今回発行された心臓血管外科学会雑誌に急性大動脈解離に対してオープンステント挿入+弓部大動脈置換術を行なって対麻痺を発症した症例が報告されていました(jjcvs.51.35)。予想通り、下行大動脈の偽腔が主に背側にあり、肋間動脈は偽腔から灌流されている症例で、これに対して手術によってエントリーが閉鎖されたことで、偽腔が血栓閉塞すると同時に肋間動脈の血流が途絶し脊髄虚血を発症したと考えられる症例です。全てのこうした症例で脊髄虚血を呈するわけではないので、運が悪かった、とも言えますが、通常こうした脊髄虚血が手術によって発生する可能性がある場合は、オープンステント挿入術は禁忌と考えていいと思います。
重要なのは下行大動脈から分岐する肋間動脈のほとんどが偽腔から灌流されていると考えられる症例にはオープンステント挿入術は行なわない、と術前に判断することにあります。