そんなワケで、超遅くなりましたが、講演会の様子をレポ。
参加したのは、「分子に目印をつけて体の中を観察しよう」という、一般向けに分かりやすくしたというタイトルの講演です。
お土産に配られた下敷きによると、分子イメージングとは、これまで可視化されていなかった個体内での分子の動きを見えるようにする手法のことで、個体にダメージを与えることなく、生きたまま体内の様子を観察できる。
見るための道具として用いられる化合物を「分子プルーブ」と呼ぶが、ヒトに応用するためには、安全かつ安定している分子プルーブをつくる必要がある。
とのこと。なるほど。
んで、その技術のひとつが、よく新聞等でも紹介されているPET(陽電子画像法)で、用いるプローブは、「PETプルーブ」と呼ばれてます。ヒトでの全身薬物動態を明らかにできる唯一の手段だとのことです。
PETは、Positron Emission Tomography:ポジトロン・エミッション・トモグラフィの頭文字。
まず化合物にポジトロン(陽電子)を標識させます。次にポジトロンが放出する消滅ガンマ線を計測し、生体内での分子(化合物)の動きや働きを捉えるわけです。ポジトロンは寿命が短いため被曝も少ないそうです。
話者は自ら実験台になってた!
世界一有名な脳だそうです
さて、何故、こういった研究が進められているのかというと、ひとつには、創薬プロセスの合理化。
これまで創薬の臨床試験において、動物からヒトに移る段階で、実に85~95%もが脱落し無駄になっているそうです。ふーむ。
ラットとヒトの間の体内動態に大きな差があるというのは、ワタシのような素人にも(素人だからこそ?)想像がつきます。しかし、これまでは、ラットのような小動物を使った実験を繰り返すしか方法がなかったわけです。つまり解剖のために小さな命を殺めるような実験を繰り返したとしても、その85~95%が無駄になっていたわけです。
しかし、PETを利用すると、ラットは薬品漬けとか欠損だらけになるかもしれないけど、とりあえず動物解剖はせずともイメージング可能なので、生きたままなんですな...。う...んと、どっちがいいのかしら つまりラットにとって。
まぁどっちにしても、人間というのは生きることに必死なのだということがわかります。
個人的に気になった話としては、PETを用いて、アルツハイマー病の予知的なデータを得ることができるようになるかもしれないというお話。
以前たしかニュースにもなっててクリップしてたんだけど...。
アルツハイマー病の前段階に軽度認知障害という状態がありますが、それよりも以前の段階で、βアミロイドペプチド(老人班)という物質が脳に蓄積されていくことがわかっているそうで、早期発見されれば進行を遅らせることが可能になるかもしれませんとのことです。
まぁ、進行を遅らせることが可能になってから、予知ってもらおうかしらん。
さらに、話者の研究グループが開発したという「高速C-メチル化法を用いたPETプルーブ合成法」の話がありました。難しくてよく分からなかったんですが、結論としては、ほとんどの創薬候補物質のPETトレーサー化が可能らしいです。
例えば...と例に出された「イチョウ」の薬。
イチョウは頭の疾患に効くとか言われてるそうですが本当?という疑念が、PETを用いて解明できるとおっしゃってました。
理由は頭の薬ならば頭に入るはずだという前提で、イチョウの薬にトレーサーをつけて、生体内動態を追跡するのだということです。
うーん...薬って、あるいは人体ってそんな単純なんすか?とか思ったのですが...
まぁ...何にしても、いろいろ分かるそうです。分かるとツライことも、物議をかもす事もあるかもしれません。でも分かったほうがいいですかね。
このあたりの話,「プロの」科学コミュニケーターが整理してミニトークイベントでも組んだら面白いと思うんですが,なかなか出てこないですね~.
少なくとも、今回の講演会では、分子イメージングの見せ方がキレイだとは思いませんでした。
前回のエントリーに書きましたが、発生・再生の方は、かなりイメージ寄りだと思いました。
もちろん分子イメージングをやってるMIRPのラボツアーは行けずじまいだったので、確かなことは言えませんけど(キレイな見せ方をしておられたかもしれませんけど)、創薬という大目標に向かって、かなりリアルに、つまり臨床で言えばヒト臨床研究を目指しているわけで、イメージに頼るなどという手法は使えないだろうなというカンジがしましたけど。
思いました。
私も 同じように思うかもしれませんね。
もっと少人数だったら
その感想をぶつけることが できたのでしょうか?(笑)
これは ゲスト泣かせかな?(^^)
この前の 阪大の防犯カメラのカフェや
京大の進々堂のカフェでは
ちょっとした疑問も
気軽に聞く事ができる雰囲気だったので
それも 楽しかった一因です。(^-^)
もちろん質問されている方はおられましたが、時間もなかったせいかお一人だけで、しかも少々業界の方っぽくって、何だかわかりませんが話者との間でバトルっぽくなってました
まぁそれも研究者の一面が垣間見れて面白かったですが
話者は、化学者は錬金術師だ~みたいな話もされてました。自ら実験台になったりしてるし(一般の人を被験者にすると人権問題・補償問題になるとか?)、思わず昔観たサイエンスフィクションの映画を思い出してしまいました