父とのキャッチボールめんどくさく思ふこと度々
稲はそよいで父は時折カーブを放る
父の背がいつも西日に向かつてゐた
愚痴をこぼせしこともなき父いつも逆光
返す球が逸れゆき父が離れゆき
父にしか振れぬ重たきバットかな
父のバットは外に朽ちゆけり堂々と
特に指導欲なき父有難し有難し
車飛ばして父嬉しさう母悲しさう
朝の父小舟のやうに家を出づ . . . 本文を読む
集会所即葬儀場課長の死
葬送に愉快なひとのきたりけり
大皿に刺身は咲いてしまひけり
かなしみは柩の上下逆なれば
寡黙なりし人の柩を運びゆく
死亡記事とは掌に収まれる
被害者の下の名前を忘れけり
人死んで犬の散歩の数減りぬ . . . 本文を読む