冬の宮殿 化粧直し終了

さて、長らく外壁修復中であった冬の宮殿の化粧直しが昨年末に完了した。観光シーズン真っ只中に修復作業を始めるというビックリプランであったが、今思えばクリスマスのお披露目に向けて作業が行われていたのかもしれない。修復期間中は、冬の宮殿の色が黄色になるとか、はたまた銀色になるとか、様々な憶測が飛び交っていた。

黄色なんかになったらどうしようかと本気で懸念していたのだが、元通りの綺麗なエメラルドグリーンであった。良かった、良かった。そもそも、サンクト・ペテルブルグ市長のマトヴィエンコ女史は、派手好きなので、なんでもあり得るとも思っていた。毎日、違う色の派手な服をお召しになっている。ショッキングピンク、グリーン、ビビッドイエロー、パープルなどなど・・・さらに胸には大きな花のコサージュをさしている。



彼女は1949年生まれの、大変精力的な女性市長として有名。テレビでの露出度は、かなりの頻度で、毎日のようにテレビでお目にかかる。特にサンクト・ペテルブルグの歴史建築群の復旧作業がお好きなようで、道路や公共交通機関の再整備と同じくらいに税金を投入しているように思われる。当然、年金問題や教育問題など、もっと、他にやることがあるのでは？という声も聞こえてくる。
　クリスマスには市内全体に派手な電飾が至るところに飾り付けられた。年金生活者からは、あの電飾一個で一体いくらするんだ？誰の金で作っているんだ？と批判を浴びる。確かに、わたしのような外国人が客観的に見ても、ちょっとやりすぎ感があった。まあ、綺麗は綺麗であるのだが。

プーチン大統領の登場以来、ロシアは徐々にかつての強さを取り戻すことに成功した。主に石油や天然ガスなどの天然資源の産出に依存する偏った経済復興ではあったが、それでも、ソ連崩壊後に世界中に露呈した、かつての大国ロシアの惨めな印象を払拭したと言える。それほどまでに、第二次世界大戦後に、米国と共に世界の東西を二分した大国の失墜というショックは、ここの国民のプライドをずたずたにしていた。

90年代前半、国営商店からは食料が消え、まるで戦時中のようにパンやバターなどが配給制にさえなった。横行する一部の権力者やマフィアによる闇取引、加速する政治の腐敗、紙幣が紙くずへと変わる猛烈なインフレ。そういったものに耐えて耐えて、ロシアは復活してきた。分かりやすいのは外面なのかもしれない。今、一生懸命に様々な建物の復旧をしている。できるだけ綺麗に立派に壮麗に見えるように。エルミタージュの修復作業ももちろんそのキャンペーン（マトヴィエンコ市長が進める市内修復プラン）の一環であった。国を代表する建築物であればあるほど、その優先順位は高い。



しかし、外面から整えるという発想は、ソ連時代から何も変わっていないように思う。1ルーブル＝1USDである！ソ連邦が世界初の有人飛行を行った！世界一の軍隊の保有！、高水準の教育！、究極の福祉国家！、人民の野心を煽る資本主義は悪である！などなど。無理やりいい格好しようと思うから、その裏舞台では、多大な労働力や金銭的な支出がつきまとった。例えば、海外から国賓が来ると突貫工事で道路を整備したり、ホテルを改修したりした。最高のもてなしをして、国力を海外に誇示しようとする。格好いいのは外見だけで、中身がない張りぼて主義・・・裏舞台はすっかり疲弊しきっていたのだ。

　そんなことばかりしていたから、結局は様々な歪みや軋轢の末に、ネジやボルトが軒並み緩んで、バカになったネジが空回りをし始めた。そして、いよいよガタガタになり、空中分解して、自滅してしまったついこの間の歴史がある。

　郵便局に行くたびに1時間以上待たされたり、VISA更新のたびに意地悪を言われたり、銀行口座を開くにも大量の書類を要求されたり、役所から役所へたらいまわしにされたり、役所内でもたらいまわしにされたり、自分の給料受け取るのも一苦労だったり、お客より店員のほうが偉そうだったり、仕事中にインターネットばかり見ていたり、警察が露骨に賄賂を求めてきたり・・・以下エンドレス。

お願いだから、是非、そういうことから、改革してくれないかしら・・・