つれづれなるマーマニー

ヨノナカ ヲ オウ ケンメイニ

イチローの功績

2006年03月24日 01時55分01秒 | WBCコラム
 今回の日本代表において、イチローが果たした役割は限りなく大きい。それは各メディアで報道されているように、リーダーシップであったり、個人の抜きん出た能力であったりというものはもちろんのことだが、それ以外にもイチローはさまざまな役割を担ってくれていたと感じた。
 特に私が感じたのは、イチローが与えてくれた「分かりやすさ」である。
 いったい何が「分かりやすかった」のかというと、感情をむき出しにしたコメントをはじめとした“主役っぷり”である。

 アジアラウンドが始まる前の会見でイチローは「日本には向こう30年手が出せないなと思うくらい完璧に勝ちたい」というコメントをした。このコメントによって韓国は発奮し、韓国国内でのイチローバッシングがすごかったとかなんとか言われていたが、イチローはこのコメントを、韓国・中国・台湾に向けて発したのではないのではないかと思う。
 このコメントを世界最高のプレーヤーが発することで、日本人の多くは“日本ってそんなに強いのか”と思ったことだろう。そして日本代表の選手たちも“イチローさんのいうように圧勝してやろう、圧勝できるはずだ”と士気も上がったのではないか。
 しかし日本はアジアラウンドで負けてしまう。イチローは「今回の結果に満足しているとしたら、僕は野球をやめなければならない」というコメントを出している。悔しさがにじみ出ているコメントだと思う。ただ、日本国内でのアジアラウンドに対する注目が非常に低かったので、そんなに深刻な問題であると捉えた日本人は少なかった。
 
 二次リーグの第3戦、日本はまたしても韓国に負けてしまう。イチローは試合が終わった瞬間、誰に対するでもなくベンチの中で吼えた。ベンチの端にいた里崎が驚くほどの迫力だった。「僕の野球人生の中でもっとも屈辱的な日」という、短くも感情が爆発しているコメントを残した。

 メキシコがアメリカに勝ち、日本の準決勝進出が決まったときのインタビューでは「昨日はメチャクチャだった。飲みに行って何時に帰ったかも分からない。歯も磨かずに、ベットの中、いや、上に倒れていた。3回まとめて負けるのは許されない。強い気持ちで向かって行きたい」

 準決勝の韓国戦、3度目の正直での勝利に「今日負けるということは、日本の球史に汚点を残すことと同じことだと思っていた。本当に気持ちいい。野球はけんかではないが、そんな気持ちだった。」

 そして決勝のキューバ戦に勝った歓喜のインタビューでは「もう最高!!この仲間たちとチームが組めて本当によかった!!」とコメントしている。

ここまで見てきて、イチローのコメントはすべて、日本代表の状況をありのままに表現しているものであるということが分かる。

日本人はあまり自分の気持ちをストレートに表現することはしない。にもかかわらず、分かりやすい話が大好きな国民であるといえる。
代表例は水戸黄門であるが、他にも仮面ライダーやウルトラマンなどのヒーローもの、少し前までのテレビドラマなど、ヒーローが悪戦苦闘しながらも最後はハッピーエンドという話が大好きなのである。

今回のWBCで日本代表がたどってきた道はヒーロー戦隊そのままであるといえる。
「ヒーロー(日本)が一番強いんだ」と言って始まった大会は、思わぬ敵(韓国)に倒され、ヒーローが苦境に立たされる。今度こそと思って立ち向かったものの、またしても敵に倒され、ヒーローは瀕死に。しかし違う星のヒーロー(メキシコ)が助けてくれて、3度挑戦のチャンスを与えられる。ついに敵を倒したヒーローは、最後に待つ大ボス(キューバ)と対峙する。そして大ボスを倒してめでたしめでたし・・・。
日本人好みの最高のストーリーが展開された。すべてに圧倒して勝つよりも、はるかに興奮を与えてくれるストーリーだった。

多くの日本人が“WBCは面白い物語だ”と気づいたからこそ、準決勝・決勝での超高視聴率がたたき出されたのではないだろうか。そのように気づかせてくれたのは、日本代表の姿を明確に表現してくれたイチローのおかげだと私は思う。
 
 イチローがWBC構想の出た当初から言っていた「停滞気味な日本野球界を盛り上げたい」という彼自身の目標は、自らストーリーテナーを担うことで達することが出来たのではないかと思う。もっとも、イチロー自身は最初からそれを狙って意識的に発言していたのかもしれない。天才の考えることは私には計り知れないから、あながち有り得ないことでもないと思う。

 なにはともあれ、イチローの存在なくして今回の日本国内での盛り上がりはなかった。プロ野球人気の低下を憂いていた一野球ファンとして、心からお礼が言いたい。

 ありがとう、イチロー。

王JAPAN、世界一に

2006年03月22日 00時00分22秒 | WBCコラム
 第一回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が幕を閉じた。結果は周知のとおり、決勝で日本がキューバを破り、第一回の世界王者に輝いた。
 まだ試合が終わったばかりの段階であり、視聴率などのデータはわからないが、準決勝の韓国戦が瞬間最高視聴率50%を超えたことを考えると、おそらく決勝のキューバ戦も半分以上の日本人が見守ったのではないだろうか。

 今回のWBCの構想は大リーグから発されたものである。昨年オフに「来年3月の開催を目指す」と突如発表され、日本にも打診がなされたのである。その時期にWBCが開催されるかもしれないというニュースをキャッチしたのは、ごく一部の野球ファンのみだったであろう。
 2006年になり、ヤンキース松井秀喜が出場を辞退したというニュースがメディアをにぎわせ、一部の野球ファン以外の日本人も“なにかがあるらしい”ということに気づき、イチローがメディアに頻繁に登場するようになって、多くの日本人が“野球の世界一決定戦がある”ということを認識していったのではないだろうか。
 
まったく盛り上がらなかったアジアラウンドはほとんどの人がスルーをして、二次リーグの緒戦、アメリカ戦で人々の注目は一気にWBCに集まった。
 
今回のWBCの主役、ボブ・デービットソンの登場である。
 
 世紀の対決で世紀の誤審をやってのけたボブのおかげで、日本は、日本人はWBCに釘付けとなった。理不尽な判定にどこにもぶつけることの出来ない怒りを誰もが持ったことだろう。これが、なかなか火がつかない日本人のハートを熱したのではないか。
 ただ、一つ言っておきたいのは、日本対アメリカの視聴率は平日の午前中であるのにも関わらず10%を超えた、ということだ。つまり、ボブの誤審があろうがなかろうがWBCの注目度は高かったということである。

 負けられない中での対メキシコ戦。松坂の好投があり、6-1で快勝。
そして韓国との熱戦。この敗戦では頭の中が真っ白になった。1勝2敗。日本が準決勝に残るには、前日にディズニーワールドで遊んできたメキシコ代表がアメリカに2点以上取って勝ってくれなければならない。・・・・・・つまり、絶望的。

 そこでメキシコが起こしてくれた奇跡。2-1でアメリカに勝利。その影に再びボブの姿あり。

 準決勝。3度目の韓国との対戦。上原浩治の熱投。それまで不振を極めていた福留孝介が値千金の決勝2ランホームラン。

 決勝はアマチュア世界最強、キューバ。
 日本が激闘の末10-6で勝利。

 泣いた。一人テレビの前で、泣いた。
 私が常々言っている「日本野球界のトップでチームを作れば、メジャーよりも上だ。日本の野球は世界一だ。」という論が証明された。

 おめでとう、日本。ありがとう、日本。
 

 明日から私ファルコンが独自の視点でWBCを語ります。
 “イチロー”
 “日本代表チーム”
 “ボブ・デービットソン”
 の三つがとりあえずのテーマです。お付き合いください。