透明な石2012(岩手日報より?)

2012-04-18 22:06:06 | AROUND THE N818

:::::::

 震災後の日常風景に暖かいまなざし宿る

 黒澤さん(大船渡)雫石で作品展

 大船渡市の版画家黒澤笑子(えみこ)さんの作品展「煙突の見える街」は、雫石町源太堂のイエロープラントギャラリーで開かれている。

 版画、ドローイング、ミクストメディア(混合技法)の30作品。震災後の日常の風景や感情を描き、繊細な線の奥に暖かいまなざしが宿る。

 大型のドローイングは3点。「おはよう ただいま」は大船渡市にあるセメント工場が題材。「家から見える煙突に親近感とかっこよさを感じていた」。彩色し、存在を強調した煙突は、強さと安心感を感じさせる。

 「朝と夜の狭間に」は夜から朝に変わる時間帯の光をイメージ。「空白」は子供の遊具と大きな穴、そして涙の跡を描き、ほのぼのとした日常の陰にある悲しみに寄り添う。

 職場のある大船渡市で被災し、自宅を使えなくなった。「異世界や不思議な風景を好きで描いていたが、信じられない光景が日常になっていた」と普段の生活に目を向けるようになった。友人から送られた画材で描いたドローイングを標本箱に集めた作品。ドローイングのカンバスを壁に張り付けた連作など。「忘れないように記録しておきたい」との強い思いがにじむ。

      1985年盛岡市生まれ。岩手大学大学院教育学研究科美術専修修了。2009年度県美術選奨受賞。          

 

                          (岩手日報より)

 

 

 絵という言葉は 日々に

                           黒澤 笑子

 花を買って部屋に生ける。映画を見て感動する。音楽を聴いて癒されたり、元気が出たりする。絵を見たり、描いたりすることは、自分とって、そんな日常のふとしたことと同じだなぁと思っています。

 芸術というとなんだか堅苦しいですが、自分の生活が、絵によってより楽しくなります。

 絵は、誰かに(あるいは自分に)語りかける、もう一つの言葉です。人それぞれの声の大きさや話し方で、心に届きます。

 自分が美しいと思った光景、覚えておきたい気持ち、記憶を、線や色、形で刻むことで、大切にしていけるような気がします。絵がなくても確かにお腹は減らないけど、絵があると気持ちが良いものです。それは絵を通して、作者と絵を見る人の気持ちが共鳴するからでしょう。生活の中の美しいもの、大切なことに気がつけるからでしょう。

 何歳になっても、お花屋さんや、喫茶店、本屋さんのある町に住みたい。同じように絵もずっと暮らしの中にあってほしい。絵という言葉を通して、沢山の人に出会い、語り合い、日々を大切に見つめていきたいなぁ。明け方、アパートの窓から、朝の光をぼんやりと見ながら思いました。

 

                                  (岩手日報より)

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿