隠された風景-死の現場を歩く-
福岡賢正著 南方新社
「犬猫をこうして
殺していますて載ったら、
はあ、そげなこつば
しよらすとばいて、
いよいよ恐ろしか所
みたいに思うよ。
人間は勝手だけんね」
「知らんちゃよかとに、
わざわざ知らせた結果、
差別さるってことも
あっとばい。
そげんこつば何でせなんとな」
激しい拒絶にうろたえながら
自問せざるをえなかった。
いったい自分はどうして
こんな取材を始めたのか。
「第一部 ペットの行方」より
2000年9月から2001年10月まで、
毎日新聞西部版で連載された、
福岡賢正記者の
「隠された風景---死の現場を歩く」
重いテーマを追い、いくつかの
タブーを破った同ルポ。
連載開始とともに大反響をおこし、
待たれていた単行本化。
目次より●
第一部 ペットの行方
・野犬捕獲員の声─感謝なき忌避に
耐える
・保健所に持ち込まれる不要犬、
不要猫
・こうして犬、猫は処分される
---など
第二部 肉をつくる
・屠畜場の現場に入る
・外国人労働者、高齢者が担う
「よごれ仕事」
・女性獣医師の挑戦─解剖、
動物実験、屠畜検査も
---など
第三部 遺書を読む
・自殺─いのちで負債返す悲惨
・病者追い込む「無価値感」
・「老い」を排除する社会
・あるホームレスの大学ノート
---など
補稿 「死」を「生かす」ために
●本書を推薦します
「隠されたものを見る勇気」
が日本を救う
いまに生きる日本人は
「見えないものは存在しない」
と錯覚している。暗い現実、
陰湿な人権無視、汚れた
廃棄物など「見たくないもの」
を隠し、人工の美と善で周囲
を飾ろうとする。
醜悪なる現実を直視する
勇気をもたず、煙のような
美と善に酔いしれているその
「見えない隙間」に、社会悪、
不誠実、偽善が毛細血管のように
繁殖しているのだ。
本書は「隠された現実」
を直視する。
人びとの視界から
「隠蔽された真実」を求め、
勇気をふるって裸の現実を示す。
美しく装われたものの陰から
苛烈な真実が姿を現す。
気まぐれなペットブームの
行き着く先、現代人の美食の
陰に葬られる夥しい生命、
そして人の死を総括する遺書。
誠実な勇気と重い使命感に
殉ずる思いで著者はここに
書き尽くした。
「現実逃避」の甘い思想に
被われた現代への批評に賭けた
本書を、全身全霊かけて推薦する。
内橋克人(経済評論家)
【著者紹介】
福岡賢正(ふくおか・けんせい)
1961年熊本県生まれ。京都大学農
学部卒。83年毎日新聞社入社。久
留米支局、福岡総局社会部、人吉
通信部、福岡総局学芸課を経て、
現在は福岡南支局長と学芸課編集
委員を兼ねる。著書に『国が川を
壊す理由』(葦書房)、『男の子
育て風雲録』(毎日新聞社)、『た
のしい不便』(南方新社)がある。
------------------------------------------
本書は、一般の人がほとんど
訪れることのない犬猫の
処分施設やと畜場(食肉処理場)
を訪れて書かれたルポです。
現代社会では、「不要」になった
犬や猫を処分し、あるいは牛や豚を
畜して食べています。
一方で大量の動物を殺し続けて
いるのに、その現場で働いている
人々への差別や偏見が生じやすいのは、
多くの人々が動物を殺すという現実を
直視しようとしないことから生じて
いると指摘しています。
私もこの限りでは同意します。
一度でも処分の現場を訪れて、
問題がどこにあるかを知り考えて
みることは、とても大切だと
思います。
ペットに対しては飼い主としての
責任、食用にされる動物に対しては
消費者としての選択を、自分に
問いかける必要もあるでしょう。
一方、著者は、殺すことを悪とする
いわゆる「動物愛護」には批判的で、
現場で働いている人々への偏見や
差別に対しては同情的です。
しかし、誰もが知っているように、
実際、極端な動物愛護家もあれば、
無慈悲な現場の職員もいるわけで、
このようなステレオタイプ的な
動物愛護観と差別偏見への同情観には、
かなりの違和感を覚えてしまいます。
ともあれ、お互いがお互いを知ろう
としないことから無知と偏見が生まれ、
誤解と対立が生じます。
できるだけ現場に行き、人々と話を
することがどんなに大切かを、
感じさせてくれるでしょう。
(ALIVE:野上ふさ子様)
福岡賢正著 南方新社
「犬猫をこうして
殺していますて載ったら、
はあ、そげなこつば
しよらすとばいて、
いよいよ恐ろしか所
みたいに思うよ。
人間は勝手だけんね」
「知らんちゃよかとに、
わざわざ知らせた結果、
差別さるってことも
あっとばい。
そげんこつば何でせなんとな」
激しい拒絶にうろたえながら
自問せざるをえなかった。
いったい自分はどうして
こんな取材を始めたのか。
「第一部 ペットの行方」より
2000年9月から2001年10月まで、
毎日新聞西部版で連載された、
福岡賢正記者の
「隠された風景---死の現場を歩く」
重いテーマを追い、いくつかの
タブーを破った同ルポ。
連載開始とともに大反響をおこし、
待たれていた単行本化。
目次より●
第一部 ペットの行方
・野犬捕獲員の声─感謝なき忌避に
耐える
・保健所に持ち込まれる不要犬、
不要猫
・こうして犬、猫は処分される
---など
第二部 肉をつくる
・屠畜場の現場に入る
・外国人労働者、高齢者が担う
「よごれ仕事」
・女性獣医師の挑戦─解剖、
動物実験、屠畜検査も
---など
第三部 遺書を読む
・自殺─いのちで負債返す悲惨
・病者追い込む「無価値感」
・「老い」を排除する社会
・あるホームレスの大学ノート
---など
補稿 「死」を「生かす」ために
●本書を推薦します
「隠されたものを見る勇気」
が日本を救う
いまに生きる日本人は
「見えないものは存在しない」
と錯覚している。暗い現実、
陰湿な人権無視、汚れた
廃棄物など「見たくないもの」
を隠し、人工の美と善で周囲
を飾ろうとする。
醜悪なる現実を直視する
勇気をもたず、煙のような
美と善に酔いしれているその
「見えない隙間」に、社会悪、
不誠実、偽善が毛細血管のように
繁殖しているのだ。
本書は「隠された現実」
を直視する。
人びとの視界から
「隠蔽された真実」を求め、
勇気をふるって裸の現実を示す。
美しく装われたものの陰から
苛烈な真実が姿を現す。
気まぐれなペットブームの
行き着く先、現代人の美食の
陰に葬られる夥しい生命、
そして人の死を総括する遺書。
誠実な勇気と重い使命感に
殉ずる思いで著者はここに
書き尽くした。
「現実逃避」の甘い思想に
被われた現代への批評に賭けた
本書を、全身全霊かけて推薦する。
内橋克人(経済評論家)
【著者紹介】
福岡賢正(ふくおか・けんせい)
1961年熊本県生まれ。京都大学農
学部卒。83年毎日新聞社入社。久
留米支局、福岡総局社会部、人吉
通信部、福岡総局学芸課を経て、
現在は福岡南支局長と学芸課編集
委員を兼ねる。著書に『国が川を
壊す理由』(葦書房)、『男の子
育て風雲録』(毎日新聞社)、『た
のしい不便』(南方新社)がある。
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本書は、一般の人がほとんど
訪れることのない犬猫の
処分施設やと畜場(食肉処理場)
を訪れて書かれたルポです。
現代社会では、「不要」になった
犬や猫を処分し、あるいは牛や豚を
畜して食べています。
一方で大量の動物を殺し続けて
いるのに、その現場で働いている
人々への差別や偏見が生じやすいのは、
多くの人々が動物を殺すという現実を
直視しようとしないことから生じて
いると指摘しています。
私もこの限りでは同意します。
一度でも処分の現場を訪れて、
問題がどこにあるかを知り考えて
みることは、とても大切だと
思います。
ペットに対しては飼い主としての
責任、食用にされる動物に対しては
消費者としての選択を、自分に
問いかける必要もあるでしょう。
一方、著者は、殺すことを悪とする
いわゆる「動物愛護」には批判的で、
現場で働いている人々への偏見や
差別に対しては同情的です。
しかし、誰もが知っているように、
実際、極端な動物愛護家もあれば、
無慈悲な現場の職員もいるわけで、
このようなステレオタイプ的な
動物愛護観と差別偏見への同情観には、
かなりの違和感を覚えてしまいます。
ともあれ、お互いがお互いを知ろう
としないことから無知と偏見が生まれ、
誤解と対立が生じます。
できるだけ現場に行き、人々と話を
することがどんなに大切かを、
感じさせてくれるでしょう。
(ALIVE:野上ふさ子様)