今回の日本代表において、イチローが果たした役割は限りなく大きい。それは各メディアで報道されているように、リーダーシップであったり、個人の抜きん出た能力であったりというものはもちろんのことだが、それ以外にもイチローはさまざまな役割を担ってくれていたと感じた。
特に私が感じたのは、イチローが与えてくれた「分かりやすさ」である。
いったい何が「分かりやすかった」のかというと、感情をむき出しにしたコメントをはじめとした“主役っぷり”である。
アジアラウンドが始まる前の会見でイチローは「日本には向こう30年手が出せないなと思うくらい完璧に勝ちたい」というコメントをした。このコメントによって韓国は発奮し、韓国国内でのイチローバッシングがすごかったとかなんとか言われていたが、イチローはこのコメントを、韓国・中国・台湾に向けて発したのではないのではないかと思う。
このコメントを世界最高のプレーヤーが発することで、日本人の多くは“日本ってそんなに強いのか”と思ったことだろう。そして日本代表の選手たちも“イチローさんのいうように圧勝してやろう、圧勝できるはずだ”と士気も上がったのではないか。
しかし日本はアジアラウンドで負けてしまう。イチローは「今回の結果に満足しているとしたら、僕は野球をやめなければならない」というコメントを出している。悔しさがにじみ出ているコメントだと思う。ただ、日本国内でのアジアラウンドに対する注目が非常に低かったので、そんなに深刻な問題であると捉えた日本人は少なかった。
二次リーグの第3戦、日本はまたしても韓国に負けてしまう。イチローは試合が終わった瞬間、誰に対するでもなくベンチの中で吼えた。ベンチの端にいた里崎が驚くほどの迫力だった。「僕の野球人生の中でもっとも屈辱的な日」という、短くも感情が爆発しているコメントを残した。
メキシコがアメリカに勝ち、日本の準決勝進出が決まったときのインタビューでは「昨日はメチャクチャだった。飲みに行って何時に帰ったかも分からない。歯も磨かずに、ベットの中、いや、上に倒れていた。3回まとめて負けるのは許されない。強い気持ちで向かって行きたい」
準決勝の韓国戦、3度目の正直での勝利に「今日負けるということは、日本の球史に汚点を残すことと同じことだと思っていた。本当に気持ちいい。野球はけんかではないが、そんな気持ちだった。」
そして決勝のキューバ戦に勝った歓喜のインタビューでは「もう最高!!この仲間たちとチームが組めて本当によかった!!」とコメントしている。
ここまで見てきて、イチローのコメントはすべて、日本代表の状況をありのままに表現しているものであるということが分かる。
日本人はあまり自分の気持ちをストレートに表現することはしない。にもかかわらず、分かりやすい話が大好きな国民であるといえる。
代表例は水戸黄門であるが、他にも仮面ライダーやウルトラマンなどのヒーローもの、少し前までのテレビドラマなど、ヒーローが悪戦苦闘しながらも最後はハッピーエンドという話が大好きなのである。
今回のWBCで日本代表がたどってきた道はヒーロー戦隊そのままであるといえる。
「ヒーロー(日本)が一番強いんだ」と言って始まった大会は、思わぬ敵(韓国)に倒され、ヒーローが苦境に立たされる。今度こそと思って立ち向かったものの、またしても敵に倒され、ヒーローは瀕死に。しかし違う星のヒーロー(メキシコ)が助けてくれて、3度挑戦のチャンスを与えられる。ついに敵を倒したヒーローは、最後に待つ大ボス(キューバ)と対峙する。そして大ボスを倒してめでたしめでたし・・・。
日本人好みの最高のストーリーが展開された。すべてに圧倒して勝つよりも、はるかに興奮を与えてくれるストーリーだった。
多くの日本人が“WBCは面白い物語だ”と気づいたからこそ、準決勝・決勝での超高視聴率がたたき出されたのではないだろうか。そのように気づかせてくれたのは、日本代表の姿を明確に表現してくれたイチローのおかげだと私は思う。
イチローがWBC構想の出た当初から言っていた「停滞気味な日本野球界を盛り上げたい」という彼自身の目標は、自らストーリーテナーを担うことで達することが出来たのではないかと思う。もっとも、イチロー自身は最初からそれを狙って意識的に発言していたのかもしれない。天才の考えることは私には計り知れないから、あながち有り得ないことでもないと思う。
なにはともあれ、イチローの存在なくして今回の日本国内での盛り上がりはなかった。プロ野球人気の低下を憂いていた一野球ファンとして、心からお礼が言いたい。
ありがとう、イチロー。
特に私が感じたのは、イチローが与えてくれた「分かりやすさ」である。
いったい何が「分かりやすかった」のかというと、感情をむき出しにしたコメントをはじめとした“主役っぷり”である。
アジアラウンドが始まる前の会見でイチローは「日本には向こう30年手が出せないなと思うくらい完璧に勝ちたい」というコメントをした。このコメントによって韓国は発奮し、韓国国内でのイチローバッシングがすごかったとかなんとか言われていたが、イチローはこのコメントを、韓国・中国・台湾に向けて発したのではないのではないかと思う。
このコメントを世界最高のプレーヤーが発することで、日本人の多くは“日本ってそんなに強いのか”と思ったことだろう。そして日本代表の選手たちも“イチローさんのいうように圧勝してやろう、圧勝できるはずだ”と士気も上がったのではないか。
しかし日本はアジアラウンドで負けてしまう。イチローは「今回の結果に満足しているとしたら、僕は野球をやめなければならない」というコメントを出している。悔しさがにじみ出ているコメントだと思う。ただ、日本国内でのアジアラウンドに対する注目が非常に低かったので、そんなに深刻な問題であると捉えた日本人は少なかった。
二次リーグの第3戦、日本はまたしても韓国に負けてしまう。イチローは試合が終わった瞬間、誰に対するでもなくベンチの中で吼えた。ベンチの端にいた里崎が驚くほどの迫力だった。「僕の野球人生の中でもっとも屈辱的な日」という、短くも感情が爆発しているコメントを残した。
メキシコがアメリカに勝ち、日本の準決勝進出が決まったときのインタビューでは「昨日はメチャクチャだった。飲みに行って何時に帰ったかも分からない。歯も磨かずに、ベットの中、いや、上に倒れていた。3回まとめて負けるのは許されない。強い気持ちで向かって行きたい」
準決勝の韓国戦、3度目の正直での勝利に「今日負けるということは、日本の球史に汚点を残すことと同じことだと思っていた。本当に気持ちいい。野球はけんかではないが、そんな気持ちだった。」
そして決勝のキューバ戦に勝った歓喜のインタビューでは「もう最高!!この仲間たちとチームが組めて本当によかった!!」とコメントしている。
ここまで見てきて、イチローのコメントはすべて、日本代表の状況をありのままに表現しているものであるということが分かる。
日本人はあまり自分の気持ちをストレートに表現することはしない。にもかかわらず、分かりやすい話が大好きな国民であるといえる。
代表例は水戸黄門であるが、他にも仮面ライダーやウルトラマンなどのヒーローもの、少し前までのテレビドラマなど、ヒーローが悪戦苦闘しながらも最後はハッピーエンドという話が大好きなのである。
今回のWBCで日本代表がたどってきた道はヒーロー戦隊そのままであるといえる。
「ヒーロー(日本)が一番強いんだ」と言って始まった大会は、思わぬ敵(韓国)に倒され、ヒーローが苦境に立たされる。今度こそと思って立ち向かったものの、またしても敵に倒され、ヒーローは瀕死に。しかし違う星のヒーロー(メキシコ)が助けてくれて、3度挑戦のチャンスを与えられる。ついに敵を倒したヒーローは、最後に待つ大ボス(キューバ)と対峙する。そして大ボスを倒してめでたしめでたし・・・。
日本人好みの最高のストーリーが展開された。すべてに圧倒して勝つよりも、はるかに興奮を与えてくれるストーリーだった。
多くの日本人が“WBCは面白い物語だ”と気づいたからこそ、準決勝・決勝での超高視聴率がたたき出されたのではないだろうか。そのように気づかせてくれたのは、日本代表の姿を明確に表現してくれたイチローのおかげだと私は思う。
イチローがWBC構想の出た当初から言っていた「停滞気味な日本野球界を盛り上げたい」という彼自身の目標は、自らストーリーテナーを担うことで達することが出来たのではないかと思う。もっとも、イチロー自身は最初からそれを狙って意識的に発言していたのかもしれない。天才の考えることは私には計り知れないから、あながち有り得ないことでもないと思う。
なにはともあれ、イチローの存在なくして今回の日本国内での盛り上がりはなかった。プロ野球人気の低下を憂いていた一野球ファンとして、心からお礼が言いたい。
ありがとう、イチロー。