ばた、と音をたてて降り落ち続ける椿の花は、悲運の予感。
人の営みなぞお構いなしに、不意に何かを断つように降っては、
さだめへの時を容赦なく刻む。
「葛の葉」に象徴される"異界"のあちらとこちらの物語である。
千年の森。蔑まれる人々。瞽女。狐の子。
役者さんそれぞれが役の人物像に高い説得力。
猿之助さんにはっとさせられた。
型の超応用(あるいは猿之助さんの中での窯変か)で糸栄を表わす。
自然で、深かった。
お浜/新橋耐子が上方の空気の背骨。
特に強く強く印象に残ったシーン:
・冒頭、瞽女たちが客席を通って現れたときの初音/宮沢りえ、
あまりの美しさに息が。
・終盤、歌春/鈴木杏が上手から舞台に現れ、人々が眼を向けた瞬間。
空気が変わった。何かが鷲掴みにされて、幕が下りるまで涙腺崩壊。
・終幕直前、客席を通っていくときの糸栄/猿之助の表情。
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元禄港歌-千年の恋の森- Bunkamura シアター・コクーン
公式サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/16_genroku/index.html
(2016.1.30)