
「『巨神ゴーグ』が見たいんだよね」
にピクリとこちらも反応する。
うん、確かにあれは面白かった。
子供の頃、夢中になって見ていたものだ。
毎回30分が短く感じて、次回が待ち遠しくて待ち遠しくて。
安彦良和氏が監督から作画から全て務めた作品。
完成したものの放送枠がなかなか決まらなくて、気を揉んだ記憶がある。
大期待の中の放送第1回、前評判に違わぬスリリングな展開で、グッと息を殺して見ていたように思う。まあ、タイトルと相反して、第1話には「ゴーグ」は出てこないんだけどね。それどころか、2話も3話も出てこない。「また今週も出ないのか!」
物語は少年の冒険譚。舞台は最初ニューヨーク、それから絶海の孤島オウストラルへ。3万年ぶりに海中から隆起してきた謎に満ちた島。そこには全世界の明日を左右する大きな秘密が隠されているらしい…。
多分、「少年の冒険譚」が作りたかったんでしょうな。ある意味典型的な物語だと思うけれど、この作品独自の味わいは、巨大なロボット=ゴーグと主人公の少年との交流の機微。ゴーグはガンダムとかとは違い、意志(?)を持った自律型のロボット。しかし、黙して何も語らず、悠宇少年をひたすら一方的に守りまくる。まあ、語る機能がないようにも見えるし、単なる誤作動誤認識で守ってくれているようにも思えるんだけど、とにかく献身的に主人公のために戦う。ヘリコプターも投げ飛ばす。戦車もぶっ飛ばす。かなり破壊的だ(^_^)。
その頼もし気で、ある種いじらしい姿を少年視点で見ていると、なんだかグッと来るんだわな。「ゴーグ!ありがとう!」みたいな。
しかし、多少意地悪な大人目線で見ると、やや物足りなさも感じる。特にキャラクター造形。冒険心溢れ正義感の強い主人公。割とすぐ泣き叫んじゃうヒロイン。浮世離れして頼りない学者。名前の付け方からしていい加減ぽい原住民の少年少女。どれもステロだ。
ある程度複雑味をもっているのは、味方で頼りにはなるんだが、やたら柄の悪い「船長」と、敵役にして狂言回しのロッド・バルボア(声は池田秀一)のみ。
ここら辺、振り返ると映画「アリオン」を見た当時にも感じていたことだ。なんだか登場人物に全く感情移入できずに物語はどんどん進んでいって…。「安彦さん、一体何がやりたかったんだろう…」と考え込んで映画館を出たのを覚えている。その辺りで物語作家としての安彦氏に興味を失ってしまったのだ。
今にして思うと物語そのものよりもキャラクター造形に問題があったんだろうなぁ。(「クラッシャー・ジョー」にもそこはかとなく、その香りがする)
長年の謎が解けた気がする。
でもね、ゴーグはいい。全26話、舞台もほぼせまい島だけ。主人公とゴーグの交流、オウストラルの謎、「船長」の暴れっぷり、ロッド・バルボアの狼狽ぶりでなんとか乗り切った。
起承転結がくっきりしていて、こぢんまりしていた、愛すべき冒険譚だと思う。