魔がさすということありぬ烏瓜 宇多喜代子『象』
魔がさして糸瓜となりぬどうもどうも 正木ゆう子『静かな水』
いや、これは明らかに正木さんの句の方が好みだな(笑)。
ということで、早々と正木句に軍配!
『静かな水』は、高校生の僕にとって非常に画期的な句集だった。
どの句も光を放って見えた。初めてノートに書き写した、思い出深い句集。
地下鉄にかすかな峠ありて夏至
. . . 本文を読む
同じ文字をしばらく見つめていると、なんだか違う文字に見えてきたり、字がばらばらに見えてきたりする現象のことを「ゲシュタルト崩壊」というらしい(by「トリビアの泉」)。
すると、さしづめ今回の2句は「ゲシュタルト崩壊俳句」ということになるだろうか。
秋ふかし雨といふ字は雫して 八田木枯『夜さり』
蛞蝓といふ字どこやら動き出す 後藤比奈夫『祇園守』
八田句。
「雨」という字 . . . 本文を読む
今回のテーマは「雪とかたち」。
まだもののかたちに雪の積もりをり 片山由美子『風待月』
かたちなき物には雪のこぞり降る 八田木枯『夜さり』
片山句は作者の代表句のひとつ。
「もののかたちに雪が積もる」というのは、つまり、雪が積もっているんだけれども、もののかたちが分からなくなってしまうほどではないくらいの積もり方だ、ということだと解釈した。「かたちに」の後で軽く意味を切 . . . 本文を読む
怒涛の毎日更新(就活の予定がなくてあまりに暇な谷氏を憐れんでください)。
今日のテーマは「小さい人」。
炎天や人がちいさくなつてゆく 飛鳥田孋無公『湖におどろく』
逃水をちひさな人がとほりけり 鴇田智哉『こゑひとつ』
「炎天」の句の作者、「あすかたれいむこう」と読みます。・・・すごい名前。
まず、飛鳥田句。
「人がちいさくなつてゆく」というのは、作者の . . . 本文を読む
ある季語がここにあるとして、その季語と愛称のいい言葉というのが確かにあるようです。
たとえば、「秋の暮」という季語と「道」という言葉はどうも相性がいいらしい。
まつすぐの道に出でけり秋の暮 高野素十『初鴉』
わが中に道ありてゆく秋の暮 野見山朱鳥『愁絶』
さて、高野句はシンプルな作り。
おそらく「曲がり角を曲がったら」というような前置きが省略されているのでしょう。
突然 . . . 本文を読む
今回は「女が遠い」2句!(自虐をこめて)
女遠しぐんぐん伸びる松の芯 西東三鬼『夜の桃』
遠ければ女人とおもふ桐の花 田中裕明『櫻姫譚』
同じ「女が遠い」でも、読み方によって作者の品格の違いがありありと見えてきますね。
西東句は、かなりのお下劣っぷり。
だって、どう見ても松の芯がペニスのメタファーじゃないですか!
お下劣過ぎて、もはや感動の域に達してます。
話は変わ . . . 本文を読む
というわけで、新企画「どっちの俳句ショー」始動(もちろんこの場の思いつき)。
本企画は、内容、構造、韻律、季語の扱い方等が似た作品を2句挙げ、何かしらの理由をつけて、僕の独断と偏見でその出来の良し悪しを決めてしまおうというもの。
それでは早速、第一回は「砥石と包丁」の組み合わせから。
砥石と刃濡れて相減り冬は冬 池田澄子『空の庭』
包丁と砥石痩せあふ晩夏かな うまきいつこ . . . 本文を読む