彼の右手から音楽がきこえる。
貝殻で潮騒の音をきくように彼の手を耳に押し当てると、やわらかく落ち着いた音色がきこえた。
「これ、なんの音?」
「ホルンだよ」
彼は町の小さな楽団でホルンを吹いている。ベルの中に右手をずっと入れてるから音が染みついたのかな、と笑いながら言った。
指先から流れる音はとても小さくて、耳に押し当てなければきこえない。温かい彼の右手に意識をかたむける。やさしく流れる旋律。この曲は知っている。前に演奏会で聴いた、たしかラヴェルの。
目を閉じている隙に、キスされた。
「……何人の女の子にこの手をつかったの?」
私の耳から手を離し、彼は笑って答えない。
貝殻で潮騒の音をきくように彼の手を耳に押し当てると、やわらかく落ち着いた音色がきこえた。
「これ、なんの音?」
「ホルンだよ」
彼は町の小さな楽団でホルンを吹いている。ベルの中に右手をずっと入れてるから音が染みついたのかな、と笑いながら言った。
指先から流れる音はとても小さくて、耳に押し当てなければきこえない。温かい彼の右手に意識をかたむける。やさしく流れる旋律。この曲は知っている。前に演奏会で聴いた、たしかラヴェルの。
目を閉じている隙に、キスされた。
「……何人の女の子にこの手をつかったの?」
私の耳から手を離し、彼は笑って答えない。