鎌倉評論 (平井 嵩のページ)

市民の目から世界と日本と地域を見つめる

トランプ大統領誕生に思う     民族的排除主義の復活  平等主義のとん挫

2016-11-17 14:34:16 | 日記

 

米大統領にトランプ氏が選ばれたことで世界が驚愕し、騒いでいる。

今日まで、世界は曲がりなりにも民主主義、平等主義など近代の普遍的価値の支配とそれを世界に広めるというアメリカのグローバリズム運動によって指導されてきた。

トランプ現象とはこうした普遍思想やグローバリズムの指導をアメリカが突然止めたということである。トランプが体現するアメリカは、排他的白人主義であり、人種民族の融和より、白人優先を回復するという考えだ。アメリカが多民族、移民国家であり、移民歓迎の国際国家であったが、それをやめようというわけである。

アメリカはその成り立ちを考えると、明らかにヨーロッパの白人が作った国で、文化的にも、歴史的にも西洋のそれを引き継いでいる。その移民の歴史も白人移民が中心であった。その白人が現在黒人やヒスパニックなどに押されて数を減らすと同時に、グローバリズム経済によって生活も追い詰められている。

白人はヒスパニックなどマイノリティーが、白人の数を超えることを恐怖しているといわれる。現在はまだその比率は全体の4分の3ほどで優位を占めているが、やがて逆転することは明らかだ。現在は白人優位の最後の時代かもしれない。

白人にしてみれば、この国は俺達が作ったもので、俺たちが貧しくなり、移民の連中やもと奴隷の黒人などより劣位に立たされるのは許せない、という思いがあるだろう。トランプ当選後、「White Only」という落書きが見られたのはそのことを表している。

白人も黒人もヒスパニックも、人間として平等だという思想と、アメリカにおけるその思想の実践は、南北戦争後少しずつ進展し、浸透してきた。しかしここにきてその思想理念はとん挫する形になった。

時あたかも、ヨーロッパにおいても、中東アフリカ系人種の難民移民の大量流入によって、その排斥的感情が高まっている。アメリカと同じくヨーロッパオンリーの気持ちである。EUは将来崩壊するのではないかと言われている。

EUは、国家統合と民族融和を理念とするもので、人類の将来の在るべき姿を求めているものだった。それは人類の平和と人間の平等など近代の理念を実行する明るい希望の灯だった。

ところが、時代はここにきて逆回転し始めたように見える。人間の平等とか国家主義的対立の解消という理念など、現実の経済的窮乏の前には食えない絵に描いた餅にすぎなくなったのだろうか。

人類には民族融和とか国家主義の解消、世界政府の建設などという理想は本質的本来的に無理なことなのだろうか。それとも、人類には時代が早すぎて消化不能の課題なのだろうか。

グローバリズムはまず経済面での解放主義であり、世界的分業による豊かな世界を目ざすものであり、それは結果的には国家主義や民族主義の垣根を取り払うものに発展していくものだった。

人類がその方向に向かっていくことに変わりはないと思うが、それとも、人類にとってそれはその性からして無理なことなのだろうか。

アメリカ人のトランプ的変節が一時的なものであり、いつかアメリカは再びグローバリズムや近代の普遍的価値の先導者で戻ってくることを祈っている。