もう、ニヤニヤしっぱなし。
この人は結構いいです。人間はどうだか分からないですけど、非常に上品な毒を持った人だと感じた。
あと二回転職をして蝌蚪になる
梅干しぬ犬に盛りのつきにけり
1句目、せっかく二回も転職したのにオタマジャクシかよと。その批評精神の矛先は僕には読みきれなかったんですけど、なかなかすごい。
2句目、梅干は完全に金玉袋のメタファーではないですか(違うかな・・・)。 . . . 本文を読む
一番読みにくかったかもしれない。
葉桜に吹かれて金の川蜻蛉
滝暮れて河鹿鳴き上ぐ小焼空
少し画を描きすぎの嫌いがあるように思う。
1句目、僕には「葉桜」がいいとは思えなかった。「に吹かれて」も、上手いようで、実はよく分からない。
2句目、「滝暮れて」がよい効果をなしているとは思えない。「小焼空」というのは、手先の技。
つけてくる猿の夏毛や夕の滑
「つけてくる」が「付着 . . . 本文を読む
派手な句は決して多くないものの、ふと立ち止まってしまう句がいくつかあった。
下萌といふ色のなきちからかな
ちょっともったいぶっているような言い振りだが、下萌の「色がない」というところに着目のは面白いと思う。
真ん中を川流れゐる春田かな
の大雑把な把握も悪くない。
拙作ながら、「秋の川中部地方を流れけり」の句と通じるところがあって、勝手に共感。
葉桜の下のつめたき匂ひ . . . 本文を読む
全体的に言葉と言葉のつながりに難多し。
それから、季語の選択に疑問を覚えるところが多くあった。たとえば、
電波の日百周年を知る校舎
須賀川の夏至の川浪ひかり待つ
1句目、「百周年を知る校舎」という言い方は不自然。さらに、「電波の日」の選択も疑問。
2句目、「川浪ひかり待つ」というのは、上手い言い方じゃない。
少し偉そうなことを言わせてもらえば、俳句って伝統工芸みたいなところがあっ . . . 本文を読む
会ふまでの時間揺れゐる姫女苑
ライラック匂ふひとりになりしとき
冒頭2句は恋の句から始まって、確かに出来は悪くないんですけど、情感がすこし平板のように思った。
1句目は「揺れゐる」が前後のどちらにかかっていくか、やや不明確(いや、「時間(を)」ということか)。「逢ふ」としなかっただけセーフなのかも。
2句目、この表現は安直だと思う。なんだか「いかにも」という感じ。
鍵盤の上の . . . 本文を読む
手の中の水飲み春を惜しみけり
大股に浜をゆきたる端午かな
40人の中ではかなり上手い部類に入る人だとは思うのだけれど、いずれの作品からも「『モノ』を動かさなくてはいられない」という落ち着きのなさを感じた。
新緑の旅の鞄をひきずりぬ
どの船も沖を向きたる薄暑かな
1句目、「鞄」という言葉は「俳句に入れるとかなりの確率で成功する言葉」その一で、また、かなり象徴的な言葉で . . . 本文を読む
今日は皆様の前で、或る世界の法則を明らかにしなかればなりません。すなわち、
「ファミリーネームのイニシャル『T』の男性俳人は優秀!」
という法則であります。
今回の「新鋭俳人競詠」で「イニシャル『T』」の男性俳人の名前を挙げていくと、
・高柳克弘
・高山れおな
・田島健一
・立村霜衣
・鴇田智哉
・冨田拓也
といった錚々たる面々。
あと、僕ね!!!(ここ重要) . . . 本文を読む
言葉のきらきらしさがうるさく感じた。
言葉のきらきらしさはそもそもこの人の持ち味であるのだけれど、今回はそれが上滑りしているというか、ズッコケてるんじゃないかという作品がいくつか見られた。
こゑとこゑ巴なすとき黒揚羽
青梅雨や壺中に龍の蟠(わだかま)り
構造的に難があるというわけでは、ひとまずない。
しかし、何が言いたいのか、読者に何を伝えたいのか。それがどのように面白いのか。伝 . . . 本文を読む
雉鳴くとトタンの板が出てをりぬ
手をあげて日永の空を動かしぬ
1句目、「出てをりぬ」と言いながら、どこから出ているかということを言っていない。それが差し当たりのトリックなのだけれど、出ているのが「トタンの板」というのがとてもいい。「雉鳴くと」の「と」もさりげない配慮。「梨咲くと葛飾の野はとの曇り」(水原秋桜子)。
2句目、手を使って空を動かすという発想に驚く。最初、絶対者的な、創造者 . . . 本文を読む
作者について、僕は名前以外のことを知らない。
たぶん日本語以外の言語を母国語にされている方なのだろうと思う。
作品を通読して感じたのは、作者の日本語の不自由さ。
作者の日本語の能力がどれほどのものかは知らないが、おそらく日常会話において何ら支障のない程度の能力は備わっているのだと思う。しかし、その日本語を俳句の定型に収めようとしたとたんに、ある不自由さが生じてくるのではないかと思った。そうい . . . 本文を読む