うなだれる彼を見ると、初老の男はつい余計なことを口走った。
「どうだ、人生でも、見に行くか?」
彼は男の顔をまじまじと見た。
「人生?」
初老の男は、深く頷いた。
そして立ち上がると、くたびれた車に乗り込む。
彼も従って助手席に・・。
車はとろとろ走り出した。
「こんな曲を知っているかい?」
初老の男は言いながら、カセットテープをデッキに押し込んだ。
流れ出る曲に合わせて、初老の男は歌いだした。
へたくそだった。
「知ってるか?」
間奏に入ると初老の男が彼に訊いた。
彼は頭を振った。
「今日を生きよう・・」
「今日を生きよう?」
「ああ、グラスルーツってバンドの・・、俺が高校・・、一年・・」
「何年前?」
「三十九年前・・」
「生まれてないよ・・」
「そうか・・」
再び歌が始まると初老の男は口ずさみ始めた。
曲が終わると再び巻き戻し、歌い始める。
それを何度も繰り返す初老の男に、彼はつい笑いが漏れた。
曲調はポップスの軽いのりの良い曲で、中でもサビの
「シャラララ、let for live today・・」
は耳に馴染んで、彼もつられて口ずさみ始めた。
やがてくたびれた車が、ゆっくりと止まる。
「さぁ、着いたぞ・・」
初老の男が告げる。
彼はそこを見て、全く男の行動が理解できなかった。
続く
「どうだ、人生でも、見に行くか?」
彼は男の顔をまじまじと見た。
「人生?」
初老の男は、深く頷いた。
そして立ち上がると、くたびれた車に乗り込む。
彼も従って助手席に・・。
車はとろとろ走り出した。
「こんな曲を知っているかい?」
初老の男は言いながら、カセットテープをデッキに押し込んだ。
流れ出る曲に合わせて、初老の男は歌いだした。
へたくそだった。
「知ってるか?」
間奏に入ると初老の男が彼に訊いた。
彼は頭を振った。
「今日を生きよう・・」
「今日を生きよう?」
「ああ、グラスルーツってバンドの・・、俺が高校・・、一年・・」
「何年前?」
「三十九年前・・」
「生まれてないよ・・」
「そうか・・」
再び歌が始まると初老の男は口ずさみ始めた。
曲が終わると再び巻き戻し、歌い始める。
それを何度も繰り返す初老の男に、彼はつい笑いが漏れた。
曲調はポップスの軽いのりの良い曲で、中でもサビの
「シャラララ、let for live today・・」
は耳に馴染んで、彼もつられて口ずさみ始めた。
やがてくたびれた車が、ゆっくりと止まる。
「さぁ、着いたぞ・・」
初老の男が告げる。
彼はそこを見て、全く男の行動が理解できなかった。
続く