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日本老年医学会が改めてACPを提言

2020-08-15 10:06:13 | Weblog

8月4日に日本老年医学会は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期において高齢者が最善の医療およびケアを受けるための日本老年医学会からの提言―ACP実施のタイミングを考える―」を出した。

この提言の「はじめに」で「予期せぬ新たな感染症により急激に状態が悪化し、患者本人の意向を確かめることもできずに、家族に見守られることもままならず、多くの高齢者が最期を迎えざるを得なかったことはきわめて残念である」と現状に触れたあと、2、トリアージとACPに関してトリアージを高齢者に適応することに疑問が生じるとしたうえで「ACP が行われていないケースでは、本人の事前の意思の確認ができないままに、その方針は主に家族によって、不安と共に決定されることになり、本人を最期まで人として尊重する医療・ケアの実現が困難になる」ことからACPの実施を述べている。

提言の目的と対象は「COVID-19 流行期においても、高齢者が可能な限り自分の希望する最善の医療およびケアを受けることができる社会の実現を目指した倫理上の提言」であって、「達成するためには ACP 実施の重要性は言うに及ばず、その実施時期(タイミング)について考えていただくこと」を目的にしている。
対象では「高齢者の医療・ケアに関わる専門職ならびにその管理者、さらには医療福祉行政に関わる方々」を対象にしている。

提言1
「暦年齢が高く、心身の障害を伴っていたとしても、本人にとって『最善の医療およびケア』を適切に受ける権利を保障する必要がある」としたうえで、意思決定について提言1.2
新型コロナウイルス感染症では急速に重症化するケースが多いことから、集中治療を受けるか否かを短時間で意思判断するのは困難であり、本人の意思を確認することが難しい。
そんな時、家族に判断をゆだねられるがそれも時間的余裕はない、したがって「まずは COVID-19 を発症する前から、本人・家族、多職種の医療・ケア従事者は共同意思決定を目指して ACP を実施すべきである」と主張する。
提言1.3
「十分な意思決定の支援と共に、可能な限り苦痛を低減する緩和ケアと、QOL および quality of death (QOD) を尊重したケアを受けることを保障すべきで」「平常時の医療・介護環境とは異なる COVID-19 の流行時にも、可能な限りその権利を保障するよう努めるべき」であって、苦痛緩和に効果的方法を確実に実施していくことが重要なことを述べる。

提言2.1
新型コロナウイルス感染症を発症した高齢者に対して「本人に益をもたらす可能性のある治療手段、それによりもたらされるゴール、治癒する確率、合併症、起こり得る身体機能障害、せん妄、認知機能に及ぼす影響などの情報」を本人、家族に提示され、「積極的な治療を選択しなかった場合に目指すゴール、療養の場、経過、緩和ケア・ エンドオブライフ・ケアの内容などにも言及」する必要があり、本人の意思決定にはそれらを前提とする必要があり、提言2.2では、コミュニケーションの確保が大事になることを述べ、提言2.3では人工呼吸器装着・離脱のアプローチの基本姿勢を述べて「(人工呼吸器の装着・離脱について)ACP のプロセスにおいてもよく話し合い、本人・家族等と医療・ケア従事者ともに理解を深めておくことが望ましい」とACPの具体的実践について提言している。

ほかに適切な医療・療養環境の提供と家族・介護者への支援を提言3で取り上げる。
提言3.3は家族。介護者へのケアをあげ、「エンドオブライフにおいて COVID-19 は
本人と家族からコミュニケーションの機会を奪い、大切な別れの時間と空間を奪う」ことから家族の苦痛緩和とコミュニケーションを保たれるようにする。
葬儀においても大きな制限が加わり、ご遺体に触れることもできないままのお別れになることも多いので、「家族の気持ちを理解したスタッフが対応することが望まし」く、「悲嘆のプロセスを妨げ、喪失体験を複雑化する危惧があるため、グリーフケアの実施方法について検討」し、スタッフ教育が必要なことも示している。

提言4では偏見・差別を取り上げ患者、家族、感染防止に携わる医療・ケア従事者への偏見や差別をなくすべきで、医療関連の職能団体、関連学会を中心に国民への啓蒙、啓発を呼び掛けている。

最後に「COVID-19の患者の治療・ケアに際しては、公共の利益を優先すべきか、本人の意思を尊重すべきか、我々は大きな倫理的ジレンマに直面することになる。だからこそ、早めにACP を開始することが重要であり、より高齢者本人の意思の尊重に軸足を置く必要がある」とあらためてACP開催を求めて提言を結んでいる。

新型コロナウイルス感染症の対応に追われる現状にあって、さらにACPはとても実施できる環境ではないが、提言にもあるように利用者にその状態に応じた最適な医療を受け、介護を提供するという立場からは、ACP実施を考えなければならないと思う提言だ。

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