菫色の空の際、ひと粒の白い星がきらめく頃。村を見下ろす丘の上、ひとりの少年が笛を吹く。
草に絡まる無数の露が笛の音に共振し、内側に小さな火が灯る。丘が夜に沈むと火を閉じ込めた露は浮上し、少年を軸にしてまわりはじめる。玲瓏と響く笛の音に、天に浮かぶ星々もゆっくりと巡る。
枝がたわむほど花を咲かせた木は、僅かな風にも惜しみなく花を散らす。枝を離れた花片は発火し、その一瞬まばゆい光を放つ。
村人たちの願いを叶えることのできなかった少女はこの木の下に生き埋めにされた。腐りゆく目は降りしきる火の雨を映す。少年の半身である少女。しかし、はじめから彼女には、力などなかったのだ。
星が天から零れる。燃え上がる星は海に落ち、夜空を焦がして消えた。
笛の音が歪んでゆく。星が痙攣し、またひとつ零れ落ちる。森が赤い炎に包まれる。
引き裂かれた痛みを抱え、村を見下ろし、少年は吹き続ける。
すべての星が彼らに。
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500文字の心臓 タイトル競作
「降るまで」
幻想的で怪しく美しい話を書くのが、今回のひとり課題でした。
そして、どうしても“玲瓏”を使いたかった……。
草に絡まる無数の露が笛の音に共振し、内側に小さな火が灯る。丘が夜に沈むと火を閉じ込めた露は浮上し、少年を軸にしてまわりはじめる。玲瓏と響く笛の音に、天に浮かぶ星々もゆっくりと巡る。
枝がたわむほど花を咲かせた木は、僅かな風にも惜しみなく花を散らす。枝を離れた花片は発火し、その一瞬まばゆい光を放つ。
村人たちの願いを叶えることのできなかった少女はこの木の下に生き埋めにされた。腐りゆく目は降りしきる火の雨を映す。少年の半身である少女。しかし、はじめから彼女には、力などなかったのだ。
星が天から零れる。燃え上がる星は海に落ち、夜空を焦がして消えた。
笛の音が歪んでゆく。星が痙攣し、またひとつ零れ落ちる。森が赤い炎に包まれる。
引き裂かれた痛みを抱え、村を見下ろし、少年は吹き続ける。
すべての星が彼らに。
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「降るまで」
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そして、どうしても“玲瓏”を使いたかった……。