ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【映画】ある男

2022-11-20 23:59:10 | 映画
やりなおしたいとかそういうことじゃないのだ。

選びえない人生の構成要素。

その選択によって得られたもの。むなしさもまた。

選択の作用は図りえない、予想できない、
そして誰も評価することはできないのだろう。

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公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/a-man/

(2022.11.20)


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【映画】土を喰らう十二ヵ月

2022-11-16 23:51:39 | 映画
四季の地物を味わう光景がつづられているであろうということ以外
あまり想定せずに見に行った。

思いのほか人間ドラマだった。

自然とのことのほかに、老いとか終のなにかとか。

古民家の庭先に折々の野菜や実もの、
暖房や給湯器がなさそうな、竈のある台所に素朴ながら上質そうな器たち。
味噌、漬物、干柿、胡麻の実、雪の下の青菜、大根、山にはきのこ。

手を使う日々のたべものは、丁寧を重ねてできあがって食べるのは一瞬。
真知子は思い切りがよくて、惜しまないツトムの表情は愛情か。

シビアな成り行きにはリアルな苦み、
丁寧に描かれる田園のくらしはむしろ寓話性。

滋味。

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公式サイト:http://tsuchiwokurau12.jp/

(2022.11.16)


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【映画】すずめの戸締まり

2022-11-11 23:13:44 | 映画
結局落涙したわけです。

冒険譚とロードムービーのエンタメ要素と、
美麗な鄙の景色と都会の人工構造、土地土地のことば。
わくわくどきどきさせることのその先に置かれるメッセージと。

秀逸なひとの情動の表現は、それがなにから生じているかと関係なく
揺さぶりにくるのだという再認識と(だからすごいんだ新海作)。

今回はひときわ、私は分析せずにそのまま味わっておきたい。

地の天災に関するところの重さとか逃れようのなさとかの
モチーフには、いまだ真正面から直面しかねる自分を発見したり。

カミサマという概念を思ったり。
(人は対象を人のように解釈するけど人じゃないんだから
 気まぐれ、優しい、怖い、変節が信じがたい、などと感じるとき、
 無意識に擬人化しているのかもね)。

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公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/

(2022.11.11)


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【映画】RRR

2022-10-22 23:19:02 | 映画
まいど圧倒的な熱量で
ありえへんアクションすごいのとみごとなダンス。

という、つたない表現しか出てこない。
だってすごいだもん。

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公式サイト:https://rrr-movie.jp/

友情と対立のものがたりの背景には英国による支配の歴史が
おかれていて、おとぎ話的におけるほど昔のことでもないので、
善悪単純には受け取りがたい。

(2022.10.22)



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【映画】マイ・ブロークン・マリコ

2022-10-01 23:29:02 | 映画
シイノはたぶんおおざっぱなところもある、
こころに傷もなくはないけど、
懸命に(でも懸命な自分に無自覚?)日々生きている女子で。

ダチのマリコとの関係の様子やマリコ自身に起こっていることは
ものがたりの進行とともに徐々に明らかになる。

世代もありようも違うシイノとマリコを
離れたところから眺めていた観客(ワタシ)は、
あるところに至りシイノの無力感に共振を起こしてしまった。

その先のエネルギーのようなのは
人の靭さなのか、若さなのか。

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公式サイト:https://happinet-phantom.com/mariko

(2022.10.1)


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【映画】ブレット・トレイン

2022-09-03 23:32:27 | 映画
おもちゃばこひっくり返したような映画だった。

小ネタと伏線の波状攻撃、もももん。歌謡曲。
昭和任侠と令和二次元とツイステッド新幹線ともろもろ、
たぶん日本マニアな海外の方のほうが
私より理解していっぱい笑えたのではないか。

皮肉な展開をくすくす笑いながら(酸鼻なところはちょっと顰めながら)
達者な役者さんたちががっつり真面目に、
とっちらかる伏線をテンポよくかつぎりぎりついていける速度で表現してるのを、
街や車窓のしつらえにちょくちょくツッコミを入れながら
ずっと楽しく見ていた気がする。

エンドロールのバックの絵づらがなかなかに味わい。

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公式サイト:https://www.bullettrain-movie.jp/

(2022.9.3)



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【映画】PLAN 75

2022-07-03 22:31:07 | 映画
「百年法」という小説を以前に興味深く読んだ。
前提はだいぶ違うのだけれど、この映画はそのテーマをどう扱っているのだろうと。

その制度についての確たるこたえはない。

でもこの映画の価値は、
制度を描いているようでいて、制度の成立有無とは関係なく、
老いの世代が直面する事実の救われなさや手立てのなさの表出であったり、
周辺社会で起こっていることを、ふつうに起こりうることとして
描き切っているところにあるのではないだろうか。

劇中の「PLAN 75」はとても杜撰なシステムに見える。
負債があったら処理は国がやるのだろうか…制度の破綻が早そう。
それに申し込むのはミチさんのような、働く気力もあって善良で生真面目に
思考する人が先行して、"迷惑上等"な人は申し込まないかもしれない。
そういう杜撰さも含め、杜撰なまま制度が出来上がってしまう可能性をも
描いているとしたら、それはある意味"心配な日本"としてリアルだと思う。

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公式サイト:https://happinet-phantom.com/plan75/

(2022.7.3)



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【映画】ベイビー・ブローカー

2022-07-03 01:45:24 | 映画
なんとも、どの画面でも、
景色の中の俳優さんたちの身体の存在感たるや。
悪い?ひとたち。やさしいひとたち。
軽くふざけあった遣り取りの折々に切実が見え隠れする。

出自にまつわるさまざまについて、私には語れる言葉がない。
ただ、観てよかったと思う。
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公式サイト:https://gaga.ne.jp/babybroker/

(2022.7.1)


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【映画】メタモルフォーゼの縁側

2022-07-03 01:36:32 | 映画
歳の差58歳のふたりがどちらも素直でかわいらしい。

うらら(芦田愛菜さん)、
「BL好き」のうしろめたさを薄くあらわしつつも
卑屈に落ちず決して痛々しくなく熱量を内包する17歳が絶妙。
何度か象徴的に出てくる走りっぷりもよく。

じっくりすごい。宮本信子さん演じる雪さん。
楽しむことに開いている明るさと、自然に背を押す胆力。
老いのステージとのつきあい具合。

ものがたりは起伏ありつつも軽やかで、
おとぎ話の香りを纏っているような気がするのは、
かかわる人たちのひとのよさだろうか。

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公式サイト:https://metamor-movie.jp/

(2022.6.26)



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【映画】犬王

2022-06-05 09:35:50 | 映画
前半、圧倒的な量の情報が載るミクロとマクロのスコープが
自在に切り替わる映像に、琵琶法師の語りが繰り広げられる。
吸引力すごい。

呪や思い残しとのかかわりは自然と語られていく。
時々現れる残忍なシチュエーションは、中世の世相のリアルを
思わせて、観客の尻を落ち着かせない。

再現不可能な刹那のパフォーマンスとムーブメント、
権力の暴挙、
その名であることの意味や、効力。
関係性。
舞台装置・表現技術のアナログな根。
いろいろ入ってる。

-----
公式サイト:https://inuoh-anime.com/

(2022.6.4)



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【映画】シン・ウルトラマン

2022-05-15 22:35:02 | 映画
なかなか興味深く見ました。面白かった。
同じ「シン」がついててもゴジラとは楽しみ方も違っていいんじゃ
ないでしょうか。

全編通してオリジナルへのリスペクトがあふれていると思うし。
これはもしかして映画というパッケージメディアのネットワークに
ライドして(SNSに乗るがごとく)、オリジナル版の視聴を活性化
しようというインフルエンサークラスのファンのたくらみなんじゃ
ないかという妄想が頭に浮かんだほどです。

60年代に組まれた設定を現代の映画にするにあたり、幾つか
設定の解釈を入れて、浮きすぎないように(科学っぽく)まとめていて、
"よくできました"のハンコを押して差し上げたくなりました。

巨大なあの方が街にばったりの絵づらは、マクロス(最初のTV版)を
彷彿とさせましたが、当時の私は「毛穴…」と思っていたので、
今回そのあたりの違和感の解消に心で拍手。

ウルトラマンの貌と全身の最初の印象は「弥勒菩薩」。
筋肉はきれいだけどすんなりしていてレスリング型(メフィラスは水泳)。
ゴジラは自然が化体した感じだけどウルトラマンは神仏に近いのか?
救済と裁定。

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公式サイト:https://shin-ultraman.jp/

手元アップで既婚設定のみなさんが左薬指にきっちり指輪を
している演出には何か意図があったのだろうか。

(2022.5.14)


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【映画】ツユクサ

2022-05-04 10:12:27 | 映画
痛みを分かりやすく痛みとして表現するのでなく、
ふたりの名優(と子役)をもって、じわじわと。
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公式サイト:https://tsuyukusa-movie.jp/

(2022.5.3)


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【映画】杜人 環境再生医 矢野智徳の挑戦

2022-05-04 10:07:40 | 映画
"大地の呼吸"。
シンプルで、おそらくとても本質的で。

地に点穴をあけていき、滞りがほどけて水が動くべく方向へ動いていく
幾つものシーンを見ていると、そのたび魔法のようだと思うけれど、
再現性があることなのだ。
科学。観察に基づく。測定の尺度は人の五感六感。

裡に調和の秤を持っているような方だなと思う。

いまの自然環境の状況の諸々を全否定するのでなく。ただただ。
傷んだ地(杜)に赴き、風と水の道をつくる。

もっと観る人が増えるといい。
そうして、観て終わらずに小さな園芸スコップを手にしたらいい。
-----
公式サイト:https://lingkaranfilms.com/

友人が大地の再生講座で知った"風の草刈り"を教わって実践しています。
点穴に竹炭もちょこっと。
この映画は別系統の友人から聞いて観に行きました。
人づてに広がっていく知恵。やがて文化になっていくのかも知れない。

(2022.5.3)


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【映画】アネット

2022-04-04 22:55:14 | 映画
レオス・カラックス、ミュージカル。

オペラの雰囲気も。物語の寓話性もあいまって。
かつ、マリオン・コティヤール演じる主人公の妻・アンはオペラ歌手で、舞台シーンも多く
オペラ(吹き替え)もミュージカルシーンの本人の歌声も聴くのも観るのも美しい。

アネットは主人公・スタンダップ・コメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と
アンの間に産まれた娘の名前。

なぜアネットのボディは。

斜めにずれゆく進路は、何が原因だったのだろう。

本作は、現代に生じている根源的な事象をテーマにしているのかもしれない
とも思ったり。
直截に言うのが憚られるので、例えていうなら。
食べるという行為は、生命維持から情報を食べるほうに比重が移ってきた、
というような話と近くて。
行き過ぎた抽象化に対する、具象からのアンチテーゼみたいなことを
ラストシーンを観ながら思った。
深読みが過ぎるだろうか。

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公式サイト:http://annette-film.com/

オープニングとエンディングの長回し風の表現がチャーミング。

(2022.4.2)



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【映画】THE BATMAN-ザ・バットマン-

2022-04-04 22:26:55 | 映画
誤解を恐れずに言えば、
「スケールの小ささ」が絶妙だったと思う。
起こる事件は決して小さくなく、時に見るのが辛い凄惨さを伴うけれど、
常に描写はブルース・ウェインのメンタルに立ち戻るので。

ある青年の、とある期間に起こった体験の、ものがたりで。
くらしに困らない資産と階級の子息であって、
使命のようなものを背負っているけれど、
それもまた、不安定な若さがアイデンティティを立てるための
支柱のように見えなくもないような、そういう繊細さが、
骨太な、肉弾戦の、暴力にあふれる画面のあいまに揺れる。

見終わった直後はもやっとした感じだったけれど
時間が経つとその繊細な印象は残り香のように思い起こされる。

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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/thebatman-movie/

(2022.3.27)


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