
『はじめて読む聖書』には、いわゆる相当な知識人、教養人、研究者と言われる人たちが執筆している。
山形孝夫
池澤夏樹
秋吉輝男
内田樹
田川建三(聞き手・湯川豊)
山折哲夫
橋本治
吉本隆明
山本貴光
という面々である。
そこで、終盤になり、我が吉本隆明である。
大いに納得。
今流に言うと、ウケマクリ。
吉本は二・二六事件の戒厳令司令部が反乱軍に向けて投降を呼びかけた文章について言及している。

さらに聖書マタイ伝に記されるイエス・キリストの言葉と、先の戒厳令投降呼びかけ文の「泣いておるぞ」とを、比較しているのだ。

こういうことを指摘する、いわばまっとうな市井人の感覚、これが吉本だと思う。
吉本隆明は戦後日本を代表する思想家だと言っていいと思う。
その思想家が、もっとも視線を外さなかった視点がここだ、と思うのである。
だから、私は、吉本が大好きにならないではいられない。