小さい側方開胸の手術痕で行う心臓手術(MICS:Minimally Invasive Cardiac Surgery)は、術後の回復が速く縦郭炎などの合併症が少ないなどのメリットがあるため今後ますます普及していくと思われますが、手が届かない部位に長い手術器具やKnot Pusherによる縫合糸結紮など、従来の正中切開とは違う難しさやリスクがあり、安全に行うために適応外とする症例もあります。
このMICS不適応症例は、
A:弁膜症手術の不適応症例(MICS-AVR, MICS-MVPなど)
①片肺換気が困難な低肺機能症例
②高度肥満(BMI>30)
③上行大動脈の拡大(45mm)や性状不良(動脈硬化)
④肺の高度癒着
⑤低左心機能(EF<40%)
B:MICS-CABG
①上記と同等ですが、上行大動脈の操作が必要ない症例は実施可能です。
②糖尿病などの多発性の性状不良なTarget症例
片肺換気困難な症例でも人工心肺を回して酸素化を維持しながら片肺にして実施するということも可能ですが、危険性は増します。
他に方法がない場合はこうしたチャレンジをすることもありますが、基本的には小さい創に固執するよりも本来の目的の治療をしっかり安全に行うことを優先する必要があります。