花日和 Hana-biyori

年々彩々


「年々彩々」秀良子

以前「金持ち君と貧乏君」を読んだときもそうだったけれど、また心あたたまってしまった!100年以上にまたがる「死神」が現れるファンタジーで、時代物とも現代ものとも言い切れない。BLというくくりではもったいない、面白いお話だった。

2話目の『デラシネの花~落語・寿限無よりは、「寿限無」と名付けられた男が、時を越えるほど長寿という設定で妙な説得力がある。江戸時代から、係累がみんな先立ったあとの悲しさを抱え現代まで生き延びてしまった男と「死神」の出会い。愛するというより、特殊な業を抱えた者どうしの情の交わりのようなものを感じた。

死神にしても、忘れられない思い人があり、それが1話目『金魚すくい~落語・貧乏神よりで描かれている。働かないダメ男に翻弄されるが、極貧状態のとき金魚をおみやげに「きれぇだろう」「おめえがよろこぶとおもって」と言われホロリとさせられてしまう場面が印象的。上手い。

『デラシネの花』も、はかない危うさの中で進行するけれど、現代に溶け込んでる感じがとぼけた趣があっていい。こういう軽やかさが緩急になって面白いのかなーと思う。

最後の短編『小向家の事情』は、同性カップルと暮らす子供の視点で描いた話。こういう設定を子供の気持ちから描く(子供の気持ちを無視しないで書く)のは難しそうだけど、繊細な心情が初々しく、書き手の誠実さを感じた。そして、最後の落ちがまた軽やかでよかった。マジメに考えさせられるけど、最後は解放感に溢れているんだよなあ。

--余談-------------

「金魚すくい」で、貧乏なのに金魚を買って帰った与平と、「おとうさんのちず」でひもじいのに地図を買ってきたお父さん、偶然にも、似たようなエピソードだなあと。

どちらも「心に華を」みたいなことだなあと思いました。
与平と”おとうさん”では、貧乏の質が全然違いますけど。

先日お亡くなりになった水木しげる先生の、貧乏なのに戦艦模型づくりに夢中になっていたという話も思い出しました。つくづく素敵な方でした。ご冥福をお祈りします。
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