臨床現場の言語聴覚士(ST)

臨床現場の言語聴覚士(ST)のブログ、です。
摂食・嚥下障害や高次脳機能障害などについて考察します。

どういうSTを目指すのか②

2007年12月24日 | Weblog
自然回復以上の介入効果を出せるか、どうか、について述べる。

そもそも、自然回復とは何だろうか。

厚労省のモデル等で、線形でリニアに表現出来る回復、ばかりでは無いように毎日の臨床では感じている。

何らかの病気があり、それからの回復過程、とまず仮定する。

これでは、何をどう考えていいのか分かりづらいので、独自に分類する。

急性疾患(はっきりとした顕性誤嚥による誤嚥性肺炎、発症時間のはっきり分かる脳血管障害、心疾患などなど)と慢性疾患(アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、SCDなどの慢性的な経過をたどる変性疾患、脳血管疾患の後遺症、廃用、基礎疾患などなど)といった疾患側の分類を考える。

また、年齢、性別、血液データ、食事量、体重、排泄、理学所見、家族構成などの患者側の分類項目もある。

さらに、免疫力、体力、食べ物の好み、生活習慣、小腸の吸収力などの数値化しにくい項目もある。

いわゆる後期高齢者では、基礎疾患のオンパレードで、慢性疾患が徐々に増加して、急性疾患がどれだけ注意していても生じる、という印象を受ける。

複数の疾患を持つ高齢者では、複数の薬剤を服用することが多く、つまり、その副作用で唾液量が減少していることがある。

また、DMがあると、嚥下では特に、口腔期に影響がある。

唾液は血液から産生されるので、原料の血液の糖が多ければ、出来上がる唾液も糖分が多くなる。

つまり、口の中に砂糖をまぶしたような状態になる。

当然、歯周病のリスクは上昇する。

また、毛細血管に微小な梗塞を生じやすくなり、歯肉も同様の症状を呈し、炎症を生じやすくなる。つまり、歯周病である。

また嚥下の話になってしまった。また、専門でない歯科の話なので、間違っている箇所もあるだろうが、ご容赦頂きたい。

つまり、ごくごくありふれた(ように思っている)糖尿病でも、例えばST分野に関する影響などを考慮することで、見過ごせない疾患である事を思い返して欲しい。

もともと生理的に筋力低下が生じている後期高齢者では、それらを修飾する因子として様々な疾患、生活習慣などが加わり、一層の廃用が徐々に進んでいる状態と考えられる。

日々、右肩下がり、といった状態だろう。

これに認知症が加わると、事態はもっと深刻になる。

それらを土台とした”自然回復”を、まず知らなくてはならない。

日々右肩下がり、であれば、現状の維持も、それなりに大変な事である。