ずっと何をしていたのか
自分でもよく分かりません
昼間の外出を禁止され
ほとんど外に出られませんでした
しかし、もともと夜行性の性分ですから
宵からの数時間だけの自由を味わえるだけで満足でした
外に出ても、特別なことはしません
ただ自宅の周りを徘徊するだけです
少しイカれた廃人のような状態でしたが
それでも食事だけは健康的なものにしようと
魚ばかりを食していました
それが、暦が長月に入った途端に
夜間の外出までも制限されました
理由を何度聞いても
「死にたくないのなら」の一点張り
自分ではもういっぱしの大人だと思っていたのですが
周囲は、いつまでたっても私を子供扱いします
しかし、欲求を抑圧されると
かえってそれを実現させたくなるものです
誰だってそんなものですよね
無論、私も解放的な世界に身を浸したいという衝動を抑えられませんでした
そんなある日、家族が寝静まったころを見計らい
こっそりと自宅を出ました
やはり外の世界はいいです
この気分は、もしかしたら刑期を終えて塀の外に出た
囚人の気持ちに似たものかもしれません
自分は何事にも束縛されない自由な存在だ
何度も背伸びをし、いつもの目的のない散歩を楽しんでいました
しかし、久々の外出に、つい調子に乗ってしまったのか
いつの間にか夜が明けていました
もう帰らないと
そんなことを思い始めたとき
不意に背後から来る妙な気配に気が付きました
誰だ
自分の横を通り過ぎていったかと思うと
視線をこちらに向けたまま
急に立ち止まり、また歩みはじめるの繰り返しでした
こいつは自分を挑発している
普段は温厚な性分ですが
徹夜でナチュラルハイになっていたこともあり
ここは痛い目に遭わせてやろうと
攻撃的な気持ちが沸き起こりました
まずは陳腐なチンピラ言葉で威嚇しました
相手は一瞬後ずさりをしましたが
すぐに、あの癪にさわる挑発を始めました
自分は舐められている
次の行動は自分でも驚くべきものでした
なんと私は右の拳を強く握り
思い切りの力で相手を殴っていました
渾身の一撃でした
もちろん相手に暴力を振るうことなど
人生で初めてのことです
これで少しは大人しくなるだろう
征服感に満ちた私は、勝利者になったかのような気持ちでした
しかし、すぐに異変に気付きました
なんと右の拳が相手から離れません
拳を何か鋭利な刃物で突き刺されたようです
あまりの激痛にうめき声が漏れ、顔が歪みました
そして、相手は尋常でないスピードで走り出しました
拳が離れない
このままでは、腕がもげる
余りの激痛と想像だにしなかった事態に動揺して嘔吐しました
相手はそれでも何ら気にすることもなく
無表情のまま私を引きずります
こいつは悪魔か
自分が悪かった
もう放してくれ
今までに味わったことのない死の恐怖に襲われました
周囲は異変に気付いた途端に
慌てて身を隠しました
私を助けようとする者は一人もいませんでした
日頃から周囲との関わりを疎んでいた自らの行いを
初めて後悔した瞬間でした
そして、忠告を聞いて
黙って大人しくしていればよかった
やはり自分はまだ若かったのだとようやく気が付きました
だから許してほしい
そんな自分勝手な命乞いに
自分でも情けなくなりましたが
死には代えられません
すると突然、相手が姿を消しました
次の瞬間、重力が消え、強い光が私を包みました
信仰心のない私でも、いよいよ天国かと覚悟を決めました
腕を延ばされたままの私は
恐る恐る周囲を見回しました
そこには、何かがいました
今までに見たことのない異様な何かが私を見つめます
やめてくれ・・・
そして、抵抗する間もなく、眉間に鋭利なものを刺され意識を失いました
↑「ちゃんと釣行記録を書け(笑)!」と思われましたら・・・
騙されたwww
楽しんでもらえたのなら、幸い
(^^)v