伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

今週も受け入れた遠野和紙体験をご案内

2024年03月13日 | 遠野町・地域
 保存会の作業は、いつもと同じように始まった。
 午前9時には楮畑に集合し、枝の伐採作業を始める。
 太い枝切断できる剪定ばさみを使い、枝のできるだけ根元の部分を斜めに切り落とす。斜めにするのは、雨水などが流れやすくするためだ。

 5人から6人で1時間30分程作業を続け、軽トラックに3台分の枝を伐採して和紙製造工房「学舎」に搬送する。これを2日間で蒸し上げ、楮の枝から皮を剥ぎ取る「楮はぎ」を施し、竿にかけて乾燥させることになる。



 同じ時刻、学舎に集合したみなさんは、以前に乾燥させた楮の皮から1層目の黒皮と2層目の甘皮を取り除く作業「しょしとり(表皮取り)」をする。楮の皮は前日以前に水に浸しうるかしておいた。包丁を使って薄く皮を削ぎ落としていく。合わせて付着したごみや皮の変色した部分を取り去る作業も行い、できるだけきれいな白皮にする。後に、白皮を繊維に加工する際に必要な「塵取り」の作業をできるだけ軽減しようとこの作業をしている。

 こうして2日間で、皮の大小は抜きにして1,000枚程の白皮を作り出す。乾燥重量にすると何kgになるのだろう。10数kg程度かなぁ。昨年は180kgだったかの白皮を作った。今年はどれだけになるのだろう。

 さて、保存会のボランティア作業の2日目となる本日は、会津短大の作業体験を受け入れた。1日で、楮の伐採からはじまって抄紙(紙漉き)まで一通りの作業を体験していただく。

 前日の火曜日(12日)、いわきでは雨が降っていた。ボランティア作業中は昼前からずーっと雨が降り、普段青空のもとで実施している楮はぎは、軒下など庇のかかった場所で雨をしのぎながらすすめていた。幸い本日は好天気。体験は畑での楮伐採からはじめていただいたが、途中、強風が吹いていたことをのぞけば、良い天気のもとで体験をしていただけたと思う。

 作業のメニューは以下の通り。

①楮伐採
②枝の裁断と束ね
③蒸し(見学)
④楮はぎ
⑤はいだ皮の乾燥(見学)
⑥しょしとり
⑦塵取り(今回は方法の紹介のみ)
⑧打解=塵取りをした白皮を木槌で叩きほぐす作業
⑨なぎなたビーター処理(今回は装置の説明のみ)
⑩抄紙(紙漉き)

 抄紙後に、紙の圧搾と乾燥の工程があるが、圧搾まで通常最低1晩の自然脱水を行うため、その後の作業は保存会が預かることになる。
 抄紙の方法には、流し漉きと溜め漉きの方法がある。抄紙の際は両者の違いを説明しながら実演し、通常は溜め漉きで体験してもらう。今回は要望もあり、時間に余裕もあったため、流し漉きと溜め漉きを体験してもらった。

 よく見る失敗は、簀桁(抄紙の道具)に紙料(ネリでとろみをつけた水に繊維を溶かし込んだもの)を汲み上げる際に、簀桁の手前側にシワがよる現象。簀桁の裏側から入った水が簀桁上の紙の繊維を持ち上げるためにできる現象だ。こうした失敗はあったものの、体験した学生・教員はなかなか上手に紙を漉き上げ、漉いた紙を積み上げた。

 それぞれの作業の最中には、いっしょに作業している保存会員が作業の方法をアドバイスするなど、少しだが交流もはかられたと思う。

 体験終了後、楽しく体験できたや、紙作りの工程を体験することで和紙作りの大変さを実感したなどの感想が聞かれた。抄紙だけの体験でなく、一連の工程を体験してもらうことで紙作りの大変さとともに、楽しさの一端も味わってもらえるものと思う。この間、同様の体験を案内しての実感だ。

 もっとも体験の材料となる楮等がある冬場しかできないものだが。
 17日にはアクアマリンふくしまで紙漉き体験(ハガキ大、体験料1枚300円)があるが、そちらにもスタッフとして参加する。


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