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半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

冷たい夜

2006年12月12日 23時12分59秒 | 詩・メルヘン
こんばんは、半次郎です。

中原中也の詩集『在りし日の歌』から、「冷たい夜」をご紹介します。
この詩集は、死の数ヶ月前に完成し、死の翌年に出版されたものです。


     冷たい夜  /  詩:中原中也


   冬の夜に
   私の心が悲しんでゐる
   悲しんでゐる、わけもなく・・・・・・
   心は錆びて、紫色をしてゐる。

   丈夫な扉の向ふに、
   古い日は放心してゐる。
   丘の上では
   棉の実が罅裂(はじ)ける。

   此処では薪が燻ってゐる、
   その煙は、自分自らを
   知つてでもゐるやうにのぼる。

   誘はれるでもなく
   覓(もと)めるでもなく、
   私の心が燻る・・・・・・



“私”の心は、既に生気を失い、無機物のように錆びて紫色になってしまっている。
その心を包んでいるのは、暖をとるための薪の煙。
この煙に、誘われるように、求めるように、“私”の心が燻っていく。

日常のある日を詠んだのでしょうか?
退廃的な匂いがします。

それでも、そんな風情に魅かれるのは、多かれ少なかれ、人は悲しみを背負って生きているからか。

それだからこそ、生あるものに優しくできるのでしょう。

・・・棉の白さに救われる気がします。

                               from 半次郎


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