー『価値革命への挑戦』
ー価値イノベーターのマーケティング戦略



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