待春の水よりも石静かなる（倉田交紘文） 　春を待つ心、並べてあらゆるものが春を待ちか...

　死は狎れを許さぬものぞ寒日和（飯田龍太） 　死は狎れることを容赦しない。神聖な儀式で...

　凍雲を夕日貫き沈みけり（福田蓼汀） 　今にも雪になりそうな雲、その酷寒のなか夕日が沈...

　一番と言はず一号木枯吹く（右城墓石） 　なぜ一番と言わないんだろう、一番と言えば（春...

　カーテンの動いてゐるは隙間風（高浜年尾） 　カーテンが動いてゐる。　何だろう、怪しい...

　しぐるるやほのほあげぬは火といはず（片山由美子） 　目が潤む・・・好き、嫌い、好き、...

　手の中に小さき手のある雪催（辻　美奈子） 　手の中にある小さき手、幼い子供の手である...

　深雪晴わが影あをき虚空より（深谷雄大） 　一面の雪野原、止んだ雪の面を冬の陽が照らし...

　ねんねこから片手出てゐる冬霞 　霞が立つ思いがけないポカポカ陽気。ねんねこで防寒して...

　冬山の倒れかかるを支へ行く（松本たかし） 　冬山の倒れかかる？　〈動かざること山の如し〉である。絶対に倒れかかることなどないと思っていた...